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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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56/333

何をしているんですか?

 ニト先輩に用事があったので、数ある部屋を虱潰しに探す。

 なんだか最近は同じ家にいるのだが、ふらっと先輩が帰ってくるまで行方が知らずということがある。

 今回もその場合であった。


「どこにいるんだろうね」


 あっちへいったりこっちへ行ったりと、せわしなく飛んで探してくれるリューに言う。

 すると「ガウガー……ウ!」と返ってきた。

 言葉だけなら何を伝えたいのかは分からなかったが、魔力を動かしたことでようやく分かった。


 それはニト先輩のもつ魔力を探せばいいということだ。 

 その方法があることをすっかり頭から抜けていた。


「……いた」


 空気中に漂う魔力や薬に含まれる魔力とかの関係ない魔力を無視しつつ、探知する領域を広げていくとあっさりと見つかった。


 家の角にある部屋の部屋の中にいた。

 隠し部屋のような部屋だ。

 何ヶ月か住んでいるが、初めて知った。



「ニト先輩、何しているんですか?」


 私は静かに部屋に入り、声をかける。


「うおっ! ……あー、クレディアちゃん。あとリューも。どうしてここに?」


 やけに慌てた様子だった。


「薬草の処理で分からないところがあったので、教えてもらおうと。それでニト先輩は何をしてたのですか。……いえ、何を隠しているんですか」


 手の後ろで何かもっているのを、私は先輩の挙動で感じ取っていた。

 それをリューがナイスアシストで隠しているものを奪い取る。


「ありがとう、リュー」

「ガゥー」


 リューから受け取ったものは瓶に入った液状の薬であろうものであった。

 今まで一通りの薬は調合してきたが、初めてみるものだ。

 そのためじっくり見ようとすると、その前に先輩に奪い返される。


「何するんですが、先輩」

「いや、それは俺が言いたい言葉だからなっ!」

「隠そうとしなければしませんでした。最後にもう一回だけ言います、何してたんですか」


 未だ隠し通そうとする先輩に「エリスに言いますね」と背を向ける。

 すると、「分かった、分かったから!」と不承不承に私を引き留めた。



「……調合をしていたんだ」

「見れば分かります」

「その、薬のだな……」

「それはもう分かりましたって」


 私は何度同じ言葉を言えばいいのだ。

 まごついている先輩の頭に乗っているリューだって、ベチベチと叩いて抗議している。

 そうして暫くしてから、先輩はもごもごと「男が元気になる薬だ」と白状した。


「体が漲るといったところですか? 戦闘職の人とかに好まれそうですね」 

「まあ、うん。そうだな」


 なんだか煮え切れない返事である。

 まだ何か話してないことがありそうなので追求すると、ボソリと「薬は強壮剤なんだ」と言った。


 リューは首を傾げているが、私はようやくニト先輩の態度の意味が分かった。


「その、自分用ですか……?」

「販売用だっ!」


 はっきりと言われる。

 まあ、確かにそうであろう。

 皆働いている中で、そんなことをするはずがない。

 先輩は仕事を真面目にする人であるから。 



「クレディアちゃんが来て仕事を覚えるのが速いから、時間がとれるようになったんだ。

 昔はスノエさんの弟子は今より一人二人多くいたからな。そのころに販売してた薬を止めていたのを、最近になって作るようになったんだ」


「求める客もいたことだし」と話を終え、私は事情を理解した。

 エリスは先程の先輩の様子から、このこと知らないようだ。

 隠し部屋に関しても同様に。


 男性用があるのなら女性用についての薬もあるのでは。

 そう思い、魔力探知で探すとスノエおばあちゃんの部屋の隣の部屋にあるようだった。




「このことはエリスに言わないようにな」


 先輩に口止めをされ、用事を終わらせてからリューと共にその場を後にした。


「どこ行ってたの」


 長居しすぎたのでエリスに咎められた。

 素直に謝ると、エリスは優しいので直ぐに許してくれる。


「あとはクレアの分だから、今度はサボらずやるんだよ」


 私がいない間に今日調合する分を終わらせてしまったようだ。

 邪魔しないようにリューは連れていかれ、私は一人もくもくと魔力を注ぎながら回復薬をつくる。


 そうして魔力が四分の一程度減ったぐらいで、「もうニトなんて知らない!」とバタバタと廊下を走っていく音が聞こえた。

 瓶に回復薬を移している手を止めて様子を見に行く。

 丁度エリスが家を出ていく後ろ姿が見えたところだった。


「クレディアちゃん! エリスはどこ行った!?」

「えっと、外です」


 言い終わるや否や、エリスの後を追っていった。



「……もうすぐ納品の時間なんだけどねぇ」

「スノエおばあちゃん」

「あの馬鹿達がいつ帰ってくるか分からないから、クレア、店番してくれないかい」

「うん、分かった」

「すまないね。すぐ戻るから頼んだよ」


 なんだか何なんだか分からない内に、店番することになった。

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