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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
復讐ののち

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190/333

※まとめ(+おまけ)

小話あります。

【クレディア】

 主人公。愛称はクレア。15歳。

 種族は半魔であるため、瞳と髪は紫色。

 人国では魔法で薄鈍色に変えている。

 村人に変装する際には栗毛色にして、主にレナが楽しんでいた。

 料理下手は何年経っても健在らしく、今回の章で作られた後始末はロイがしたらしい。味は激苦だったようだ。


【リューク】

 龍。クレディアと契約を結んでいる。植物魔法を扱う。

 マイペースでありお昼寝好き。

 精神年齢は龍の成長具合が人族と大きな差があるのか、まだまだ幼い。つまり昔と全然変化なし。


【ハルノート 】

 エルフ。精霊使いかつ弓使い。

 サラマンダーと下位の炎の精霊と契約している。

 里に籠っている間に、ある程度の空間魔法を習得している。

 清楚系がタイプらしい。成長したクレアの容姿が好みのドストライクだった。


【ロイ】

 狼人。クレアを主と仰ぎ、従者と自称する。

 長年主と会えなかったことにより、純粋な想いが大分変態的なってしまった。


【レナ】

 魔族。石化の魔物を祖であり、一定時間硬直させる魔眼の能力を引き継ぐ。

 それ故に長い前髪で、耐性のない者と目を合わせないよう隠している。

 言葉を紡ぐことがかなり苦手。


【ソダリ】

 魔族。オーガが祖である。

 柔和な雰囲気を持つが、魔族の性質に違わず戦闘狂。

 家族想いである。


【ナリダ】

 魔族。ソダリの弟。

 元気な性格をしている。

 10歳であり、兄と幾分か年が離れている。


【セレダ】

 魔族。ソダリとナリダと兄弟であり、長男。

 優れた戦闘能力を持っており、前線で人族の進行を食い止めるのに重要な役割を任されていた。

 頼れる兄貴分だったらしい。



【ヴォロド】

 人族。銀風の傭兵団の団長。

 刺激のあるものに惹かれ、自ら率先してそれを求めに行く。

 最期までその生来の性質を楽しみいった。


【トピー】

 ドワーフ。銀風の傭兵団の副団長。

 童顔で背丈が低いことを気にしており、小人や子ども扱いされるのを嫌う。

 もしそう言われたら、見た目に反して強烈な力でもって思い切り殴られる。

 ヴォロドと愛し合う仲だった。


【情報屋】

 小人。各地に拠点があり、神出鬼没に現れる。

 情報の対価として高額な金額を払わなければ、その買ったという情報やその内容すら売られてしまう。

 普段は襤褸布を被っている。個人で情報を探るときは子どもの振りをしているらしい。


【勇者】

 異界から召喚された者。

 聖女のヴィオナやエルフと人族の女を連れている。

 クレディアを探すのに執心であるらしい。


 *






 私を連れ出してくれた人だった。

 昏いところにいた私を日の元に照らして救ってくれた、大好きな人。


「外の世界に行ってみてえなあ」


 見晴らしの良い、朝日が見える場所だった。

 彼は手を伸ばし、広々とした世界の一部を掴んでみせる。

 当然、ただ宙を切るだけに終わってしまうが。


「どこもかしこも輝いてて、きっと綺麗なんだろうな」


 その夢は素晴らしいことだと思った。

 湧き出たその考えは彼を好きな故か、夢自体が素敵な故か。


 分からない。

 外の世界が綺麗じゃないって知ってしまったから。

 彼を死に至らす残酷な世界は、見比べることができる想いを消してしまった。


「付いてきてって言ったら、レナは来てくれるか?」


 うん、とそう返事をした。

 そしたら彼―――セレダは「そうか!」と満面の笑みになったのを色濃く覚えている。


 それは約束だった。

 確かに誓った、明るい未来。


 なのにセレダは破った。

 村を、弟を、私を守る為、綺麗でなかった血みどろな世界に行ってしまった。


 ――――置いていかないで!





 そして、覚醒する。


 昏かった。

 セレダ達と過ごしたのが夢じゃないかって、セレダが死んだのが夢ならいいのにって、相反した感情がぶつかる。

 どちらもそうだったら良かったのに。


「―――レナ?」

「…………クレア、」


 紫紺の髪は闇に溶け込むようにあった。

 一人を感じたくなくて、彼女を手繰り寄せる。


「怖い夢を見たの?」

「…………違う。幸せな、夢」


 とても愛おしい思い出だ。

 ぎゅうぎゅうに抱き締めて、歔欷の声を押し殺す。

 でも無理だ。耐えきれない。

 幸せな時間から転落し、いきなり現実に来てしまった。なんて酷い夢だろう。


「…………ッ」

「レナ、泣かないで」


 クレアは長い前髪を横に流し、涙を掬い取る。

 膨大な魔力を持つことから、魔眼に影響されない数少ない人だった。

 私は一族の中で魔力は多い方だ。他の魔族の保有量よりも上であった。

 だから魔眼に抵抗できぬ者が硬直しまわないで済むよう、昔は人の輪から外れていた。

 そんな私を、最初にセレダが見つけ出したのだ。

 また涙が零れる。


「こんなに泣いたら涙で溺れてしまうよ?」

「…………いい」


 それでもいい。

 いないのを直視するのは辛いのだ。

 溺れて死んでしまえば、どれほど楽なのだろうか。


「…………嘘」


 でもクレアが悲しんでしまうから、冗談に変える。

 一年程前にメリンダという人族と同伴し、村にやって来た少女であった。

 セレダが欠けた位置に収まるように、仲良くなった友人。

 どうしても彼と重なって見えていた。

 時々儚い雰囲気をもって何か考え事をしており、失ってしまいそうなのだ。

 だから、セレダを思い浮かべてしまう。


 嘘の言葉に、クレアは何も言えないでいた。

 彼女は知らない。

 もしかしたら人伝で聞いているかもしれないが、セレダの話には踏み込めないだろう。

 それをするには一年は短い。


 だからクレアは打ち明けたのだ。

 己の身の上話を。

 自分のせいで大切な者が死んでしまった、似たような境遇の話を。


「長くなるかもしれないけど、聞いてくれる?」


 そうして彼女から、そして私からも話し、互いを知った。

 儚さを、悲しみを互いに触れ合った。


 それが始まりであった。

 黒く燃える炎を呼び起こし、ソダリを復讐へと続いていく。


 人道に外れる行いかもしれない。

 けれどそれは大切な者の死を受け入れるのに必要な、少なくともソダリには重要なことだった。

 だから手伝うと、人国に訪れたのだ。


 そして、私は見た。

 感情がごちゃ混ぜになった涙を一筋流した。


「…………綺麗」


 見たことがない景色。

 新鮮で、色鮮やかで、匂いでさえもそうだと伝えてくる。


 綺麗な世界があった。

 綺麗な世界もあった。


「一緒に、見たかった」


 誓ったあのときと同じように、セレダと未来を語り合って。


 叶わぬ夢を希求はしなかった。

 代わりに今共にいる彼の弟とクレアを失いさせはしないと、私はその人国の世界の前で決意する。


「…………守る」


 例え相手に大切な者がいたとしても。

 自らの決めたことを貫き通すには、犠牲が必要だったから。

 その為の代償に己を差し出してでも。

 だから呟いた。


「来るなら、私」


 安らかな眠りについているトピーに小さく、届かないと分かっていても伝えた。

 もし仇を打ちに来るならば、私が迎え打つ。

 今度は私が、復讐の炎がなくなったセレダに代わって相手をする。


 私は守るのだから。

 もう誰も失わせたりしない。

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