吹っ飛ぶ。潰れる。
この蜘蛛達を倒すことが目的ではない。
だが逃げれる隙が見つけれるような相手でもなかった。
遣い蜘蛛を蹴散らしても、何匹もいる蜘蛛が空いた道を塞ぐ。
数に押される。
レッグピアススナイパーだけでも厄介なのに、遣い蜘蛛がいるせいでとてもタチが悪い。
上級魔法を構築する時間があればいいのだが、そんな素振りを見せると一斉に襲いかかってくる。
何度か攻防を交わした後、決定打がないままズルズルと戦闘が長引く。
その状況を快く思っていないのは互いにだが、そのことで先に仕掛けてきたのは相手側だった。
今まで突き刺すような攻撃をしてきたレッグピアススナイパーが、身をかがめて脚で薙ぎ払う。
急な攻撃の変化に跳躍して避けるが、脚の数は十六本。
飛び回るリューは狙いづらいようで、私だけを攻撃する。
数々の遣い蜘蛛が死んでいく。
その犠牲もあって、私は攻撃をもろに受けてしまった。
「うぐっ、ぅあ」
吹き飛ばされる。
木に当たるときには勢いを殺すようにした。
完全には間に合わなかったので、体の中で何か変な音がした思ったら噎せて血を吐いた。
リューは自分が標的にされていない間に、レッグピアススナイパーに攻撃をしていたが、私が血を吐いたところで動揺した。
そんなリューに大きな脚が迫るが、気付いていない。
私が名前を呼んで、ギリギリで回避するが、このままだと私と同じことになってしまう。
数々の蜘蛛の致命傷になり得る攻撃だけ防御や回避して、魔法を構築する。
遣いの魔物も毒をもっていて、爪が掠るだけで毒が体に入る。
体内に回りきるには時間があるからと毒を放置し、傷の痛みに耐える。
そうやって通常の二倍の時間をかけて、魔法が完成する。
最後の方に多くの魔力を込めたので、レッグピアススナイパーが脅威と気付くのは遅くなった。
最初に切断した方の脚の側に、魔法が着弾する。
体が大きい分、細長く見える脚の太さもそれなりにある。
切断するまでには至らなかったが、半分までの傷の深さをつくった。
その脚をリューが太い根で絡みとり、引きちぎる。
レッグピアススナイパーは脚がなくなり、倒れ込む。
だがただでそうはならないと、リューを巻き込みながらだった。
私は見た光景を信じられなくて、邪魔だと感情のままに遣い蜘蛛を吹っ飛ばす。
そしてリューのいる辺り向かって走りだした。
当然そこにはレッグピアススナイパーがいるので、脚が迫ることになった。
魔法でもう一本なくしてやると、私は高速で構築し発動させる。
その前に。
体が震えあがる声がした。
『何をしておる』
瞬間、レッグピアススナイパーが消えた。
いや目が追いついていないだけで、木々をなぎ倒しながら吹っ飛んでいった。
私はあっと驚かされて動きを止めていたが、すぐにリューを思い出して駆け寄る。
だが龍の強靭な鱗が身を守っていたようで、意外とピンピンしていた。
「良かった……」
思わずぎゅっとしてしまい、お互い出来ている傷で呻いた。
だが生きている証拠だ。
戦闘で気が立っていた体から力が抜ける。
そして意識的に見ないようにしていた、助けてくれた声の主を見る。
なんというか、さっきから音や衝撃が凄いのだ。
意識をそらし続けることは出来なかった。
ちょうどよいタイミングだったようで、ちょうど戦闘は終わった。
木々や抉れたり割れている土の状態が悲惨である。
レッグピアススナイパーは大きな石で潰れて、モザイクが必要なぐらいだった。
私は「うわあ……」と声を漏らすが、リューは正反対でキラキラと目を輝かす。
圧倒的勝者としてその場に佇んでいるいるのは、リューの母親である太古の龍であった。




