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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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嫌われたくない気持ち

 明らかに元気がないイオの状態を見ていられなくて、「ねえ」と声をかける。

 イオは座っていたので、パッと上を向いた。


「大丈夫? 元気ないけど」

「……」


 返答はないが、それがかえっていつものイオでないことが伺える。

 私は持っている土を、黙り込むイオの横に置いた。


「なんだこれ」

「土。見ておいて」


 あいた手で近くの屋台に行って、何個か食べ物を買う。 

 日の位置から時刻はお昼近くだ。

 がっつりとしたものを選び、イオに差し出す。


「……いらない」

「じゃあ、持って帰って。日頃のお礼だから」

「礼されることしてない」

「よくエリスにお菓子あげるでしょう?」


 お溢れをもらっていることを伝えると、遠慮なくもらってくれた。

 そしてお腹が空いていたのか食べ始める。

 私は食べ歩きをしていたので、見ているだけだ。

 ものすごい速さで食べ終わったので、他にも買った食べ物をあげる。

 それらを全て胃に収まったのを見届けてから、話しかける。

 リューはいつの間にか寝ていたので、しばらくは時間があった。


「何かあったの」


 こうは言うが、エリスと言ったときにピクリと反応があったのを見逃してはいない。

 エリスがニト先輩と一緒にいるところを見たのだろうという考えは当たっていた。


「……エリスがニトの野郎といるのを見たんだ」

「うん」

「祭りに誘ったんだ。だけど断られた。俺の何が駄目なんだろうな」

「エリスを思う気持ちは勝ってると思うよ」

「他には?」

「お菓子をくれるところ」

「エリスはお菓子が好きだったのか」

「いや、私が好きなだけ」


 お菓子は美味しい。

 今世になって、そのことに気付いた。

 前世は食べても味気ないものだったのに。


 イオは「お前の好きなものは聞いていない」睨んだ。 

 魔物と対峙していると、子供の睨みは怖くもない。

 ただ睨む程度の元気が出てきたなと思ったぐらいだ。



「……私はイオのことたいして知っていないけど、今みたいに突っかかってくるぐらいの方が似合うよ。だからまだ溜まっているものがあるなら、話してくれていいよ。なんならストレス発散に殴っても」


 勿論魔法で防御はするが。 

 痛いのは嫌いである。


「……なんでそうまでしてくれるんだ?」

「エリスがニト先輩と一緒にいる原因つくったの、私だから。その責任はとらないとね」


 説明すると、顔をしかめる状態となった。


「怒った? 殴る?」

「……殴らない」

「別にいいんだよ、思いっきりやっても」

「いい」

「剣は向けて来たのに?」


 木剣で勝負をしかけてきた過去があることを指摘する。

 あのとき、躊躇はしていかった。


「あのときはお前があんな綺麗なか、…………なんでもねーよ!」


 なんだか急にキレられた。

 背中を向けているので顔が見えないが、まあ元気が出ただろう。

 私は座っている状態から立ち上がる。


「せっかくの祭りなんだから、楽しまなきゃ駄目だよ」


 イオは現在は一人でいるが、きっと友達といただろう。

 はぐれているだろうから、私が必要以上に引き止めることはしなくていい。

 それにリューがイオの声で起きた。

 もそもそと動く鞄を隠しつつ、土が入った袋をもった。


 *


 別れた後、やはりイオとはぐれてしまっていた友達と会った。

 一緒に遊ばないかと、イオと同じ内容のことを言われる。

 だが土を持っていること、他にスノエおばあちゃんに昼に一度家に帰ってくるようにと言われている。

 詳しいことは言わなかったが、きっと龍関係である。


 家に到着すると、おばあちゃんは椅子に腰掛けていた。

 二人分のコップと飲みかけなお酒が目についた。

 おばあちゃんからの目配せから、二階の自分の部屋まで行って土と魔道具を置く。

 そうすると早くも土のところに植物を生やしているリューである。

 私は当分そうしているだろうと経験則から判断し、おばあちゃんの元に向かった。


「太古の龍が来ていたんだよね」

「そうさ。だがあんたらが帰ってくるのを察知して、逃げてしまった」

「引き止めることは出来なかったの?」

「ただの人が龍を止めることなんてできないよ」


 加えて、毎年太古の龍の住処のに赴いて儀式を行われているが、今年はいつもより時間を早めて始めるらしい。

 長年生きている龍とはいえ、おばあちゃんの口には負けるという。

 逃げる口述として、太古の龍は逃げる際に用いた。


「会いたいのに逃げてしまう気持ちが、私にはよく分からないよ」

「確かめてはいないが、嫌われてしまうのを避けているだろうさ」


 合わせる顔がないと理由として言っているが、人化していると顔の表情から考えていることがバレバレらしい。

 だが来年か再来年までには、きっと親子の龍は対面できるだろうと言った。


「今日は無理だったが、それまでにはなんとか説得できそうだからね」


 今日話してみて手応えがあったらしい。

 良かったという言葉が口に出る、その前にカタリという物音がした。

 物音がした方を見ると窓で、そこから外に飛んでいくリューの姿があった。

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