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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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契約 前編

「ならクレディア、リューと契約をすれば良い」

「契約、ですか?」


 従魔の契約のことを言っていることは分かる。

 だがそれは人が魔物に一方的に契約し、使役するものではなかったか。


 確かに契約をすればリューは私の従魔だと示すことが出来る。

 それでも狙う人がいるならば、よっぽどの悪人である。

 加えて、人に危害を加えることはないと一般人が安心出来る要素となる。


 だが私はそんな契約を結びたくない。

 私とリューは対等であるのだ。

 問題が解決するといっても、主従関係とはなりたくない。

 表情を曇らせていると、「我の言う契約はそんな邪悪なものではない」と言った。

 リューも関係するのに膝の上でごろごろしているのを止めて、私は説明を求めた。



 どうやら太古の龍が言う契約ははるか昔の、今の人の世界では失った魔法らしい。

 一方的に契約を結ぶものではないので、どちらかが嫌だと少しでも思うと魔法は成功しない。

 従魔や奴隷、商業で使われる契約魔法のような表面上のものではなく、奥深いところで繋がる。

 なのでどんなに離れていてもどこにいるのかも分かるし、思っていることもわかる。 


 プライバシーがない欠点はあるが、私がリューに抱く不安はなくなる。

 リューが危機感をもたないマイペースな性格は直せるものではなく、それが良いところである。

 その性格のために、私が代わりに危機感をもってリューをしっかり面倒を見る。

 危険があったら駆け付けて助ける。



「人と龍がここまで心を交わしているのは稀なことであり、クレディアは魔法使いとしてそこら辺の者より優れておる。そんな其方に息子を頼みたいし、繋がりを頑固なものとして人と龍の行く末がどうなるのかを見たい」


「つまり我のワガママであるな」と太古の龍は言葉を締めた。

 そして契約をするかどうかを委ねる。



「リュー、どうする? 私はいいと思うけど」


 太古の龍は自分のワガママだと言っているが、私にとってリューと共に暮らすための問題が解決するし、リューの気持ちが理解出来るようになる。

 今まではリューが人の言葉を理解していただけなので、私がリューの言いたいことが分かるのは嬉しいことだ。


 なによりこれは古代魔法だ。

 現代の魔法は、古代の魔法が盛んだったころよりも失われている。

 その失われたものの一つであろう、そんな貴重な魔法を見ることが出来るのだ。

 魔法使いとして、この機会を逃がすなんてもったいないことである。


 リューは説明されたことが理解出来ていなかったのか、なんのことだと「ゥ?」と首をかしげる。

 そんなリューに太古の龍が簡単に龍語で説明をすると、飛び回って賛成を示した。



 私とリューは契約を結ぶと決めた。

 太古の龍はまず私に今から伝えることに抵抗しないように言って、私の額に触った。

 どういうことだろうと思ったが、必然的に美女の姿の太古の龍の距離か近くなる。

 ほんのり赤く顔を染めていると、脳裏に情報が流れてきた。


 それは契約の魔法についてだった。

 先程太古の龍が説明してくれたことに加えて、魔法の詠唱もある。

 なぜこんなことをするのか。

 太古の龍が魔法を発動させると思っていたからの疑問の答えは、流れ込んだ情報から分かった。


 古代の契約の魔法は、魂と魂の間に繋げるものだ。

 魂があるということについて、驚いたり前世の知識をもっていることから納得するのは置いておき。

 魂が関係する高度な魔法であるから、私とリュー以外の魔力が混じってしまうのは良くないことらしい。

 魔法の効果に影響が出るかもしれないからだ。

 だから情報を渡した。

 私がこの高度な魔法が成功するだろうと思っているからこそ。


 太古の龍は先程、私を優れている魔法使いと言ってくれた。

 言葉だと本心なのか疑ってしまうものだったが、情報を伝えてくれたことで本当のことだと分かる。

 私はそんな太古の龍に応えたいと思った。


 その想いは情報を伝える魔法がまだ終わっていないため、逆流してしまった。

 太古の龍はフッと頬を緩ませる。

 そして情報を全て伝え終わる最後に、リューに関することで私に文句の内容を流した。


「そんなことありません」


 思わずムッとしたが太古の龍が言い返すことが出来ない反論をして、私は撃沈した。

 だが太古の龍がとあることを勧めた内容で、リューが目を輝かす。


「決まったかの?」

「はい」

「もっとゆっくり考えても良いのだぞ」

「お気遣いなく」


 体ごと太古の龍からそむけると、「これをやるから機嫌を直せ」と言われる。

 振り向いたのと同時に投げられて、慌てて落としそうになるがリューがキャッチしてくれた。

 澄んだ水色の水晶が先端にある魔法の杖だった。

 背丈よりも大きい杖ではあるが、持てないほどの重さはない。

 水晶の他にも目を惹かれる美しい装飾があり、素人の目から見てもとてつもなく高価な杖であることが伺える。


「其方にとって使いやすいものであろう。我がもっていても必要ないものだ。遠慮なく使え」


 どこから取り出したのかという疑問はあるが、返すことは許さんとばかりにぐいぐい押しつけてくるので貰っておくことにした。

 この杖があれば、これから始める魔法もやりやすくなるだろう。



 空に補助の魔法陣を魔力で描くと、魔法陣の光によっていつの間にか夜になっていた森は照らされた。

 太古の龍が見守る中、私とリューは向かい合う。

 そして私は詠唱の言葉を紡ぐために、息を吸い込んだ。

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