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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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33/333

冒険者ギルドへ

 朝になった。


 昨日は買い物で自分で思っていた以上に疲れていたようで、まだ寝足りなかった。

 体に関しては母に強制的に鍛えられていたのだが、慣れない買い物や街には多くの人がいて、身体的にも精神的にもくるものがある。

 あと少しだからと買ったものを部屋にある程度片付けていて、睡眠時間がいつもより短かったのも関係しているだろう。


 それでも私はこくりこくりしながら、体内の魔力を循環させ鍛錬する。

 昨日と違ってリューは起きていた。

 寝ぼけまなこでも何年も続けている魔力循環では失敗しないのだが、魔力を扱っていることから多少なりとも危険はあるので、リューは起きてと尻尾で私をペチペチ叩いた。





「冒険者ギルドに?」


 朝食を家にいる皆で取っていると、今日の予定についてスノエおばあちゃんがそこの場所に行くと言ったので、私は聞き返してしまった。


「……なんで?」

「あんたが冒険者の方が都合がいいからさ」


 どうやらこの町で暮らすに当たり、永住権を取得しておいた方がいいからという理由らしい。

 冒険者になり活躍しておけば申請は通りやすくなる。

 店の手伝いをしながら冒険者を兼ねることになるが、常時発注している薬草採取の依頼を受ければ負担は軽くなるとのこと。

 非常事態に収集をかけられるデメリットがあるものの、滅多に起こるものではないらしい。

 

 私は世界を見て回るためにいずれ冒険者になろうとは思っていたので、登録することに了承を告げた。 

 冒険者ギルドに行く時間は人が少なくなる昼頃らしい。

 それまでは手伝いということで、皿を洗ったり開店前に店の商品を運んだりした。

 おばあちゃんが配慮したのか、お客さんに見られることはなかった。





「リューはお留守番ね」

「……ガゥ」


 寂しそうにしているリューをおいて、おばあちゃんと共に冒険者ギルドへと向かう。

 リューはこのままだとずっと家にいなければならないのだろうか。

 相談すると、おばあちゃんは森に行くときにこっそり連れていけばいいとのこと。

 街に来てからリューとは離れて行動することが多いので、薬草取りが楽しみになった。



 冒険者ギルドは二階建ての建物にあった。

 建物内には冒険者と思われる男の人が三人いた。

 私達は早めに昼食を食べてきたが時刻はちょど昼飯時なので、余計人がいない結果だった。


 おばあちゃんの後ろを歩いていると、「オッス」「こんにちは」といったように挨拶される。

 勿論、おばあちゃんに対してだ。

 私には視線でチラチラと見られる。

 いないものとして扱ってほしいがおばあちゃんは有名で、屈強な男達がぺこりと頭を下げるので無理な話で凄い光景だった。


「こんにちは、スノエさん。今日はどうされましたか?」


 受付の人は可愛らしい女性だった。

 やはりこういう場所にいる人は、どこの世界でも見目が良い人ばかりなのだろうか。

 というか、おばあちゃんの名前が受付の人に知られていて、やはり有名なことが伝わる。


 そういえば、私ぐらいの年齢の子に小遣い稼ぎとして、街付近で採取できる薬草の依頼をしていると聞いた。

 そして朝の薬屋を客に見つからないようコソッと様子を伺ったが、にぎやかなものだった。

 冒険者が朝は多く、回復薬が次々と売れていた。

 そのことを踏まえると、冒険者ギルド内で有名なのが理解できた。


「はい、どうぞ」


 受付の女性がにこやかに紙とペンを受付台に置く。

 おばあちゃんが女性と話を進めていて、私のために踏み台も準備してくれる。

 乗ってみると、ピッタリの高さだ。

 ありがとうございます、と礼を言い、冒険者になるべく必要な記入を書く。


 名前、年齢、性別、種族、出身地、得意な武器など、書く部分は少ない。

 それでも正体を隠すためには正直に書けないところは多く、必ず書かなくてはならなかった種族は人間とし、出身地は空欄にしておいた。


「終わりました」

「それでは、確認しますね」


 受付の女性が一通り目を通す。


「種族のことでですが、一応フードを下ろしてもらって見させてほしいのですが……」

「この子は人間さ」

「スノエさんが連れてきた子なので信用はしていますが、規則ですので」


 こんなところに伏兵が。

 自然におばあちゃんが必要ないだろう、と言うが、受付の女性は引かない。

 こんなことになると分かっていたら、ローブに頼りっきりにするのではなくて、ウィッグだったり髪を染めたりして対策をとっていたのに。


 ハラハラとしていると、おばあちゃんが「……ここだけの話にしてほしいんだが、」というところまで聞こえて、二人で内緒話をし始めた。

 私のことをバラしてしまうのだろうか。

 そこまで親しい間柄という訳ではなさそうなのに。


 だか、そういうことではないようだった。

 驚ろかれることも恐れられることもなく話は終わり、受付の女性が「ごめんね、そんな事情があったんだね」と哀れんだ表情で見てくる。

「顔は見せないでいいよ」とフードの上から頭を触られ、これだけで種族の確認は終わったようだ。


「……何話したの?」

「なに、事前に用意していた話を聞かせただけさ」


 詳しく言うと、私が顔を見せたくない理由を適当にでっち上げて、物語風に聞かせたらしい。

 よく見ると、受付の女性が涙目になっている。


 後で口裏を合わせるためにその物語風の内容を聞くことにして、心情は置いといて種族のことに関してバレなかったので良かったと思った。

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