魔法陣の本
魔法店という名前からおどろおどろしい見た目をしているのだろうか。
ちょっとだけその想像に期待したが、到着してみると普通の店だった。
実際、期待通りだとしてもその光景には引いていたとは思うので、そこまで落胆しないまま扉を押そうとするがやめた。
扉から何かが違うなと感じたのだ。
それが気になったのでよくよく見てみると、扉の装飾だと思っていたものに紛れて魔法陣が刻まれている。
防犯の為か客が入ったことを知らせるものだろうとすっきりしたところで、ようやく魔法店に入る。
店内は仄暗かった。
その中に品物が雑多に置かれている。
杖や液体が入った小瓶、巻物、魔道具などだ。
見たことがないものが多くあり、魔法使いである私は興味惹かれるものばかりだ。
「おや、小さなお客さんだ。いらっしゃい」
店主だろう女性が声をかけた。
先程までは見かけなかったので、やはり扉の魔法陣の機能は予想したものだったのだろう。
「こんにちは。魔法陣について書かれている本を探しているのですが、ありますか?」
自分で探すよりも聞いたほうが早いことは本屋で分かっている。
すでに入口のところで目移りしていたのでそう聞くと、「ちょっとまっててー」とごそごそと漁る。
「五冊あるんだけど、どうする? あ、結構な値段するんだけど、お金持ってるかな?」
私は値段を聞いて、手持ちのお金で足りることを確認した。
どの本がいいのだろうか。
本の厚さはどれも同じぐらいだ。
ただ入門書と書かれているのが一冊あるので、それがいいのかなと手に取った。
「初めてなら、今持ってるのじゃなくてこの本がいいと思うよ」
「ほら」と言って私に一冊の本を渡す。
どうやらこちらの方が分かりやすく解説してあるそうだ。
誰かが使った本なのだろうか。
パラリパラリとところどころめくると、難しそうな表現のところとかに書き込みがしてある。
だが目立つ汚れというものはなく、綺麗に使われていたようだ。
「この本にします」
中古というのには気にしない主義だ。
入門書の方を買っても、多分入門の域では終わらないのでまた本を買わなくてはならなくなる。
そのぐらい、ローブの魔法陣は難易度は易しくない。
そうして買う本を決めると、確認するとやはり店主であった女性が専用のペンとインクをセットで付けてくれた。
「私が使っていた本を買ってくれるのからね。おまけだよ」
「そうだったのですか。大切に使わせていただきますね」
「そうしてくれると嬉しいよ。それにこんな小さい子が魔法陣に興味もってくれたからね、サービスだ。
……あと、お客さんはスノエさんの弟子になった子だろう? 印象は良くしておかないとね」
なぜ私がスノエおばあちゃんの弟子だと分かったのだろうか。
お店の裏側でしか働いていないのに。
「開店前に品物を並べたりしているだろう? そのときに見たんだ」
私は売れた品の補充の仕事を担当している。
毎朝していることだから、見られていたとしてもおかしな事ではない。
店内の掃除も朝やっていて窓を開けているから、そのせいで私のことを知ることに繋がったのだろう。
別に私が弟子だということは知られてもいいが、店主に詳しいことを聞くと私のことは噂になっているらしい。
薬屋はセスティームの街では有名なお店であるから、噂は広まりやすいのだろう。
恥ずかしいことだった。
弟子であり、冒険者であることも知られているようだった。
私はいつもローブ姿であるから、同一人物であることがすぐに分かるらしい。
ローブに魔法が付着されているのは分かる人は分かる。
朝ローブに魔力を込めれば一日は持つので、見る人は常に魔法が働いている状態であるからだ。
魔力の反応を感じ取れる人は直ぐに分かるらしい。
それで魔法が付着されているのは高価なので、来ている人は滅多にいない。
それでスノエさんに新たに弟子ができて、その子は冒険者としても活動しているらしい。
そんな風に噂になっているらしい。
「スノエさんの弟子だから忙しいと思うけど、魔法陣の勉強頑張れ」という応援を貰い、私は魔法店をあとにした。
私のことが噂になっているのには驚きと恥ずかしさがある。
だが内容は事実なことだ。
間違った内容でないからいいだろうと考えを終わらせる。
そうでないと、杖を一応身につけている現状、歩いているだけで噂は広まることになっているのではないか。
そう自意識過剰になって、人の目を気にしてしまうから。
噂のことは一先ず忘れ、目的をようやく達成することが出来て足取り軽やかに歩く。
そうしていたから、私はとある人物がいるのに気がつくのに遅れた。
私が外に出歩くと、毎回のように付きまとう人だ。
実際には人達が正しいが、そうなっている原因はリーダー格の少年一人なので私の言い方はそれほど間違っている訳けでもないだろう。
前から来るので、私は回れ右をして逃げようとする。
だが、相手は何度か繰り返した私の行動はお見通しのようだ。
回れ右をするとけだるげそうにしている子供が三人いた。
私は前と後ろから挟まれるようになった。
今回は失敗したようだ。
溜息をつき、しょうがなくリーダー格の少年、イオに向き直る。
そしてイオの決まり文句の「勝負だ!」という言葉を聞いた。




