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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
セスティームの町

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買い物

「買い物?」

「ああ、そうさ」


 朝の食事を終え、今日から始まるだろう手伝いで私はやる気に満ちていた。

 いつまでか分からないが、お世話になる身としてはお荷物だけの存在にはなりたくない。

 それに薬草について教えてもらっていたから、すこしぐらいは役に立てるはずだ。

 そう思って朝から手伝おうとして「まだ寝なさい」と一度断られ、現在、言われたのが買い物に行ってこいというものだ。


「何を買ってくればいいの?」

「おまえさんの必要なものさ」

「……いるものあったっけ?」

「服とか家具とか、いろいろあるだろう。自分のやることをやってから、手伝いは言いな」


 必要最低限、家から持ってきていて何とか生活は出来るから、自分のことは気にしていなかった。

 まだ昨日来たばかりで、何が足りていないのかが分かっていないからかもしれないが。

 でも、一つ言いたいのが。


「私、一人で買い物出来ない」


 お店の場所やお金、物の相場など何も分かっていない。

 お金なんて、見たことすらない。


「別に一人で行けとは言っていないさ。エリスを連れて行かせる。この街は治安がいいから、子供二人でも安心できる。

 ……それにこれまで年の近い子はいなかったんだ。楽しんできなさい」


 おばあちゃんはしかめっ面を緩め、優しく微笑んだ。




 

「スノエさん、行ってくるね!」

「ああ、気をつけて行くんだよ。クレアのことは頼んだからね」

「うん、私に任せて!」


 支度をし終わったころに丁度よくエリスが家に来て、早速買い物に行くことになった。

 リューは何をするにもいつも一緒だったので連れて行こうとしたが、街が騒ぎになってしまうということで、リューは留守番。

 あまりに悲しそうな顔をしていたので、お土産を買ってこようと思った。



「クレディアは魔法使えるの?昨日も杖をもってたけど」


 私は念のため武装をしていた。

 短剣は買い物するには重いので置いてきているが、杖は腰に差さっている。


「うん。魔法は使えるよ。得意だし、好きなんだ」

「すごい! 私もなんだ。頑張って練習していて、ようやく基礎の魔法が安定してきたの」


 唖然した。

 私は才能があって、人よりも努力をしてきたと自負している。

 それだけのことをしてきた自信があるからだ。

 だけど、それは他の人よりも少しリードしているぐらいだと思っていて、だから母から同年代の子の実力よりあると言われもそこまで気にしてなかった。

 しかしエリスの言葉から読み取れる常識を知って、焦ってくる。


 バレたら目立つし、引かれる。

 他者とは違うということはそういうものだ。


 私は慌てて、「最初はどこにいくの?」と話を変える。

 エリスには少し変に思われたが、その私の様子を聞くことなく「服屋だよ」と言った。


「ほら、ここ」


 指さされたところを見ると、子供用の服屋があった。

 ひらひらとした、ピンクが多そうな店だ。


「クレディアに似合いそうな服、いっぱい選んであげるね」

「……お手柔らかにね」


 私はあまり服には興味がない。

 だから選んでくれることは嬉しいが、なんだか人形のように飾り付ける想像をしてしまって、顔が引きつってしまった。





「ありがとうございましたー!」


 店員の声に見送られながら、服屋を出る。

 これで5軒目だ。


「エリス、もう無理っ。休憩しよ」

「じゃあお昼ご飯にしよっか」


 体力が有り余っているエリスは、日の位置を確認してそう言った。


 服の買い物は最初の一軒までは順調だった。

 エリスは自分の好みを強要することはなく、私に合いそうな服をいくつか候補として選んでくれた。

 その選択肢の中から気に入ったものを選ぶだけなので、私はとても楽だった。

 それにローブを脱げと言われることがなく気遣ってくれたおかげで、安心して服選びをする事ができた。


 私はいくつか服を買うことが出来て、満足していた。

 しかしエリスは違った。

 私が選んだ服が少なかったからなのか、「まだ足りない」と別のお店に向かうことになったのだ。


 そこからは最初の服選びに戻ってエンドレス。

 エリスは私が持っている服の倍以上を持っているらしく、もう要らないと言っても「遠慮しなくても大丈夫だから!」と誤解している。


 おばあちゃんに渡されたお金が、大金だったのもいけない。

 そのせいでこれから買う予定のものを含めてもお金は余るので、点々と服屋を巡ることになったのだ。 

 お店の店員さんが気をきかせて、買った服を家に届けてくれることにならなかったら、物量で私は潰れていた。

 そのぐらい、買った量は多かった。



 昼食にと連れられて着いたオススメのお店は、ご飯時は過ぎていたが客がちらほらといた。

 空いている席に適当に座ると、私は店員さんから飲み物とお店で一番人気のあるものを頼んだ。

 エリスも飲み物の種類は異なるが、同じものを頼んだ。


「私ね、家族とよくこのお店に来るの」


 エリスは自身の親のことを語る。

 それは親が好きなこと、親から愛されていることが伝わってくる。


 今、何してるのだろう。

 私は急に母のことが恋しくなった。

 嬉しそうに話すエリスと現在の私をどうしても比べてしまい、寂しさを感じてしまう。

 親からの愛情を知らなかった前世では考えられなかったことだ。

 そんなことを考え、こうしてみると今世は幸せだと思った。

 寂しさを感じるだけで、それはもう贅沢なものだから。


 母と前世のことを思い浮かべて話を聴く。

 そんな中、「お父さんだ!」という声で私は声の向かう方へと意識を向けた。

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