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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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ミーアさんと依頼 前編

 今日は薬屋が定休日だったので、魔法陣に関する本を買うためにも冒険者としてお金を稼ぐことにした。

 毎夜欠かさず闇魔法について研究しているので、別に隠そうとしている訳ではないそのことにスノエおばあちゃんは気付いているようだった。


 それでお金を出そうかと言われたが、遠慮した。

 すぐに成果が出るようなものではないし、髪と瞳の色を隠すのにローブの付着されている魔法以上の効果が得られるかは分からない。 

 手探りな状態であるから、頼むことはあまりしたくなかった。


 それにお金を自分で稼ぐということは達成感があったし、お世話になっているおばあちゃんやニト先輩、エリスに何か贈りたい。

 なので今日早速お金を稼いだらお店で贈るものを見ようと計画を立てた。



 セスティームの街にある冒険者ギルドの依頼は、私が以前母と暮らしていた家がある森に関する依頼が多いのでリューを連れていくことにした。

 森の魔物に関する依頼を受けようと思っているので、最近は寝てばかりいるリューの運動不足を解消してもらおうと思う。


 窮屈だが大きめのリュックに入ってもらい、リューがモゾモゾとしているのを背中越しに感じながら私は冒険者ギルドで紙で張り出されている依頼を見る。

 私は紙の左上にEとFランクと書かれているものしか受けれない。


 低ランクなのでやはり報酬は低い。

 そのため数をこなそうかと一日で出来る組み合わせを考えていると、「クレディアちゃん」と私に声をかける人がいた。


 母の友人のミーアさんだった。

 防具や剣を身に着けている。

 とても様になっていて、容姿から感じる可愛らしい印象に凛々しさが合わさっている。


「ミーアさん。久しぶりです」

「街では会わないからね。スノエさんの薬屋にはよく行くんだけど、お店側にクレディアちゃんはいないから。あ、メリンダのようにクレアって呼んでいい?」


 半魔だということが少しでもバレる要因がないように裏側にずっといる。

 お店側に行くのは開店前に商品を並べるときと掃除ぐらいだ。


 呼び方を了承し、「そういえば冒険者なんですよね」と母と一緒にチームを組んでいたことを思い出して話を繋げる。


「うん。今は副業みたいなものだけどね」

「本業ではないんですか?」

「本業は騎士。メリンダが母親になってネオサスもお嫁さんがいたから、私も腰をおろして一か所に落ち着くのもいいかなって」


 ミーアさんはセスティームの街の領主の騎士らしい。

 そういえばネオサスさんも同様に騎士だったような。

 以前エリスが誇らしげに言っていた覚えがある。


「冒険者から騎士ってなれるのですね」

「滅多にないことだけどね。でも領主の公爵様は平民でも実力がある人をどんどん採用する人だから。それで騎士にと誘われたんだ」


 母とチームを組んでいたから実力はあるはずで、誘われるのことは納得がいく。

 凄いと尊敬の目で見ていると、突然背中から衝撃がきて「うぐっ」と声が漏れ出た。

 鈍い痛みで若干くの字になっていると、ミーアさんが慌てた様子になり「お腹痛いの!?」と心配する。


「だ、大丈夫、です……。その、お腹は痛くないので、声を抑えてください」


 私は注目を浴びることになっていて、とても恥ずかしい。


 痛みの原因はリューだった。

 尻尾でだろうか、今もバシバシと背中を叩いている。


 きっと話が長くなりそうなのを察知して、速く森に行こうと促しているのだろうと思う。

 ……分かった、分かったから。

 もう叩かないでっ。



 リュックに入っているリューのことをミーアさんに話して誤解をといたところで、私はミーアさんに助言をもらいながら今日受ける依頼を選ぶことになった。

 ありがたいが、ミーアさんも用事があるだろうにそれはいいのだろうか。


「ああ、それは気にしないでいいよ。私はクレアのことを見に来ただけだから」

「私をですか?」

「うん、一応ね。メリンダから頼まれているし、実際に戦っている姿を生で見たかったから」


 母から私のことをよく聞いているようで、「これとこれと、あとこれかな」といくつか依頼を見繕ってくれた。



「んー、なんか討伐と護衛の依頼が多いような……? ねえ、おじさーん!」


 私は初めて依頼の紙が掲示されているのを見たので比べるものがなく分からなかったが、魔物が多く発生しているのか討伐系の依頼が多いらしい。

 ミーアさんが冒険者のおじさんに訪ねている話を私も聞いてそう把握した。


「一週間前からだったか? 確かそんぐらいから森にいる魔物が多くなったらしくてな。それが森の近くの街道にも魔物が出てくるぐらいだから、その依頼の数が多くなってるんだ」


 おじさんは「森に行くなら気を付けろよ」と言って去っていった。


「森に行くことになるけど、浅い場所だしクレアなら平気だと思うけどどうする? やめておく?」

「いえ、次いつ休みになるのか分からないので行きます」


 薬屋は定休日だが、急用で薬が必要になる人が来るかもしれないので誰か一人は家にいなければならない。

 今回私は丸一日休みだが、次は多分留守番をしなければならないはず。

 街で買い物をするぐらいなら休み時間に買いに行けるがお金を稼ぐのに現段階のランクで依頼を受けれる内容は動物を狩ってくるようなものが一番良い。

 それに依頼になくても牙や爪、毛皮などは買い取ってくれるようなので、魔物が多いところで行かないという選択はとらない。

 ミーアさんがいて私も森の浅いところでなら魔物に遅れはとらないので、大丈夫だろうということもある。


 私は受付嬢に依頼を受理してもらい、ミーアさんとリュックにいるリューと共に森に行った。

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