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探検

 フラフラと未だ慣れない足取りで部屋から抜け出した先は広いリビングだった。

 初めて見るものがたくさんあって興味がそそられるが、まずはと母の確認だ。


 ぐるりと落ち着いた雰囲気の部屋を見回してみるが、どこにもいない。

 しかし話し声は聴こる。

 それは母と先程聴こえた男によるものだった。

 いや、もう一人可愛らしい女性の声もある。

 姿は見えないものの、玄関の扉と思われる奥から聴こえてきた。


 ひとまずは訪ねてきた者が怒鳴ったりすることはなく、話しているようなので良かった。

 扉を強く叩く感じからして、怒っているか焦っている風に感じたのでひとまずは安心だ。

 母の表情から大変なことが起こるのかと不安になったが、杞憂だったようである。



 合流しようかと考えるが、母が私をおいて行ったことから行かないほうがいいと判断する。

 それに部屋から出てきたことに罪悪感があるから、母が戻るまでに何事もなかったかのようにしておきたい気持ちもある。


 あまり困らせたくないのだ。

 心配症なので、そういうことは控えたい。


 とりあえずは母が戻ってくるまではまだまだ時間があると思う。

 それまでは存分に不満を晴らしたいと思う。

 ―――探検だ。




 まずは手始めに近くにあった本からにした。

 何冊か積み上がっている。

 本を読むことは好きだし、この世界の文字というのはどんな感じか見たい。

 一番上の本から取ろうするが、私の背からしたら高すぎる。

 足をぷるぷるとしながら頑張るが、どうしたって無理だった。


 仕方がないので諦め、真ん中らへんから取ることにする。 

 これは高度な技術が必要だ。

 だるま落としのような感覚で勢いよく押す。

 いや、引き抜いた方がいいのだろうか。

 赤ちゃんの力などたかが知れているので、本をもって全体重を後ろにかける。

 すると尻もちはついたものの見事成功。

 本を手に入れることが出来た。

 だが代償に積み上がっている本のバランスが崩れ、音を立てて崩れた。


 バサバサバサと本が落ちていくのを、やってしまったと思うものの赤ちゃんの身ではどうすることもできなかった。

 ただ固まることしかできない。

 外にいる母が気付いてしまっただろうか。

 心臓をバクバクとしながらその固まった状態でいたが、いつまでたっても来ることはない。

 ばれなくて済んだようだ。


 手に取った本を見てみた。

 高価そうな本なので丁重に開くと、平がなでもなくアルファベットでもない、初めて見る文字がズラリと並んでいる。

 勿論解読はできない。

 他にも違う本を見てみるが、どれも同じようなものだった。

 絵本のようなものがあったら文字の練習が出来ると期待していたので残念だった。

どの本も高度すぎる。 

 難しい本は将来リベンジしよう。



 崩れてしまった本は強い風が吹いたことにしそのままの状態にして、次は家具だ。

 目に入った順に色々と見ていく方針だが、この世界はあまり文明が進んでいないのだろう。

 家具はほとんどが木で出来ていて、シンプルなものだった。

 

 その次は暖炉。 

 パチパチと火が爆ぜている。

 じーっと見てたせいか、熱さで頭がぼうっとする。

 何だかすごく暑い。 

 もともと寒くなかったので、余計にそう感じられた。


 そのまた次はキッチン。

 高すぎて全然どんな感じか分からなかった。

 日本人として私も食にこだわるので、調味料がどれだけそろえられているのか知りたかった。

 だが、やはり見えない。

 まあ、現在は離乳食なので本格的な料理はまだ先だろう。

 いつかのお楽しみということにしておいた。



 色々なものを見て回ったが、一番興味が出たものは棚に並べてあるものだった。

 ずっと見ていても飽きないようなものが色々とあったからだ。

 見上げるぐらいの高さの棚には、水色の透明な液体が小瓶に入って置いてあり、頭より少し高い位置には、私のこぶしと同じぐらいかそれより小さい石と腕輪があった。

 踏み台となれるようなものに乗って近くで見てみると、石はなんとも言えない不思議な色をしている。

 腕輪は細かい装飾のついていて、芸術的価値がありそうなものだった。

 おそるおそるだが腕にはめる。

 勿論ぶかぶかだった。

 そして気付いたのだが、先程の大量にあった石と同じものが腕輪についていた。

 宝石の類いなのだろうか。


 しばらく見とれていたが、こういうものはとても高価なのだろうと今更恐れを抱き、慌てて腕輪を外そうとした。

 そのせいで腕輪の石の部分に触れてしまい、何か違和感を感じた。


 気のせいだろうか。

 一瞬のことだったのでそう考えたが、すぐに間違いだったと分かった。

 急速に体から力が抜けたからだ。


 不味いと思うが、やはり赤ちゃんの身。

 どうしようも出来ない。

 心配かけてしまうと母を思い浮かべながら床に倒れ込む。

 意識が遠ざかり、視界が閉じていく。

 そして私は気を失った。

次は母視点です。

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