届け物
それからして、ラャナンさんの元いたパーティーに確認を取ると、彼女の言ったことと一致した。
そして地元で作られたという不思議な形をしたお守りを見せてもらい、ラャナンさんのパーティー加入が決まった。
伯爵の部下や雇われているという可能性はないわけではないだろう。
だがこれ以上疑っていたら切りがなく、相手は私達のパーティーに加わるような面倒なことをしないはずだ。
情報を探っていたオルガからも「いいんじゃないか」と返事をもらっている。
そういうことなので、ラャナンさんに私達の事情を話し、オルガの仲間と合流するまで行動をすることなど、色々納得してくれた。
「話を聞いてからだと、ハルノートが疑い深かった理由も分かるもんだね。奴隷狩りをする者を自分とこの領地に置いてたんだ。プライド高い貴族でも、私のような冒険者を雇うぐらいありそうだね」
数日が経ち、私は町でラャナンと歩いていた。
用事があって出掛けに行こうとするころに偶然彼女と出会い、付き合ってくれることになったのだ。
同じパーティー仲間となったとはいえ、まだ休暇をとっているので暇をもて余しているようだった。
「何がしたいんだろうねえ。その悪評高い伯爵様は」
「よく分からないよね。この町に来ている部下の人も森で何かしてたらしいけど、分からずじまいらしいし」
ラャナンからのハルノート達のように同じように話してくれたらいいということで、敬語なしである。
オルガは情報収集したが相手の目的は分からず、昨朝に町を出発したことを最後に得られるものはなくなったらしい。
仲間の狼人の為手荒なことができないことで、「前みたいに脅せたら楽なんだけどな」と呟く言葉が印象的だった。
「まあそれは置いとくとして、これからどこに行くんだい? 何も知らずについてきたけどさ」
「商人ギルドだよ。私のお母さんにまで、届け物をしてもらうんだ」
「へえ。何送るんだい?」
「手紙と魔道具。お金はいっぱいかかるだろうけど、頼めば私より到着するのが早いからね」
私は歩きであり金を稼ぎながら移動なので、どうしても母の元まで行くのは遅くなるだろう。
だから遠い国にまで運んでもらうことになるので大金になるが、商人に届け物をしてもらおうと考えた訳である。
「ほら、見て。ついでに作った魔道具だけど、中々良い出来映えなんだよ」
ロイ用に作った結界が込められた魔道具は作り始めた当日に完成し、プレゼントした。
いつでもどこでも身につけてくれているので、お気に入りになのだと思う。
ブレスレットの装飾にはこだわったので、頑張ったかいがあったものである。
そしてその材料の余りが出たのでせっかくだから、と他にも魔道具を作ったのだ。
「これは一対でできた魔道具でね、遠くにいる人と会話ができるものなんだよ」
私が今持っているものがその片棒で、もう一つは母に送るラッピングした箱に入っている。
魔力の関係で会話できる距離には限界があるが、これで母と会う前に連絡がとれるのである。
母に元に行く旅をしているが私が勝手にやっていることだ。
会ったときには戦争が起こった国になぜ来るのだと説教されそうだが、そうなる前にいつどこでということを決めなければならないだろう。
これはその為のものであり、会うのが待ち遠しすぎてつい出来上がったものである。
そんな想いで作ったものだから、余りの材料で出来たとは思えない魔道具に仕上がった。
どう、凄いでしょう? と年上のお姉さんに誉めてもらいたいような認められたいような気持ちで、ラャナンに見せる。
すると彼女は私の言葉を反芻し、しばしの空白をもってから口を開いた。
「……それ、他の人には見つからないようにしなよ」
「え?」
「だって、持ってたら間諜に疑われるものじゃないか。関所の役人に見つかったら、取り調べ受けるはめになるよ」
「……あ」
電話の機能をもった、高性能の魔道具ぐらいにしか考えていなかった。
実験はしていないが、私の魔力量だったら他国まで会話できるだろう。
そのつもりで作成したものだ。
冷や汗が出てきた私に「まあ、見つからなければいいんだよ」と慰られる。
そうだ。見つからなければいいだけの話である。
この魔道具は、魔族に属するものだと示す為人前では使わない闇魔法をもって、関所を通るときは厳重に隠し持っておこう。
母に送る用はかわいい動物をあしらった形であるから、置物と勘違いしてくれるはずである。
必要な魔力は全部私が持つ魔道具に込める設計なので、魔力反応がして見つかるようなものではない。
私が手にもつ魔道具をさっとしまったことで話は終わり、私がラャナンの生まれ育った国について聞いたりする。
遠い南国出身のことから、興味深い話ばかりである。
「そういえば、ラャナンはなぜ育った国から出たの? 目的とか目標があったりする?」
「私がいたところは年がら年中、うんざりするほど暑くてね。それが嫌で出てきただけさ」
「そうなんだ」
「ああ、でも雪を見てみたかった気持ちはあるね。白くて冷たいんだろう? どこの国でも珍しいもんだからまだ見たことはないけど。ただ、そんなのが目的で北の方には進んできたかな」




