平和
私の生活に新しく一匹が加わった。
あれから起きた後、訪ねてきた二人はすでに家にはいなく、その代わりに二人が連れて来た生き物がいた。
気持ち良さげに寝ていて、毎日に癒やしや遊び相手ができ、毎日が楽しくなった。
体が成長していくにつれ、行動範囲が増えた。
私が色々なものに興味をもっていたのを見て、母は部屋からよく連れ出してくれるようになったのだ。
高いところを見てみたいときに声を出したりすると、私を抱きかかえて手伝ってくれる。
部屋を眺めていると植物の絵が書かれた本が視界に入った。
文字ではなく絵だったので、多少意味が分かるかもしれないと思って母にとってもらったが文字ばかりだった。
望んでいたものと違ったので残念だったが、私が本に興味をもったことで後に絵本をもらった。
絵本はないものだと思っていたので嬉しい。
母はよく絵本を読んでくれた。
ゆっくりと優しい声ということがあり、途中で眠ってしまったことが何回かあったが、努力のおかげか意味と文字が分かるようになった。
ちなみに絵本の内容は勇者が魔王を倒しに行くという物語だった。
途中で魔法を使う場面があり、この世界に本当にあるのかなっと思っていると、母が雨の日に洗濯物を風で乾かしていて事実だと判明し、その日ははしゃいだ。
そして、絵本の中で最強の種族として登場している龍がこの家にいる生き物と同じらしい。
絵の龍は大人なので最初は気付かなかったが、母がどちらも同じ言葉を使っていることから同一だと知った。
それまでは『りゅう』という言葉が名前なのかと思っていたので驚いたものだ。
名前は付けないのかと母に聞いてみたらネーミングセンスがないらしい。
母に「クレディアがつけていいわよ」と言われるが、私もセンスがない。
だから今まで呼び慣れている『りゅう』の言葉の最後だけ変えて『リュー』と言う名前にした。
安直だが、中々に良いのではないかと思った。
話は戻り、魔法に関してだ。
この世界には魔法がある。
憧れがあり、試しに母が呟いた詠唱の真似をしてみたことがあった。
けれどはっきり発音出来ていなかったのか、そのときは何も起こらない。
私はどうしても魔法を使いたかったことから、片っ端から本を読んで魔法について書かれたものがないか探した。
だが、長い時間をかけて全部読んだにも関わらず、見つからない。
母に聞くのが楽だと思うだろうが、「危ないから駄目よ」と怒られたのだ。
だから本に頼ったのだが、労働の無駄になった。
そのことで悄気ていると、母がどうしたのかと聞いてきた。
母にはこれまでに隠し事が通じないので正直に話すと、苦笑しながらなぜ危ないのかを説明してくれた。
私は生まれながらに人より魔力が多いらしい。
そのため大きな魔力を制御するため、事故が起こらないように訓練をしなくてはならないのだとか。
だからその訓練をとばして先に魔法を使ってはここら一帯が更地になる可能性があるので駄目らしい。
思ってた以上に怖い理由だったので、私が魔法を使うことについては当分諦めることになった。
ではリューはどうなのか。
魔法を使えないにしろ、火とか吹けないかなっと期待してじっと見る。
だが「ガゥ?」と顔を傾けただけで、ただただかわいいだけだった。
他に特出して言うことといえば、スノエというお婆さんが家に訪ねるようになったことだ。
私は覚えていないけれど、母の出産を手伝ってもらったらしい。
仕事の薬屋がこれまでにないぐらい忙しくなってしまって来れる機会がなかったがようやく落ち着いたことから、訪ねるようになったのだとか。
私はスノエおばあちゃんと呼び、勉学について教えてもらった。
薬屋を営んでいるということから植物について詳しい。
前に見つけた植物の本の読めないところや分からないところを分かりやすく教えてくれる。
そのおかげでこの世界の知識が溜まってきた。
母はあまり勉学が得意ではないので、スノエおばあちゃんばかりに色々と聞いていたら、母が拗ねたのは誤算だった。
私の周りにいる人は静菜の頃と違って優しい人ばかりだ。
そのおかげで幸福な時間を過ごすことができ、そんな時間はあっという間に過ぎ去っていく。
そして長い月日が流れた。