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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
復讐ののち

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176/333

過去の仲間と現在の仲間

 なぜ走っているのかって、それは暴漢に追いかけられているからで。

 なぜ逃げたのかって、それは今更顔向けできないからで。

 なぜ追いかけられる相手が増えたのかって、それは相手が偶然ではなく私に会いに来たから。


 感情によりあふれそうになる涙は、奥歯を噛み締めて堪えた。

 彼らから逃げる為前を行く者達とは異なる道で逃走する。

 だが、馴染みのない道だ。

 私は追い付かれ、腕を掴まれる。

 そして壁に体を押さえられて、囚われた。


 互いの呼吸は荒かった。

 ハルノートは熱い息が届く程の距離で私を見下ろし、腕に力を込めて完全に遁走できぬようにする。


「なんで逃げたんだ」

「……会いたくなかったから」

「なら得意の魔法を使えばよかっただろ」

「町中では危険だからね」

「本当に会いたくないなら、なりふり構わないだろうが」

「……」

「嘘つくなよ」

「……」

「クレディア」

「私は、」


 会いたかったに決まっている。

 仲間だったのだから。


 ゆっくりと顔を上げると、間近にハルノートはいた。

 苦しんでいるかのようなで、そんな表情をしているとは思っていなかった私はかける言葉を失った。


 そんか彼に思わず手を伸ばそうとするが、動かなかった。

 捉えられていることを忘れていた私を逃げるつもりかと取り違えたのか、より力を込めて距離をつめられる。

 そして、吹っ飛んでいった。


「無礼はそこまでです」


 ハルノートをぶん投げたロイは、唖然とする私を見て瞳を輝かせた。


「主、私です! ロイです! 覚えてますか……?」

「う、うん。覚えてるけど……え?」

「っ主!」


 ロイは背が伸び、逞しく成長していた。

 狼人の身体能力を生かして一瞬で間合いをなくし、歓喜極まって抱きつかれる。

 力はとてつもなく強かった。


「この野郎が」

「痛っ」

「いきなり何しやがる」

「それはこちらのセリフです」


 ハルノートがロイを引き剥がし、ホッと息をつく。

 あまりの力は潰れてしまうかと思わせるものだった。


 二人で仲良く言い争う間に、私はそろりとその場を去ろうとする。

 だがその前に二人は私の方を向いて阻止した。


「主、昔みたいに私を同行させてください。主の側にいさせてください」


 ハルノートは何も言わなかったが、同様の考えのようだ。

 勝手に皆の元から去った私にそのように想ってくれることに、私は嬉しかった。

 だが、


「……駄目だよ」

「ッ主!」

「私はもう十分に仲間がいる」


 新しくできた魔族である友人。


「クレア」


 見つけに来てくれた友人に名を呼ばれ、ハルノートとロイに背を向ける。

 二人の引き留める言葉は、またもや私を振り向かせるにならなかった。


 *



「…………いいの?」

「うん」


 こうするのが一番いいのだ。

 私はリュークを腕でぎゅうぎゅうと抱き、顔を埋める。


「全然よくは見えないけどなあ」

「いいの」

「本当に?」

「……うん」


 レナは長い前髪で隠れる目を覗かせながら、ナリダは頭の上で腕を組ながら、ソダリは高い身長を前のめりにして視線を合わせながら、それぞれの友人に気付かわれる。

 この三人は私が母に連れられた魔国で滞在した村の出身だった。

 レナは大人しめな女の子で、兄弟であるソダリとナリダは上である前者が落ち着いており、後者は陽気な性格であった。


「それよりこの人はどうしたの?」


 暴漢がリュークの魔法によってぐるぐる巻きにされていた。

 追いかけ回されたが、私がハルノートとロイと再会している間に捕らえたという。


「このおっさんが騒ぎ立てるから、静かにさせたぞ」

「私、なるべく穏便に過ごそうって言ったよね……?」

「…………したよ?」

「ちゃんと目立たない場所でやったんだ」


 暴漢は顔を中心に殴られ、変形していた。

 確かにこれで口は聞けなくなり、静かにはなっただろう。


 彼らは魔族であるので特徴を闇魔法で隠蔽や変装はしているが、念を入れて目立つ行為は避けたかった。

 だが、これはどうなのだろう。

 人族とは感性が違う為、何人かは目撃しているはずだ。

 目立つイコール何百人も観客がいる闘技場を連想する魔族だ。

 うんうんと悩むが、今更どうしようもならない。


 後で人族の価値観を詳しく教えることとし、暴漢に集中することにする。

 まずは痣だらけで鼻が曲がっていたりする顔全体を魔法で癒す。

 話せるようにまで傷を治したら、短剣を突き立てて脅す。


「今度は真面目に答えてくださいね」


 追いかけ回される前、私達はこの男に人を尋ねていた。

 それを適当な嘘で翻弄し、それをナリダが魔国方式である喧嘩の誘い方と勘違いし手を出して現在に至る。

 こう思い返すと、私達も悪気はないものの暴行を働いてしまった。

 そうなることを想定して私は彼らの人国に行くのに同伴しているのだが、これは何度目かの出来事だろうか。

 苦労は織り込み済みであるが、溜め息が出そうになる。

 それを飲みほしたところで、ソダリが代表して言葉を発した。


「銀風の傭兵団の団長、ヴォロドの居場所を知ってるかい?」

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