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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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64/333

完成

 これは夢だ。

 何回も繰り返し見てきた夢だ。

 いつの間にか走っている現状に対して、一瞬で分かった。


 苦しい。

 怖い。

 嫌い。

 熱い。


 そう感じさせた男が消えると、痛みは全て消える。

 もう慣れたものだ。

 私の意思を無視して行動する『私』は、一つも間違えることなく毎回同じことをするから。

 だから『私』の鋭い感情が私に伝わってきても、黙って受けとめることが出来る。



 ぎりぎりぎりと首が締まる。

 先程とは違う男だ。

 持ち上げて視線が高くなってしまった私は、男からの言葉を待つだけの状態だ。


「お前は誰にも必要とされていない。世界からも、人からも」


 そんなことはない。


「いらないんだ。いるだけで罪なんだ」


 違う。


「それなのになぜお前は生きていて、なぜ俺は死ななければならないんだ?」


 そんなの自分で考えれば分かることだろう


 私は否定する。

 だが声には出ないので、『私』は男の言葉が心に深く突き刺さる。


『私』が伝えるこの痛みは、助けを求めている信号だ。

 私と『私』は同じ存在だが、夢の中では別々に分かれている。

 だから、助けを求める手と助けようとする手は交わらない。


 今までは。



 声を出そうとして、失敗した。 

 息をするのもままならない状態なのだ。

 首を締めている手をどかそうとした。

 その手を掴むが、私の手は震えていて力が入っていない。


 助けようとしたが無理だった。

 魔法はこの夢では使えない。

 意思だけだ。

 悲劇の悪夢に打ち勝てる意思を持つまで、敵わない相手だ。


 だが次がある。



 私は男を睨みつける。

 チカチカとする視界だが、知ったことではない。


 今回は駄目だった。

 だが、こんなのは何度も繰り返したものだ。

 何度も負け続けてきた私は、こんなところで諦めたりしない。

 次こそは勝ってみせる。


 その意思をぶつけると、男はせせら笑う。


「やってみろ」


 男は手に強く力を入れた。


 *



 目が覚める。

 辺りは真っ暗だった。

 日の光が一切ない。

 真夜中だ。


「……そっか。私、眠っちゃったんだ」


 体が痛い。

 机の上で寝てしまっていた。


「完成、したんだよね」


 それで疲れて眠ってしまった。



 魔道具は完成した。

 二対の耳飾りという形で、小さな魔石が合計四つ鏤められている。

 これは装飾ではなく、魔力の保管容器だ。

 常に使用する為二日で事切れる量となるが、毎朝供給しておけば問題ない。

 習慣である魔力操作の鍛練時についでにしておけば忘れることはないだろう。

 体内の魔力の巡りを感じる際、意図しなくとも自分にかけられている魔法の存在には流石に気付く。


 絶対に外れてはならないので、耳飾りの中でもピアスである。

 耳に穴を開けるのだ。

 スノエおばあちゃんに頼み且つ魔法や薬があっても、暫しの痛みには襲われた。



 すっかり目が覚めていることから机の上にある道具を片付けていると、物音でリューが起きた。

 昨日は暖かい日であったことから、たくさんお昼寝をしていたこともあるだろう。

 真夜中なのに元気そうである。


「そうだ、リュー。散歩する?」


 真夜中ならば、人は滅多にいないだろう。

 唐突に思いついた誘いに、リューは目を輝かした。



 おばあちゃんに知られたら怒られそうなこともあって、窓から私とリューは外に出た。

 部屋は二階だが、風魔法を使えば楽勝なことだった。


 真夜中のセスティー厶の街は静かだった。

 魔力探知で判断すると、起きていそうな者は巡回中の兵士だけである。

 いや、私とリューを監視する二人もか。

 魔道具で魔力を隠しているようだがいる場所は分かる。


 監視者がもつ魔道具は対魔力結界だ。

 何度も何度も魔力探知をし、そうであると検証した。

 対魔力結界は魔法を通さないのだが、通さないが故に空気中の魔力の流れすらも魔力探知で示さなくなる。


 今までは空気中に漂う魔力は無視していた。

 おばあちゃんが監視者がいると教えてくれなかったら、いつまでも気付かないままだっただろう。

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