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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
復讐ののち

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177/333

頼まれ事

 クレディアが去った場所で、ロイはメソメソと踞っていた。


「うぅ、主に拒否された……」

「おい、一度で泣いてんじゃねえよ」

「……そういえば、ハルノート二度目ですか」


 クレディアを取り押さえてやったというのにそれが琴線に触れたようだった。

 嘲る表情をし、スクリと身を起こす。

 もう立ち直ったようだ。


「諦めたんじゃねえのか?」

「してません。あなたの方こそ」

「するか。……少なくとも理由を聞くまでな」


 それに勝手にしたことへの文句をまず言っていない。

 クレディアは愛称で呼ばせる仲間を新たに作っていた。

 その腹立たしさは元からあったのと加え、増幅していた。


 *



「やっぱり専門家を尋ねた方がいいかもしれない」


 暴漢からは私達が探しているヴォロドという傭兵について、何も情報は得られなかった。

 勿論、銀風の傭兵団は堅実な実力派揃いとしては有名であるのでその団長の存在は認知していた。

 だが、肝心の居場所は知らないという。


「私達だけで情報を手にいれるには限界だと思う」

「専門家っていうと、情報屋か?」

「…………いるの?」

「聞けばいいんじゃないかな。ちょうど適切な男がいる」


 暴漢は私が魔力をあてて威圧してより脅したので萎縮していた。

 追いかけ回される前、団員だと法螺を吹いて威張った態度をとっていた面影はない。


 私達の視線が集まると、「ひっ」と小さく悲鳴をもらしていた。

 そして今度は求める情報を吐いてくれる。



 どうやら情報屋は謎に包まれた者であり、そのせいか決まった場所にはいないらしい。

 何か情報を売ってほしいということなら、相手から接触して来るのが大半だとか。

 暫く聞き込みを続ければ、勝手にふらりと来るだろうとのことだが、仲介人に言付けをすれば速くに会えるらしい。

 ただしその分足元を見られ、ぼったくられることになるらしいが。


「記憶は残したままでいいのか?」


 暴漢は捕縛から解放すると、私達から逃走していった。

 そのことにナリダは不満はないようだが、私が言った穏便にする為に魔法をかけなくていいのか純粋に疑問なようだ。


「うん。正体がバレた訳じゃないからね」


 隠すことや影を操る方面でしか役に立っていなかった闇魔法であるが、魔国に滞在している間に使用できる種類は富んでいた。

 魔族だけ適性のある闇魔法なので、魔国でようやくその魔道書や魔属性のある者にありつけていたのだ。


「あの人にかけるだけの必要性はないよ」


 今回ソダリが指摘した魔法の内容は記憶を消去するものだ。

 記憶を弄ることは相当な危険がある。

 それは暴漢が負うところで、暴行された点では被害者である男がされるようなことではない。


 それに、人の記憶というものは好き勝手に変えるようなものではないだろう。

 私はそんな身勝手なことを必要に駆られる時以外にしたくはなかった。




「二手に分かれよう」


 仲介人まで行く者、今晩滞在する宿屋を探す者にへとソダリは提案した。


「じゃあ俺はソダリ兄ちゃんと!」

「いや、僕はクレアと仲介人の方に行かせてもらうよ」

「ええ!」

「レナ、ナリダのこと頼めるかい?」

「……ん」

「リュークはどうする?」

「ガウーゥ!」

「二人の方に行ってくれる? じゃあお願いしようかな」

「ガウ!」


 もしナリダとレナに何かあれば、リューク経由で危機を知らせれる。

 私からも反対でできるので、こうしてメンバーは決定した。



「私に何か話でもあったの?」


 裏通りに構える店にいるらしいので、そこまで歩いている途中のことだった。


「そうだね。効率の面もあるけど、君の本音が知りたくて」


 視線が合ったのでつい逸らしてしまった。

 すると名前を呼ばれたので、渋々顔を見上げる。

 ソダリは背が高い。私達の中で一番年上である。


「ハルノートとロイのことは気にしないで。もう別れは済んでる」

「相手の方は納得してなかったみたいだよ?」

「……一方的にしたからね」

「僕達に遠慮しないでいいよ」

「してないよ。……半魔は普通の人と一緒にいられない」


 その分ソダリ達は魔族だ。

 彼らに危険が及ぶこともあるが、逆も然りだ。

 私の方は今だシャラード神教の者に探されているので、その釣り合いはとれていないかもしれないが。


「……君はもう十分に手伝ってくれた。道案内と面倒を見てくれたんだ。僕らのすることに付き合わず、やりたいことをしていいんだよ」

「やりたいことは今してるよ。それにナリダとレナのことがある。私がいなくなったら誰が代わりにするの?」


 私は二人には秘密で頼まれ事をされていた。


「それは……うまいことやるよ」

「昔からの付き合いなんでしょう? 察せられるよ」

「でもクレアは彼らの元に戻りたいだろう?」

「……いいの。それに、これは復讐した私に課せられたものだから」


 罰で誰かにそうしろと言われた訳ではない。

 自分の意思だ。

 だが、ソダリ達と出会い手伝って欲しいと持ちかけられたことは、運命のようなものを感じていた。

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