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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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馬車の護衛 後編 

「一撃か」


「へえ」と言っているのを横目に、魔石を回収する。

 傷がある近くにちょうど魔石があったので取りやすかった。


「魔石はあとで換金して、皆で分けるのですよね」

「ああ。馬車を守っている連中がいるからな」


 私は主にリュークとしかパーティーを組んでいなかったので確認する。

 こういうことは疎い。


「待っているだろうし、さっさと戻るか」


 別れていた二人の冒険者と合流して馬車まで戻る。

 不安がっていた子供とリュークは仲良くしていたようで、楽しそうにしていた。

 私はリュークをそのまま預けることにし、馬車を守るようにして歩いた。

 そうして夕方が近づいてきたところで村に到着した。




 日が暮れると危険で進行出来ないので、村で一泊することになっている。

 この馬車の目的地は王都までだ。

 セスティームの街から王都はそれほど離れている訳ではないので、明日のお昼過ぎに到着できる。


 村にいる間は護衛任務はない契約となっているのて、自由な時間となった。

 夕食まで少しだけ時間があるので、ぶらぶらと村を見て回る。

 一泊するような遠出はしたことはなかったので、初めてきた村だ。

 どうやら蜂蜜が名産であるようだった。

 興味を抱いていると「試しに蜂蜜を食べてみるか?」と言われた。


 スプーン一匙分を口に含むと、濃密な甘さが口に広がった。

 甘いものは好きなので、後味をじっくりと味わっていると「ああ!」と声が聞こえた。

 蜂蜜を勧めてくれた人からである。

 なんだろうと見ると、リュークが蜂蜜の入った瓶から直接食べていた。


 直ぐに止めさせたが、手遅れだった。

 半分ぐらいの量にまで減っている。

 責任をとり、その一瓶買うことになった。


 美味しいからいいが、明日は特に気をつけるようにさせなくては。

 王都に行くのだから、美味しいものや見たことがないものが沢山あるだろう。

 リュークの気を引くものばかりなので、今夜念入りに言うことを決めた。



 客人用の家は少ない。

 私を含む護衛の冒険者は部屋を男女で分かれて、寝ることとなった。

 明日は最初から歩かなければならない。

 どこからか風が入ってくるのを毛布でくるまって防ぎ、落ち着かないまま眠った。

 同じ毛布内で眠るリュークが時々動くのが、安心する要素となった。



 人が動く気配で起きた。

 日が出始めていて、出発の準備をしなければならなかったが体がだるかった。

 体が休まらなかったといっても、依頼を引き受けたからにはやらなければ。

 あくびを噛み殺しながら、「起きてー」とリュークを叩き起こした。


 慣れていないので準備し終えるのに時間がかかったが、集合には遅れなかった。

「今日も宜しくお願いします」という依頼人からの言葉を受け取り、出発する。


 王都から近いこともあって、魔物から襲撃されることはなかった。

 遠目で魔物が見ていることは一度あったが、勝機が低いと分かると去っていった。


「このまま何事もなく到着しそうだな」


 太古の龍がいる森のときと同じぐらいリラックスした状態で進む。

 冒険者の一人が言ったその言葉通りにならないことになるのは、それから一時間も経たないときであった。



 後方から盗賊が来るという報告を見張りから聞いた。

 目を凝らずとも見える距離にその姿が確認出来た。

 すぐさま魔力探知で確認し、十の人の数があることを伝える。

 そして言われてから盗賊がいることを気付いたことを謝ると「初めての護衛任務なんだから大丈夫よ」と優しく言われた。


 盗賊の方が数で勝っている。

 先制攻撃とて一本の矢が飛んできたのを、冒険者の男が剣で斬る。


「荷物だけが狙いじゃないのかっ。話し合いもない」


 盗賊でも多少の良心があれば、荷物を置いていくなら人を殺しはしない。

 だが相手はそんな人物ではないようだ。


 簡単に矢を防がれたのが気にさわったようで、どんどんと矢を放ってくる。

 届くのには時間があるので詠唱をするふりをして、風魔法で叩き落とす。


「嬢ちゃんはそのまま魔法で馬車を守れ!」


 冒険者のリーダーはそう言い、盗賊の方へ向かっていく。

 その後を魔法使いと獣人が追いかけていった。


 今日も馬車の方で男の子と仲良くしているリュークに注意をするように伝える。

 男の子は昨日以上に不安がっているはずだ。

 向かっていった場所以外に盗賊がいないかを残った者で注意しながら、始まった戦闘を見守る。


 盗賊達は人数を生かした連携を取っていた。

 だが三人の冒険者の護衛の方が練度は高い。

 もうすぐBランクに昇格しそうだという噂があるパーティーなので、個々の剣技や魔法も優れている。

 矢を打たせないよう接近戦を展開し、魔法使いが炎で牽制する。

 その戦法もあって、既に二人盗賊が地面に倒れることとなっていた。


 そうしてより劣勢になるのを、盗賊の頭は逃げるという選択肢をした。

「撤退だ!」と告げるだけで、その仲間は潔く従う。

 地面に倒れている盗賊二人は逃げることは出来なかった。

 その二人はずるずると引きずって馬車の近くまで連れて来られる。


 気は失っていないようだった。 

 だが受けた傷のせいで、動けはしない。


「どうします? 殺しますか」

「……いや、やめておこう。王都から近く、連れて引き渡せる距離だ。何より息子が見ている」


 依頼人が近くにリュークがいる男の子を見る。

 その子は依頼人の息子であった。



 盗賊二人は縄で両手をきつく縛られ、馬車に繋げられた。

 その状態で王都まで歩かせるのである。 

 傷は歩ける程度には治されているので、これまでの進む速度と変わっていない。


 盗賊を見張る役目が増えた護衛の仕事は、それ以外には今度こそ何事もなく到着しそうであった。

 すれ違う人が出始め、そして高くそびえる壁が見える。

 王都に到着まで、もうすぐであった。

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