表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/333

足止め

「止まれ」


 街の住人のような服装をした男は言った。

 一般人のように見えるが、腰には剣があることがそうではないことを示している。

 私は言われた通りにした。

 発動寸前の魔法は、ただの魔力となって散在した。


「公爵様の部下の方ですか」

「そうだ。分かっているなら話は早いな」


 リューの存在が公になったことで、ついに接触したということか。

 監視役だろうと推測している私は、原因は自分にあると簡略にだが謝罪する。

 そして先を急ぐために男を避けて通ろうとするが、どうやらそうさせてはもらえなさそうで。


「通らせてもらえませんか」

「それは無理だ。現在、森で儀式中だからな」

「だからといって、森は閉鎖していませんでしょう」

「暗黙の了解だ。賊と間違えられて、取り押さえられたり斬られたくはないだろ?」

「領主様は優しい方ですのに?」

「民にはな。貴様のような厄介事をもってきた奴には厳しいぞ」


 穏便に済ませたい。

 だがだんだんと険悪な雰囲気になっていく。


「……そうですか。なら、無理矢理通ります!」


 これは時間との勝負なのだから。



 魔法で強化されている一歩を踏み出す。

 すると後方から迫りくる魔法の反応がして、風魔法で相殺した。

 振り返る余裕はないので、魔力探知で確認すると魔力の反応はない。

 つまり日頃、私達を見張っていた監視者。

 一人だけではなかった。

 他に人がいないかを見て、前から向かってくる男から避けるために大きく横にずれる。


 剣は抜いておらず素手なのでそうした。

 対人戦は母とだけだ。

 剣士以外の対人戦はどう動けばいいかよく分からない。

 それでいて穏便に済ませたいことから、殺傷力の高い魔法は使えない。


 どうにかしてリューを追いかけるか、戦闘不能にさせたい。

 そんな条件を、この大人達に通じるものなのか。


 不安を感じながら、男に接近されないように距離を離して動く。

 森から遠ざかっていくので、誘導されていることが分かる。 

 そして支援で魔法が迫ってくるので、なんとも出来ない。


「どんな育て方したらこんなガキに成長するんだか」

「母に育ててもらったお陰、です」

「普通の親じゃないんだろうな。なんともない顔で無詠唱をしやがって」

「あ」


 忘れてた。

 魔法を使うときは人目がなくとも練習で詠唱はしていたのに。

 だがこんな一人対二人の戦闘中に、長々と詠唱をする暇はない。

 背の小さい種族として私がドワーフだと疑われたりしながらも、戦闘は続く。


 互いに大きな怪我をする攻撃はしていないことが、まだ安心出来るところだ。

 魔法を放ってくる女性魔法使いは、拘束するものや足を止めるような魔法しかしない。

 男もゾワリとするような殺意もなく、手加減はしている感じがする。



「もう諦めたらどうだ。その方がいい事だらけだろう?」

「どういうことですか」

「子龍は親の元に帰るんだろ? なら追いかける必要はないじゃないか。家の中で閉じ籠もっているより、森にいる方がいい。その方が、面倒事なんてない」


 スノエおばあちゃんは、詳しい事情を話していないらしい。

 だがここで事情を話して否定しても、時間を使うだけだ。

 それに、何か考えがあって、おばあちゃんは話していないかもしれない。


「私はリューの手助けになるために行きます」

「だから、その必要はないだろ?」

「事情があるのです。それに、私はそうしたい」

「ただ離れたくないだけだろ? だから止めにいくんだ」

「……」


 完全には否定出来ない。

 リューが親と会って、一緒に生活することを選んだら。

 再び会えないことはないだろうが、寂しい。

 以前も思ったことだ。

 だがそう思ったからって、止めることはしない。

 絶対に。


「私は、行きます」


 もう遠慮はしない。

 女が放った魔法より、強いの威力で迎え撃つ。

 連続で二つ三つ発動させたところで、男との距離が目前となるがここにきて初めて氷魔法を使った。


 私は三つの属性をもっているが、二つだけも目立つものだ。

 だから一番ありふれている属性として、風魔法を使うようにしてきた。

 強い魔物を相手にすることは、ミーアさんと森に行ったきりだ。

 だから氷魔法を使ったのを見たことない監視者の男は、驚きの表情だった。


 それでも魔法から逃れようと、動きは止めない。

 だが私は広範囲を氷で覆ったので、男は足まで凍らせることとなった。



「無理はしない方がいいと思います」


 魔法使いの女性に言う。

 魔力は枯渇する寸前だろう。

 私を捕縛するよりも、男の人を助けてあげて欲しい。

 剣が抜かれないように一緒に氷漬けにしたので、一部下半身まで凍っている。


 やった本人が言うのはあれだが、大きな怪我にはなってほしくない。


「あなた、やっぱりとんでもないわね」

「褒め言葉として受け取っておきます」


 力を得るために、母を心配されながらも魔法の腕を磨いたのだ。

 こうして、私はようやくリューの後を追うことが出来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ