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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
復讐ののち

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ソダリの復讐 前編

後半ソダリ視点です。

 銀風の傭兵団は対峙するソダリと団長のヴォロドに注視していた。

 姿諸々視認できない状態にある私達には感づいてはいない。

 私は魔法を発動させた。


「ッ逃げなさい!」


 女の叫びは手遅れであった。

 傭兵達を中心にし、地面から円を描いて黒が這い出る。

 そのまま黒は風と渦巻きながらも半円球にして檻となり、傭兵を閉じ込めた。


 戸惑いと怒声がくぐもって耳にまで届く。

 そして魔法の維持の為に供給している魔力の量が増えた。

 おそらく中で抵抗しているのだろう。

 だが、闇と風の二属性の魔法により、檻を壊そうとすれば風の反撃がされる。

 暫くすれば、消費する魔力量は元のものにまで減少した。


「……ふう」

「平気か?」

「うん。取り敢えず、落ち着いたみたい」


 心理的には逆であろうが、破壊行動はなくなった。

 目的が果たされるまでこのままでいて欲しいが。


「ガウー」

「お帰り。姿見られなかった?」

「ガゥ!」

「そっか。なら大丈夫だね」


 呼吸の穴だけ除き、頭から足まで植物でぐるぐる巻きにされ、人間かどうかも疑わしい状態の者が二人いた。

 それを歩く植物が天へと上げ、蠕動して踊るようにしながら私達のいる場所に連れてきている。


「…………」


 レナは開口し、何かを言おうとして諦めた。

 確かに言葉では言い表せれない、なんともシュールな光景である。


 私はその二人を黒の檻の天井を一時開けると、歩く植物は投げ入れた。とても雑だ。


「ガウーウ」

「……うん。ありがとうね、リューク」

「ゥ!」


 成し遂げた小龍は誉められて満足そうであった。

 歩く植物は自立型であり、リュークの持ってきてという指示を出したのみだ。

 なぜあのようなへんてこな植物か質問しても、望む返答はないだろう。

 戦闘用の自立型植物はそんな要素は一切なかったのだが。



 そのような私の思考だが、戦闘の始まった音により打ち切った。

 ヴォドロは踏み込みにより陥没ができる力を持って槍を突き出し、轟音が発せられたのだ。

 命中すれば穿孔ができるそれを、ソダリは翻し回避する。


 ナリダはそれを一覧し、彼等の方へと向かおうとした。

 接近し拳を放つソダリだが、じわりと滲む鮮血がどちらが優勢なのかは先程の一瞬ではっきりしている。

 レナも助勢に加わろうとし、そして二人は立ち塞がった私に戸惑った。


「クレア?」

「ごめんね。通す訳にはいけないの」

「…………邪魔、するの?」


 殺気まではいかないものの、レナから鋭い視線が向けられた。

 長い前髪から覗くのは、ルビーのような瞳である。


「うん。だから、ソダリのところに行くなら……」


 杖を構え、戦闘する意思を見せる。

 そうして私はソダリの頼み事を遂行しようとした。


 *



 兄の仇、ヴォドロは強かった。

 年の功があったが、それでも三兄弟の中では飛び抜けて優れていた兄を殺した実力は十分にある。


「―――ふッ!」


 間合に飛び込み殴打するが、槍の柄でもって防御される。

 怯まず二打、三打と打ち込むものの、全てが去なされてしまう。

 そうして詰めた距離をとられて槍の間合となると、ヴォドロは己の率いるの団の呼称となる銀風の捌きを見せた。


「おらッ!」

「ッ!」


 銀である刃の残像を残し、風のような速さで斬撃が成される。

 鮮血が舞い、ズキズキとした疼痛が襲う。

 だが、痛みに止まっては更なる攻撃を貰うことになる。

 後退しながらも攻守一転の機会を狙い、大きく放たれた槍の柄を殴りつけることによって隙を得た。

 だがそれは意図して作られたもので、思いっきり蹴りをもらうことになる。


「魔族ってのはどんな力してやがるんだ」

「それはこっちの台詞だ」


 魔法で脚を強化していたのか、尋常ではない痛みである。

 骨が砕かれたかもしれない威力だ。

 対してヴォドロは柄からの手に衝撃をもらっただけであり、ピンピンとした様子である。


「お仲間に助けてもらわなくてもいいのか?」

「いらない。これは僕の復讐だ」


 ヴォドロはこれが一対一での戦いと知ると、最初は失っていた余裕を取り戻していた。


「復讐、か。それも兄ので、オーガの魔族」

「心当たりはあるのか?」

「当たり前だ! 血で血を洗うような死闘だったからなあ」


 過去に想いを馳せ、熱っぽく語る。

 兄を殺した奴がそんな反応をする様は、とてつもなく不愉快だった。

 オーガを祖に持つことによる怪力で殴り飛ばそうとする。

 ヴォドロはそれをひらりと躱した。


「まだまだ粗っぽいところはあるが、お前は兄に似た戦いしてるな」

「黙れ!」

「おいおい、感情的だなあ」


 強かった兄のようになりたくて幼い子どもの頃から技を師事し、真似していた。


 拳に憎悪を込める。

 ふざけているように避け続けるヴォドロに、今すぐに殺してやりたいのにその実力がない自分に苛立ちが募っていた。


「そんなんじゃ俺からこの角、取り戻せねえぞ?」

「―――ァア!」


 兄の遺品がペンダントとされてるのが許しがたかった。

 咆哮し、一段と速く相手の懐へと飛び込む。ようやく深い一撃が入った。


「ハッ」


 ヴォドロは笑う。

 口から血を吐き出しているが、致命傷ではない。

 逆の僕も実力に差があるにも関わらず、死に至る傷はまだない。

 復讐を果たす戦いはまだ続く。

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