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強さ

 あれから何年か過ぎた。

 私はその間、力を求めた。

 それは単純に自分や誰かを守るれる力だったり、知識だったりした。



 まずは魔法。

 魔法には様々な属性があった。

 一般的なものだと、火、水、風、土の四つの属性。

 これらは使い手が多い。

 他にも氷や雷など、使い手は少ない希少な属性もある。


 魔法が現代よりも優れていた古代には、時や重力を扱える魔法さえあったらしい。

 古代の技術がほぼ失われたが、残っているのは空間魔法の一部ぐらい。

 しかし空間を扱うことなので危険がある。

 だから認められた、才能があるものにしかそれは教えられていない。

 つまり秘伝なので、大抵は弟子や同じ血を受け継ぐものに、そして適正がある者にしか使い手はいないらしい。


 魔法の属性は全てが使えることはなく、ひとによって適性が異なる。

 私の場合、風、氷、闇の三つだった。

 無属性もあるにはあるが、これは誰にでも適性はあるらしい。

 まあ、気質によっては使えないということもあるらしいが。

 無属性は除く、適性の種類はたいていは一人一つらしいので、これは凄いことだった。

 私には魔力が多いことといい、魔法の才能があるようだった。

 このことから私は魔法を極めることにし、戦うすべとした。


 先程述べたことは母からもらった、念願の魔法について書かれた本からの知識だ。

 他にも火、水、風、土のそれぞれ一つずつ簡単な基礎となる魔法の詠唱があった。

 私には風の適性があるので、安全のために庭に出て風の詠唱を唱えてみた。


「風よ、私は求める。大地を駆け、息吹となれ」


 一つ一つ、丁寧に魔力をねり、構築する。

 詠唱とは魔法を放つための補助みたいなものだと、魔力の流れを見ながら理解出来た。


 風が吹く。

 荒々しく、吹き飛ばされそうになる強い風。

 私は魔法の偉大さ、危険さを思い知らされる。

 これはただ風を起こすだけのはずだ。

 だからこの結果になったのは、消費した魔力が多すぎたからだと思う。


「なにごと!?」


 母が剣をもって臨戦態勢をとりながら家から出てきた。

 どんな敵でも倒せそうな雰囲気だ。

 けれど私の姿を見るとその雰囲気は変わり、呆れるような安心したようなものになる。


 私は母にしこたま怒られることとなった。

 母は私に魔法を使わせるために本をあげたようではなかったらしい。

 知識としてだけで、実際に魔法を使うことは母の監督の元、やるらしかった。


 その後は母から魔力操作するための魔道具をもらった。

 本を読み終わったらあげる予定だったらしい。

 膨大な魔力を暴走されないようにするための訓練で、毎日するのがいいらしい。


ただ「おかあさんもやっているの?」と聞いてみると、目をふいっとそらされた。

 あ、これはやってないやつだと思ったけど、母が言うには私は剣士だから必要がないということらしい。

 それに私と違って魔力量は中の下らしく、やっていない理由としてはぎりぎり納得出来た。

 人によって向き不向きがあるので、追求するのはやめておいてあげた。

 でも私はこつこつとした努力はわりと得意なので、誤魔化す母と違いやることを決めた。



 そこからはひたすら魔力操作の練習の日々。

 最初のほうはなかなか苦労した。

 大雑把になら出来ると思うが、これは繊細な操作が必要としたからだ。

 内容は自分の中にある、体の中心部にある魔力を全身に送ることだ。

 魔道具に触れながら、体内に巡らせる。

 失敗しそうになると、魔道具がパチリと静電気のような地味な痛さが来るので、何回も失敗すると赤く腫れ上がった。


 それでも私は上手くなるまで、一日の中でも何回もチャレンジした。

 母に休憩したらどうだと言われたが、トラウマになっている悪夢が見せる自身の弱さを早く克服したくて、休憩は最低限とした。

 そのおかげか、毎日やり続けるうちに魔力操作が簡単に出来るようになっていった。


 ある程度上達して母に認められたら、魔法を本格的に母から教えてもらった。

 といっても風魔法だけだ。

 魔法の属性の適性は例外はあるものの遺伝されるということで、つまり私は母から風を受け継いだのだろう。

 なら氷と闇はどうなのかと問いたら、曖昧に微笑まれた。

 なんとなく、聞いては駄目だと感じた。

 いつか話してくれるのを待つしかないのだろうが、多分私の父が氷と闇を持っていたのだろう。


 私のお父さんはどんな人だろうか。

 母とリューとの生活だったが、もしかしたら死んでしまっている可能性もある。

 別れたという線もあるがどうなのだろうか。

 でもここであれこれ考えてもしかたはないので、来るべき時の際に聞けばいい、と自分を無理やり納得させた。



 風魔法はあっと言う間に出来た。

 毎日の魔力操作の練習のおかげだろう。

 風の基本となる魔法を再びやったときは格段に速く、魔力量も適切で穏やかな風が吹いたのでとても嬉しかった。


 風の次は無属性だ。

 母が私を見かねてか、眠りの魔法をかけたことで興味をもったのだ。

 それに氷魔法を練習しようとしたが、風と違い珍しいので遠いところにある魔法が優れた国にまで商人の方に頼まないとないらしい。

 それまでの間に無属性を習得しておいた。


 そうして魔力操作の訓練から一年ぐらいで風、氷、無属性の中級まで出来るようになった。

 本からは上級のものはなかったのだ。

 残念だが、それ以上のものは諦めることにした。


 なら闇属性はというと、本さえなかった。

 光と闇は氷属性よりも本当に希少で、適性があるものは国や教会で優遇されるほどらしい。

 それに空間魔法と同じく秘伝なので本がない理由となる。

 闇属性は三つの中でも一番私に適性があるのに残念だった。

だが私は諦めず、詠唱は分からないものの、自己流で考えた。

成果は影を動かすことしか出来なかった。


 同時進行で高速詠唱の練習をした。

 出来たら詠唱を省略、そして無詠唱へと。


 知らない魔法を詠唱ありで出来るようにするのよりも、難易度は難しかった。

 けれど無詠唱まで至るまでの時間はたくさんあった。

 何度も何度も失敗を繰り返し、時には魔力が欠乏して気絶するぐらい練習した。

 それぐらい、弱い自分を許さなかった。


 これだけ努力したらもう十分だと思う自分がいた。

 そうして気が緩んだときに、やはり同じ内容の悪夢を見た。

 まだまだ足りない、次もまた何も出来ず今度こそ死ぬぞと言われているようだ。


 だから私はどれだけ練習しても満足出来なかった。

 そこで満足し、歩みを止めてしまったらいけないから。

 母はそんな私をずっと見守ってくれた。



 魔法の他には母から剣術や棒術を教えてもらった。

 私のスタイルは魔法を主に使っていくことだが、魔法だけでは接近されたときに何も出来ないことが多い。

 いくら無詠唱でも、魔法を構築する時間は必要なのだ。


 なので魔法の媒介となる棒術を習うこととなった。

 剣術は無理やりである。

 母は剣士だから、剣にこだわりをもっていた。

 剣は重いから嫌だ。

 それに私には才能がない。

 母はそんなことないと言うけれど、体力はないし気力もないのだ。

 やりたくなくて先程述べたことを言うと、なら短剣にしたらいいじゃない、軽いわよと言い返された。

 私に反論は認められなかった。



 私は何百回も素振りをさせられた。

 だらけると千回以上もさせられる。

 そして模擬戦をすると、地面に転がされる。


 母に剣を関わらせると、人が変わる。

 温厚な人柄が厳しくなるのだ。

 微笑みながら、あれこれとやらされる。

 怖い。もの凄く怖い。

 私は剣に関しては母に逆らえなくなった。

 なんだかやりたい棒術よりも剣術のほうがやらされている感じがするが、気のせいだと思うことにしよう。

 こうして母の熱心すぎる指導で棒術と剣術は付け焼き刃程度ぐらいにはなった。


 そんな日々の中、癒しとなるのはリューだ。

 マイペースで、日向でぼうっとしている姿は可愛らしい。

 特に剣を習った後のぼろぼろときは抱きついて、心を癒してくれる。

 リューがいるから剣術を頑張れる。

 そうでなくても母から強制的に頑張らされたとは思うが。 



 リューも私と同様、魔法が使える。

 体は龍としてはとても小さいので、その分魔法に特化している。

 リューは植物魔法が使える。

 これは珍しいを通り越して、人間には適性があるとは確認されていない。

 魔物にだけ使える魔法だ。


 これはかなり強力だ。

 よく頭から一本の可憐な花を咲かしているが、本当に強力なのだ。

 なにせ部屋中を植物だらけにしたことがある。

 思わず母と二人で顔を引きつらせた。


 リューは無邪気に遊んでいるか、無防備に眠っているかだから、普段は龍としての威厳がない。

 けれどふとしたときに見せる姿は、あっと言わせるものがある。




 ここ数年の生活は魔法や剣や本での知識などで、弱かったころの私と比べると見違えるほどとなった。 そうして私は実力がついたことで、ようやく実戦に移ることとなる。


「クレア、準備はいい?」


 私は訓練用に使っている杖と懐に忍ばせている短剣を確かめ、こくりと頷いた。


 私は今日、初めて魔物を殺す。

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