冒険者の身分を手に入れて
受付の女性の目線が気になる中、重罪を犯したことはないか真偽をはかることになった。
丸い水晶に手を置いて、質問に答えるだけの簡単なものだ。
それは真偽が分かる魔道具らしい。
森での生活は暇なことが多く魔法に関する研究をしていた身としては、分解してどうなっているか確かめたい気持ちになってしまう。
こういうところは似ているところなんだろうな、とまだ見たことがない父に思いを馳せた。
冒険者としての説明や注意事項を聞き、登録料としてお金をおばあちゃんが払う。
そして身分を証明できるタグをもらって登録は終了した。
タグは他者から見える位置に身に着けておいた方がいいらしい。
杖がある腰の辺りにぶら下げておくことにした。
踏み台は片付けてくれるといことで、依頼が張られている掲示まで見ることになった。
私のランクはFランクで、二週間の間に一回依頼を受けなければ冒険者の身分は剥奪されてしまう。
「私ができそうなのは……薬草取りか掃除、それと動物を狩るぐらい?」
「Fランク以外にもEランクの依頼は受けれる。そして魔物の素材は依頼がなくても買い取ってくれるさ」
おばあちゃんは冒険者ではないものの詳しいらしく、細かい点を教えてくれる。
八歳という年齢に配慮して分かりやすく簡潔に受付の女性は話してくれたが、一気に言われたのでどこか一部抜けてしまっていた。
「前にも言ったが、クレアには薬屋で働く際は薬草取りから始めてもらう。弟子は皆そこから例外なくやっているからね。だからそのついでに常時依頼が出ている薬草を主に受ければいいさ」
私はお手伝いという気分でいるから、弟子と言われても慣れない感じがする。
おばあちゃんは誰に対しても、働いてもらうからには知識も技術もしっかり教える考えらしい。
どのくらいの期間、おばあちゃんにお世話になるのか分からないが、弟子として扱ってくれるのならばその立場にふさわしい意気込みで教えられることを吸収したいと思った。
依頼を受けるには掲示されている紙を受付まで持っていかなくてはならないが、常時の依頼はしなくてもいいらしい。
明日薬草取りをするということなので、私とおばあちゃんは冒険者ギルドを後にする。
その次には衛所に行くことになった。
永住権の申請はそこで行うらしい。
冒険者として何も活躍していないので通るものかと不安だが、基本はスノエおばあちゃんのコネごり押しでいくらしい。なんて頼もしい。
「スノエさんと……クレディアちゃんだったな。ニ日ぶりですね」
衛所には私が街に入るときに担当してくれた衛兵がいたので、今回の手続きも同様にやってもらった。
待ち時間があったので、椅子に座ってぼうっとしていると「どうぞ」と愛想のいい先程とは別の衛兵さんがジュースを出してくれる。
丁度喉が渇いていたのでありがたく、ごくりごくりと胃に流し込む。
「いい飲みっぷりだなぁ」
ハッと気付くと、微笑ましく見られていた。
恥ずかしい。
だが八歳児ならよくあることだろうから、むしろ堂々とするべきだろうか。
普段からもっと子供らしくするべきなのだろうかと、うんうん唸っていると手続きは終わっていた。
帰る前に待っている間に話し相手となってくれたり飲み物をくれたことのお礼をいうと、よしよしと手続きをしてくれた衛兵が頭を撫でた。
前回とは違い、力はそれほど強くない。
優しい手つきでもないが、視界が揺れることはないのでちょうどいいぐらいだ。
すると、見ていた他の衛兵達がそれに習って私の頭を順番に撫で始めた。
なんだこれは。
面白がってやっているというのは伝わってくるが。
嫌という訳ではないが、動物園で触れ合えるうさぎとかの動物はこんな感じだったのだなと実体験している気持ちになった。
ただ、新しい街の住人として歓迎していることが伝わって、フードの中で私は人知れず嬉しくて口が緩んだ。




