待てない気持ち
前半リュー視点です。
歓喜し夢中になって、土から綺麗な花を咲かした。
母と自分の魔力が混じり合うことになった。
昔はこうあった時期があることをぼんやりと覚えている。
守るように魔力で包んでくれた。
だから襲われたとき、痛くなかった代わりに魔力が薄れて不安になった。
クレアがいないことに気付いたのは早かった。
どこにいるのだろうと探した。
昔からずっと一緒にいるのが当たり前だからだ。
この家に来てからそうでないことが多くなったが、クレアの側にいるのが自分の居場所だ。
声が聞こえていたので、すぐにクレアは見つけた。
空いている扉から部屋に入って、飛びかかろうとする。
だが部屋にいた二人が真剣な顔をして話しているので、なんとか踏みとどまった。
以前、飛びかかったらスノエに怒られた経験がある。
そのときにおやつの果物がなしとなってしまったのだ。
ひもじい思いをしたので、そうっと部屋に入った。
どうやら母のことについて話しているらしかった。
この家に来てから母の魔力を感じることは少ない。
今日は祭りでたくさん感じられるが、いつもはないに等しい。
だから会えるということを聞いて、とても嬉しくなった。
母は自分と違う形をする人間といっしょに行けと言った。
魔力の守りがなくなって怪我をした後、再会したときのことだった。
無性に母に会いたい。
言葉にされなかったが、今までは来るなという意思が魔力から感じられた。
きっと自分が母のような力をもたないからだから。
だから母は寂しいと思っても、離れて暮らすことにしたのだ。
甘やかし続けていたら駄目だから、ということらしい。
よく分からないが、自分のために苦しくても離れることを決めたのならばそうしよう。
そうして、これまで過ごしてきた。
幸い森にいる間は母の存在を感じられ、クレア達がいたから我慢出来た。
それで母に会うということだが、今ではなく来年、再来年らしい。
そんなの、自分には待ちきれない。
会って、話したいことがいっぱいあるのだ。
力はあいかわらず強くないが、魔力を扱うことは昔より成長した。
ほめられたい。
そんな思いから、開いて窓から飛び出す。
カタリと何かを倒してしまったが気付かず、ただ会いたいという気持ちでいっぱいだった。
*
呼び止めるために名前を叫ぶが、もう遅かった。
代わりに外からの色々な声が聞こえ、事態の深刻さが伺える。
私はすぐさまリューを追いかけることになった。
スノエおばあちゃんは公爵家の者にこのことを伝えるらしい。
「さて、なんと言われるだろうねぇ」とおばあちゃんはこぼす。私はそのときには家を出ていた。
リューが行った方向は人々の騒ぎようで、迷うことはなかった。
だが今日が祭りで人で混雑していることから、道を突っ走っていったら追いつけることはない。
私は家の出っ張っているところなどを使い、道ではないところから行くことにした。
身体強化で屋根まで登る。
私の姿を見てまた新たな騒ぎの元となるが、姿が見えなくなれば目撃者は数人だけだ。
上から見ると、リューがもたらした結果はより分かりやすかった。
人数の多さから、はっきりと龍だと認識している者ばかりだ。
街でリューを隠し通すことは難しくなった。
だが今はその心配をするよりも、追いかけることだ。
風魔法を発動させながら、屋根を伝っていく。
後ろの方から監視者がついて来るのが、目に見えて引き離すぐらいの速度差があった。
すぐさまリューに追いつける速度ではなかったので、点ぐらいの大きさで姿が見えたのは街の門近くであった。
私は二つの魔法を発動させながら、自身にもう一つ魔法をかける。
闇魔法だ。
走りながらもあって荒っぽい魔法となってしまったが、これで他者から自分を発見されにくくなった。
影に同化するようにする魔法だから、開いている門をくぐる際には強い風が吹いた程度で済んだ。
リューが姿を現わしたまま通っていったことで、騒然となっていたから出来たことだった。
リューの目的は太古の龍に会うことだ。
森に向かっているから、それは確実だと思う。
今は儀式中らしいので、太古の龍が逃げることはなく会える確率は高い。
後に出る面倒事は大きいことだが。
こうなってしまった以上、私はリューが親に会う手助けをしようと決めた。
森では魔物がいる。
戦闘を避けたとしても、リューだけでは太古の龍に向かうのに支障があるだろう。
手こずっている間に逃げられては困るので、私はまず遠く離れているリューと合流しようした。
私が門で使った闇魔法なら、戦闘は少なくできるはずだ。
森に突入する前にと風魔法で声を届かせようとして、魔力を練る。
そして発動しようとするが、目の前に立ち塞がった男のせいで邪魔となり見送ることになった。
補足
リューは太古の龍が一思いに殺そうとしたことがあると気付いていません。
親の龍は子が生まれたときに魔力で包み守るのですが、その守りが母から追い出されて魔物に襲われるまで続いていたからです。




