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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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星の下の上空にて

 顔に当たる風圧が弱まったところで、目を開けた。

 広がる世界は、私がいつも見るときよりも小さくミニチュアみたいだった。

 セスティームの街は祭のこともあって、夜ではあるが明るい。


「凄い……」

『そうであろう。空を飛ぶことは良いものよ』


 現在、私はべリュスヌースの背に乗せてもらっていた。

 飛行機に乗ったことがない私には、自身の目で見るこの光景に気分が高揚する。

 自分に翼がないことが残念だった。 

 風魔法で出来ないかと考えるか、すぐに魔力が尽きてしまいそうである。



 まあ今はこの貴重な時間を楽しむこととする。

 森の上をぐるぐると旋回する近くにはリュークがいた。

 ここまで高いところを飛ぶのは初めてだろう。

 鳥型の魔物がいるから危険だったのだ。


「ずっと疑問だったのですが、リュークはこれ以上成長しないのですか?」


 リュークはとある大きさになってから成長していない。

 森にある家に住んでいたときからだ。

 成長しない以外に悪影響はないが、心配ではあった。

 太古の龍とゆっくり話せる時間は残り少ないので、今のうちに聞く。


『リュークにはそのことを聞いたかの?』


 確か一度だけ聞いたことはある。

 体調が悪いとかはないかと一緒に聞いた。

 なんともないよといった反応だった。


『ふむ。なら無意識か。

 体が成長しないのはリューク自身がそう望んでいるからよ。大きくなれば共に暮らすことは難しくなるからの』


 心の中でそうなのかと尋ねると、そうかも?と自分でもよく分かっていないようだった。



『人の街で共に暮らしたいのなら、人化を覚えてしまえばよいのだがの。リュークには無理であろうな』

「向いていないということですか?」

『龍専用の魔法であるから向く向かないはない。魔法を感覚で行っていることが問題よ。人化は体の構造をいじる。適当な操作では出来るものではない。

 それに精神があまりにも幼く、人の姿になってどんなことをするか分かったものではない』


『そうなったら我が恥ずかしいものよ』と言って、疲れて安定していない飛び方となっているリュークを自身の背に投げた。

 慌ててキャッチする。


『少し耳を塞いでおれ』

「え?」


 大きく息を吸う動作をしているのを目撃して、慌てて従った直後。

 心の臓が止まってしまいそうになるほどの咆哮が発せられた。

 体がビリビリと振動がくる。

 声だけで怯ませる効果があった。

 慣れて忘れていたべリュスヌースの恐怖が蘇る。


 私が太古の龍は味方だと何回も心の中で繰り返した後に、咆哮は収まった。

 今更ながらリュークの耳は平気なのかと気付くが、ピンピンとしている。

 龍は耳でさえも丈夫であるようだった。


『こんなものかの』


 森を眺めながらべリュスヌースが言う。

 その目にはどのように映っているのだろうか。

 半魔の私には、圧倒的な強者のことは分からないでいた。



 べリュスヌースが森の上空を飛んでいたのには目的があった。


 レッグピアススナイパーを殺してしまったことによって、魔物の勢力の均衡が崩れた。

 そしてその空いた魔物の位置を狙う魔物の争いが既に起こり始めていたのである。

 べリュスヌースは森を安定させることで、自身に兵や騎士をよこしてくる面倒を防いでいる。

 なので森の混乱を収めなければならないのだ。

 だから魔物に龍としての格を見せつけ脅した。

 強制的に頭を冷やされた魔物達は、上空にいる私の元にまで情けない声を届かせていた。


 そしてもう一つ、リュークの存在を示すことであった。

 頭の良い魔物と街の住民に対してである。

 リュークに手出しをしたらどうなるか。

 人族に対してにもべリュスヌースは恐怖を植え付けた。



『よっぽど頭の悪い連中でなければ手出しはすることはないであろう。公爵も噂として広めるであろうからの』


 太古の龍の後ろ盾はとても頼もしいものであった。

 公爵家も色々と動いてくれるようだから、これからは堂々とリュークと共に暮らせそうである。

 そう安心していると、べリュスヌースが忠告する。


『あまり公爵家には頼らないようにの。現当主は我に対してでも遠慮もしない。見返りは大きなものとなろう。なるべく自分達で対処するように。

 其方はこのままでいくと、いずれ我を超える魔力量となるであろう。我が息子との歩む道を期待しておるぞ』


 言い終わり、森の前で着陸する。

 私は元気よく返事をすると、リュークも同じことをした。

 つられて言ったことは、私を通じてべリュスヌースも分かっている。


 リュークに対して気をつけるようにと言って、べリュスヌースは森へと帰っていった。

 私とリュークはその姿が見えなくなるまで、その場で見送っていた。

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