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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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薬の調合

「……ニト先輩」

「何だ?」

「えっと、そんなに見ていなくても出来るのですが」


 私が薬の調合している様子をニト先輩は一心不乱に見ていた。

 冒険者ギルドで初の依頼を無事完了し、その一週間後の現在。

 調合で難しいものは無理だが、簡単なものは一人でも出来るようになっていた。 

 ニト先輩もそれは知っているのだが、どうしたというのだろうか。

 何も特別なことはしようとはしていないのに。


「いや、クレディアちゃんの料理の腕前から、薬の調合でも同じことやらかさないか見ていないと」

「……流石に料理のときのようなことはしません」

「ほんとにか?」

「商品になるものではしませんよ」


 昨日の夜ご飯を私が披露したからの行動だった。


「まさか料理が駄目だったとは思わなかったよ。クレディアちゃんはなんでも器用にこなすから」

「昔は料理上手だったのですよ」

「でもそれお母さんと比べたらだろ? スノエさん言ってたぞ」


 母は料理全然駄目だったが、私も同じように思われていたのか。

 衝撃の事実だ。

 確かに昨夜の料理は自分でもちょっと、……いやだいぶ失敗してしまったと思うが。


 昨日の料理担当はニト先輩だったが、忙しそうだったので「代わりにやりましょうか」と作ることになったのだ。

 私は専ら皿洗いや洗濯、掃除といったもので、料理は担当していなかった。

 だから料理をするのは、母がいたときの生活で時々料理をしていた以来で、そのことから料理を失敗してしまった原因と考えている。


「いや、あれは久しぶりだから失敗したという次元じゃないからな!? 野菜の大きさはバラバラで炒めてあっても硬いところあったし、味なんてめちゃくちゃだったから!」

「……次は頑張ります」

「もうスノエさんに料理するなって止められてるだろ! 最初はまだ食べれる方だったのに、年が経つにつれてだんだん下手くそになってきているってスノエさんが戦慄してたからなっ」


 私がいないところでこんな話をしていたとは。

 不満をゴリゴリと薬草をすり潰すことで消化する。

 子供の身では力がいるので、ストレス発散にはもってこいのものだ。



 はぁ、やれやれとニト先輩は私が薬の調合で料理と同じことにはならないと判断したのか、自分の調合をようやく始めた。

 それがなんだか聞き分けの悪い子供扱いされているような感じだ。

 後でスノエおばあちゃんにサボっていたとチクろう。

 結構な時間を私の調合を見るのに費やしていたので、きっと怒られるだろう。

 でもそれだけだとまだ溜飲は下がらない。

 私はニト先輩の心の傷を抉る話題をすることにした。


「そういえばニト先輩、昨日告白して振られたそうですね」

「うぐっ」

「しかも薬屋の店内の中で。……接客中に何をしているのですか」


 ぐいぐい押せば何も声は出なくなってしまっていた。

 ちょっとやりすぎただろうか。

 だが告白はニト先輩と共に仕事をしていたエリスの目の前で行われたもので、その本人から聞いた話だ。

 慣れていると言っていたが悲しいであろうことは落ち込みようから間違いないので、私からの制裁をありがたく受けてほしい。


 なんでニト先輩は身近な人で自分のことを好いてくれている人がいるって気付かないのか。

 あんなに尽くして、そして甘えているのに。

 まあ、子供だと見られているからだと思うが。


 エリスはまだ成長期はきていないので、年齢のわりに身長が高かったり女としての体つきであったりはしない。

 本人はまだかまだかと焦っているようだが、望んでもくるものではない。

 私はエリスの恋が実ってほしいと応援しているので二人っきりにしたりと手伝っているが、状況は進展していない。



 儘ならないものだと思っていると、調合は平行して行っていたので薬が完成していた。


「ニト先輩、終わりました」

「お、もう手慣れたものだな」

「もう何回もやりましたので」


 品質を見てもらうと良い評価をもらった。


「このぐらいできるなら回復薬もやってみるか?」

「難しいですか?」

「魔力を使う工程があるからな。今までよりは難しい。けどスノエさんがどんどんやらせろって言ってたから、挑戦してみたらいいと思うぞ」


 おばあちゃんには将来的には魔力が必要になる調合を主にやってもらいたいと思われている。

 魔力量が人の倍以上に多い私はそういう面に期待されているのだ。


「……私、やってみます」


 私が森の中にある家にいたとき、おばあちゃんは薬に関する本を読ませてくれたりためになる知識を色々と教えてくれた。

 その予備知識のおかげで、私は約一週間という短い期間で調合までやらせてもらっている。


 おばあちゃん達の話やアドバイスをよく聞いて分からないことも遠慮しないで訪ねたので、これまで大きな失敗はしていない。

 だが今までとは違い魔力を使うということで、失敗してしまうかもしれないと怖気づいていたのだが、私はお世話になっているのだから速く役に立てるようにならなくては。



 私は気合をいれ、休憩をとった後に初級の回復薬を教えてもらい、魔力のこめる量に失敗するもその日のうちに一つ調合に成功することが出来た。

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