※まとめ(+おまけ)
小話あります。
【クレディア】
主人公。愛称はクレア。15歳。
種族は半魔であるため、瞳と髪は紫色。
人国では魔法で薄鈍色に変えている。
村人に変装する際には栗毛色にして、主にレナが楽しんでいた。
料理下手は何年経っても健在らしく、今回の章で作られた後始末はロイがしたらしい。味は激苦だったようだ。
【リューク】
龍。クレディアと契約を結んでいる。植物魔法を扱う。
マイペースでありお昼寝好き。
精神年齢は龍の成長具合が人族と大きな差があるのか、まだまだ幼い。つまり昔と全然変化なし。
【ハルノート 】
エルフ。精霊使いかつ弓使い。
サラマンダーと下位の炎の精霊と契約している。
里に籠っている間に、ある程度の空間魔法を習得している。
清楚系がタイプらしい。成長したクレアの容姿が好みのドストライクだった。
【ロイ】
狼人。クレアを主と仰ぎ、従者と自称する。
長年主と会えなかったことにより、純粋な想いが大分変態的なってしまった。
【レナ】
魔族。石化の魔物を祖であり、一定時間硬直させる魔眼の能力を引き継ぐ。
それ故に長い前髪で、耐性のない者と目を合わせないよう隠している。
言葉を紡ぐことがかなり苦手。
【ソダリ】
魔族。オーガが祖である。
柔和な雰囲気を持つが、魔族の性質に違わず戦闘狂。
家族想いである。
【ナリダ】
魔族。ソダリの弟。
元気な性格をしている。
10歳であり、兄と幾分か年が離れている。
【セレダ】
魔族。ソダリとナリダと兄弟であり、長男。
優れた戦闘能力を持っており、前線で人族の進行を食い止めるのに重要な役割を任されていた。
頼れる兄貴分だったらしい。
【ヴォロド】
人族。銀風の傭兵団の団長。
刺激のあるものに惹かれ、自ら率先してそれを求めに行く。
最期までその生来の性質を楽しみいった。
【トピー】
ドワーフ。銀風の傭兵団の副団長。
童顔で背丈が低いことを気にしており、小人や子ども扱いされるのを嫌う。
もしそう言われたら、見た目に反して強烈な力でもって思い切り殴られる。
ヴォロドと愛し合う仲だった。
【情報屋】
小人。各地に拠点があり、神出鬼没に現れる。
情報の対価として高額な金額を払わなければ、その買ったという情報やその内容すら売られてしまう。
普段は襤褸布を被っている。個人で情報を探るときは子どもの振りをしているらしい。
【勇者】
異界から召喚された者。
聖女のヴィオナやエルフと人族の女を連れている。
クレディアを探すのに執心であるらしい。
*
私を連れ出してくれた人だった。
昏いところにいた私を日の元に照らして救ってくれた、大好きな人。
「外の世界に行ってみてえなあ」
見晴らしの良い、朝日が見える場所だった。
彼は手を伸ばし、広々とした世界の一部を掴んでみせる。
当然、ただ宙を切るだけに終わってしまうが。
「どこもかしこも輝いてて、きっと綺麗なんだろうな」
その夢は素晴らしいことだと思った。
湧き出たその考えは彼を好きな故か、夢自体が素敵な故か。
分からない。
外の世界が綺麗じゃないって知ってしまったから。
彼を死に至らす残酷な世界は、見比べることができる想いを消してしまった。
「付いてきてって言ったら、レナは来てくれるか?」
うん、とそう返事をした。
そしたら彼―――セレダは「そうか!」と満面の笑みになったのを色濃く覚えている。
それは約束だった。
確かに誓った、明るい未来。
なのにセレダは破った。
村を、弟を、私を守る為、綺麗でなかった血みどろな世界に行ってしまった。
――――置いていかないで!
そして、覚醒する。
昏かった。
セレダ達と過ごしたのが夢じゃないかって、セレダが死んだのが夢ならいいのにって、相反した感情がぶつかる。
どちらもそうだったら良かったのに。
「―――レナ?」
「…………クレア、」
紫紺の髪は闇に溶け込むようにあった。
一人を感じたくなくて、彼女を手繰り寄せる。
「怖い夢を見たの?」
「…………違う。幸せな、夢」
とても愛おしい思い出だ。
ぎゅうぎゅうに抱き締めて、歔欷の声を押し殺す。
でも無理だ。耐えきれない。
幸せな時間から転落し、いきなり現実に来てしまった。なんて酷い夢だろう。
「…………ッ」
「レナ、泣かないで」
クレアは長い前髪を横に流し、涙を掬い取る。
膨大な魔力を持つことから、魔眼に影響されない数少ない人だった。
私は一族の中で魔力は多い方だ。他の魔族の保有量よりも上であった。
だから魔眼に抵抗できぬ者が硬直しまわないで済むよう、昔は人の輪から外れていた。
そんな私を、最初にセレダが見つけ出したのだ。
また涙が零れる。
「こんなに泣いたら涙で溺れてしまうよ?」
「…………いい」
それでもいい。
いないのを直視するのは辛いのだ。
溺れて死んでしまえば、どれほど楽なのだろうか。
「…………嘘」
でもクレアが悲しんでしまうから、冗談に変える。
一年程前にメリンダという人族と同伴し、村にやって来た少女であった。
セレダが欠けた位置に収まるように、仲良くなった友人。
どうしても彼と重なって見えていた。
時々儚い雰囲気をもって何か考え事をしており、失ってしまいそうなのだ。
だから、セレダを思い浮かべてしまう。
嘘の言葉に、クレアは何も言えないでいた。
彼女は知らない。
もしかしたら人伝で聞いているかもしれないが、セレダの話には踏み込めないだろう。
それをするには一年は短い。
だからクレアは打ち明けたのだ。
己の身の上話を。
自分のせいで大切な者が死んでしまった、似たような境遇の話を。
「長くなるかもしれないけど、聞いてくれる?」
そうして彼女から、そして私からも話し、互いを知った。
儚さを、悲しみを互いに触れ合った。
それが始まりであった。
黒く燃える炎を呼び起こし、ソダリを復讐へと続いていく。
人道に外れる行いかもしれない。
けれどそれは大切な者の死を受け入れるのに必要な、少なくともソダリには重要なことだった。
だから手伝うと、人国に訪れたのだ。
そして、私は見た。
感情がごちゃ混ぜになった涙を一筋流した。
「…………綺麗」
見たことがない景色。
新鮮で、色鮮やかで、匂いでさえもそうだと伝えてくる。
綺麗な世界があった。
綺麗な世界もあった。
「一緒に、見たかった」
誓ったあのときと同じように、セレダと未来を語り合って。
叶わぬ夢を希求はしなかった。
代わりに今共にいる彼の弟とクレアを失いさせはしないと、私はその人国の世界の前で決意する。
「…………守る」
例え相手に大切な者がいたとしても。
自らの決めたことを貫き通すには、犠牲が必要だったから。
その為の代償に己を差し出してでも。
だから呟いた。
「来るなら、私」
安らかな眠りについているトピーに小さく、届かないと分かっていても伝えた。
もし仇を打ちに来るならば、私が迎え打つ。
今度は私が、復讐の炎がなくなったセレダに代わって相手をする。
私は守るのだから。
もう誰も失わせたりしない。




