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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
復讐ののち

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情報屋

 話の落着はこれまでとすることは変わらずになった。

 詫びるような表情をするソダリに、「気にすることはないよ」と告げながら扉を押す。

 目的地の店には到着していた。


 廃屋のような形をする店は入ってみれば、暗くアンティークな雰囲気であった。

 教えられた情報屋の仲介者は各町に複数いるらしい。

 その一人がおり、今回訪れた場所は酒屋だ。


 まばらに客がおり、とりあえずはカウンターに座ることになった。

 どう尋ねればいいのだろうと頭を悩ませていると、バーテンダーに「甘いのは好き?」と問いかけられる。


「はい」

「僕は辛いので」


 暫くすると、透明な桃色と紺青色の液体か注がれたグラスが置かれる。

 勿論、酒である。


「……あの、仲介者が貴方と聞いたのですが」

「あら、提供するのは酒ではなかったのね」


 酒は弱くはないものの、この世界で言う未成年のときに記憶が朧気になるほど酔っぱらいになったせいで苦手意識がある。

 それでも私はグラスに口付けた。

 芳醇な甘さが口の中に広がり、そして直ぐ様魔法で解毒する。

 酒と認識できていれば、恐れるに足りないものである。


 ソダリも飲んだのを見届けると嬌笑していた。

 そして流した視線の先を見ると頭から襤褸を被る者がいる。

 へらりとした与太者の風貌だった。

 矮躯であるがこれで壮年というので種族は小人だろう。


「やあやあ、どんな情報をお求めかな」


 私の横の椅子に飛び乗り、遊ぶように半回転する。

 男の声色で乗り掛かりそうな動勢なので思わず後ろに仰け反ると、ソダリがひょいっと私を持ち上げて避難させる。


「この人が?」

「ええ。変わった人なのよ」


 肩をすくませるので、彼女も手に負えていないのだろう。

 宙に浮くのを下ろしてもらい、顔を眺める。

 確かこの人は私達の後に入店した客だった。


「もしかして、尾行してましたか?」

「あはは、もうバレてしまったかい。いやあ、面白そうな逃走劇をしていたから興味を引かれ、ついしてしまったんだよ」


 飄々とする男であった。

 新たに置かれた酒をグビリと飲み干し、「いくら出せる?」とにへらと笑った。


 相場は知らないが、こういった相手は出し惜しみしない方がいい。

 私は金の入った袋ごと渡すと、覗きんこんで金額を確認していた。


「じゃあ、ヴォロドの居場所とそれに関連したことで」


 淀みなく、情報屋は近隣のにいたヴィロドのことを話す。

 そして銀風の傭兵団の創立話―――銀風は彼の得物である槍捌きから来ているらしい―――やどういった戦法であるかなど、こちらの目的を知っているのではないかと疑うものを提供してくれた。


「他に聞きたいことはあるかい?」

「いえ、十分です」


 掌でお金を招くようにするので断る。

 最初に払ったもので所持金は激変している。


「ええっ、まだまだ聞きたいようなものは持ってるのに? 色々と、だよ?」

「……」

「クレア、毟り取られるよ。ナリダ達が待っているし、行こう」

「……うん」

「あーあ、本当にいいの?」


 後ろ髪を引かれるが、私は想いは立ちきる。

 そして情報屋に釘を刺した。


「次は気付くからね」


 隠密が得意なようだが、二度目は尾行などさせない。

 身に収める一抹の魔力の質は覚えた。


 店の扉を閉める。

 その際、隙間から見えた情報屋は頬をつり上げていた。


 *



 カウンターの上でじゃらじゃらと音を立てる袋の中身を取り出した。


「ひーふーみーよーいーむー」

「ちょっと、目の前で勘定しないでくれる?」

「えー?」

「文句言わない」

「でもさあ、必要なことなんだよ?」


 文句を言われつつも数え続ける。

 相場よりは上みたいだ。一般的な、とはつくが。


「残念だなあ」


 言葉と表情は裏腹になりながらも、何枚かは酒代で置いて再び袋にしまっておく。

 以前からの仕事の付き合いのある彼女には「それじゃあまた」と店を後にし、道を予測して行く。


 かなりのリスクだ。

 速く脈動する心臓は久しぶりに訪れた緊張感か狂喜の為か。


「ひひっ」


 比重としては後者だろう。

 ニヤニヤと口元が緩むのはお気に入りの襤褸から現れてしまっていた。

 通りすがりの者が気味悪がり、一定の距離ができてしまう。

 これはいけない。死んでしまうかもしれないのに。

 口を布で隠す。表通りまで来たので、光が身を明るく照らしてくる。


「見いつけた」


 宿屋の前でエルフと狼人との邂逅のようだ。

 別行動していた少年少女もいる。


 今度こそ共にいるのを一瞬で認識し、視線をそらす。

 相手は狼狽え、かなりの集団で人目は多くいるので自分のことはバレなかったようだ。

 魔法使いの中には魔力で人を判別する者がいるので、目撃できたところで別の場所に移動し、それを取り出す。

 通信の魔道具だ。


「俺の情報はさあ、とっても高いんだ」


 だからこうして元をとる。

 同国で常駐する者へと繋がり、告げた。


「御宅の尋ね人、見つかったよ」

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