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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
二人と一匹

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母の苦悩 ※メリンダ視点

「――――てなったんだ。……メリンダ、ちゃんと聞いてる?」

「あ……ごめんなさい。なんの話だったかしら」

「ただのミーアの愚癡だから、聞かなくてもいいぞ」 

「だだの愚癡って、そんな言い方酷い! まあ、その通りなんだけどね」


 メリンダは話半分になって物思いにふけっていた事を申し訳なく思った。

 久しぶりの友人との再会なのに、ここ最近の悩みで頭がいっぱいだった。


 ここはセスティームという街の酒場。

 メリンダは街まで買い物に来ている際、偶然二人の友人と出会って酒をかわしていた。

 と言っても、メリンダは酒に弱いので友人が飲んでいるだけだが。



「悩みがあるなら聞くよ?」


 心配そうに言うのはミーア。

 数少ない女友達で、陽気で嘘をつかない。

 馬鹿正直とも言う。

 それでよく上司の愚癡を本人の前で言うものだからよく怒られるらしい。


「さっきからずっとその様子だと、こちらも気になってしょうがないしな」


 呆れたように言うのはネオサス。

 器量が良く優しい性格からか、女性によくモテる。

 ミーアも器量が良いのだが、子どもっぽい姿や性格から、付き合う対象として見られない。

 ちなみにネオサスは嫁がいる。

 ミーアはこの三人の中で一人だけ独身なので、より残念さが分かるというものだ。


 そんな二人は過去、冒険者だったころに共に戦う仲間だった。

 今は冒険者ではないが、気心が知れる仲間であり友人だ。

 メリンダは悩みとなっているクレディアについて打ち明ける。


「クレディアのことなんだけど、寝ることも最低限で魔法ばかり練習しているのよ」

「魔法の練習に打ちこむのはいいことだが、寝ないのは良くないな」

「眠りの魔法は? かけた?」

「ええ。けど何度かかけているうちに、すぐに抵抗することを覚えちゃって……。あの子、魔法に関して優秀すぎるくらいだから」


 眠りの魔法は文字通り、催眠効果がある。

 だが強制的ではなく、眠りを促すだけだ。

 簡単な魔法なので、クレディアは膨大な魔力をもってすぐに抵抗してしまった。


「私、クレアには口頭で強く出れないから、もうどうしようもなくて……」

「それって、あの事件のせい?」


 ミーアが言うあの事件とは、数ヶ月前に起こったダルガという男達が襲ってきた件だ。

 あの時、もっと速く帰っていたらという後悔に苛まわれる。

 それになぜ出かけているタイミングで、とも。


 あの男達は街で有名な者だった。

 勿論、悪い意味でだ。

 冒険者でCランクだったせいか、住人に横暴を働いたりして、理不尽な要求をしていた。

 裏でもそのようにしていたらしく、多くの人から恨みを買っていたらしい。


 こんな奴らが魔物に追われ、偶然にも私達が住む家まで来た。

 そして家を荒らしてクレディアを殺す一歩手前までしていえ、今でも強い怒りがわいてくる。


 あの事件によって、クレディアは心に深い傷を負った。

 リューも襲われたのだが、あの子ほど切羽詰まっているわけではない。



 クレディアは強くなろうとしてる。

 それは自衛が出来ることなのでいいことだ。

 だが、どこか危うい感じがする。

 それでも私は魔法の本を渡した。

 とりあえず、知識面からゆっくり魔法についてやらせようとしたのだが、まさかそこに書かれていることを一日もかからずに全て理解し、実践するとは思わなかった。


 メリンダは魔法が使えるので、本の内容をだいたいでも理解したなら、そこから魔力操作の訓練をさせようとしていた。

 だが、クレディアはメリンダが思っていた以上の資質があった。

 慌ててクレアが魔法を実践していたのを辞めさせて魔力訓練をさせたが、もう十分に魔力操作が出来ていたので必要性はないと思った。


 実際、メリンダ自身はその訓練をしていない。

 やらなくても魔法は使えるのだ。

 魔力が大きすぎるから、魔法が不発したときに暴発させないようするためだから、とクレディアには他の者よりも必要なだけだった。

 一応過信しないようにという思いで、現在も魔力操作はさせているが。


 クレディアは難なくメリンダの教えを吸収した。

 メリンダは魔法が得意というわけではない。

 剣を使う戦いをするからだ。

 けれど風属性の適性があったので、複雑ではない簡単な魔法なら戦いにも導入出来た。

 眠りの魔法だって苦労して練習した。

 だか、クレアはあっさり抵抗してみせて無属性の魔法に興味をもたせてしまったのだから、本来の目的の逆の効果になってしまった。



 こんな苦労を友人達に話す。

 酒を飲んでもいないのだが、友人達の酔っている姿に当てられたのか、色々なことを話しすぎて少々長くなった。


「うーん、凄すぎてなんにも言えないね」

「優秀な子を持つことで親が困るということもあるんだな。私も利口な娘がいるが、そんなことはなかったしな」


 友人から具体的な解決方法は出なかった。

 ネオサスなんてそこから娘自慢や嫁自慢をしだすのだから、話が変わってきている。

 だが、話したことでなんだか気分はスッキリしていた。


「まあ、見守っていたらいいんじゃないかな。子供が努力をして成長するのはいいことだから」

「そう、ね。それが親の義務ともいうのだから」


 未だ自慢しているネオサスを一人放っておき、珍しく良いこと言っているミーアに相槌を打つ。

 そうしてメリンダは友人に感謝を伝え、娘と龍が待つ家に帰った。

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