表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/333

ロリコン疑惑

 異変を感じとったのはリュークだった。


「ガウ……?」

「どうしたの?」


 愚痴は終わってロイとハルノートの帰りを待っていたが、何か変な音がしたという。

 それも二人が向かっていった方向から。


「話し声ではないんだよね?」

「ガウッ」

「なら、魔物かな?」


 その可能性は十分にあり得る。

 剣はもっていったハルノートのことなので、きっと何事もなく退治してそうだが。

 だが一応、魔力探知で様子は見ておくが。


「これ、魔物じゃなくて人……?」


 魔力の質が禍々しくない。

 範囲を広げて遠くにいる魔物の反応と比べるが、やはり人の反応だ。


「主!」


 ロイが慌ただしく駆け寄って来る。

 目元が赤くはれている。

 泣いた跡だ。


「たすけて、主……! ハルノートが、またみんなみたいにしんじゃう!」

「落ち着いて、ロイ。ハルノートは簡単に死ぬようなエルフじゃない」


 冷静な声を心掛け、ゆっくり息を吸うように促す。

 ロイは過呼吸に近い状態になっていた。

 トラウマが引き起こされたかのか。

 魔物との戦闘のときにはなっていなかったので、思い付く原因はそれしかない。



 ロイの背中をさする。

 私はリュークを見る。

 任せて、という力強い返事をもらった。


 剣と剣が交わるような音が、連続して聴こえていた。

 間違いなく、戦闘が起こっている。


「私はハルノートを助力をしてくるから、ロイはリュークと一緒に―――」

「クレディアどけっ!」


 形振構わない叫びによって、私は言葉を言い終わることなく飛んできたハルノートからロイを抱えて回避する。

 彼は頬から血を流していた。

 服はボロボロになっていて、敵は油断ならない相手ということか分かる。


 ハルノートは森のとある一点を睨んでいた。

 人の形をした影が確かな足取りで歩いている。

 男のようだった。

 耳と尻尾の毛を逆立て、ギリッとした歯軋りをしている。


「許さないぞ。絶対に、許さない」


 狼人だ。

 怒りに燃えていて、一人のエルフしか目に映っていないように見える。


「ハルノート、どこかで恨みを買ってたの?」

「んなことねーよ。あいつの顔は知らねえし、心当たりもねえ」


 怨恨ではないと言うが、ならあの怒りようはなんなのだ。

 あの狼人の彼女を奪ったというなら、ハルノートにならありそうだが。


「このロリコンめ、死ね!」


 掻き消えるような速さで、狼人は装備していた鉤爪でハルノートに襲いかかる。

 既に抜剣していた剣で向かい打つが、相手は体術を用いて途切れることなく攻撃する。

 焦りを浮かべる彼に、まず私がするべきことは。


「ハルノート、ロリコンだったの!?」

「そんなわけねえだろうが! ふざけてんのか!?」

「だって一応確かめておかないと、私達の身も危ないし……」

「興味の欠片もねえ! 速く援護しろっ!」

「喋る余裕があるのか、ロリコン」

「てめえもふざけてんじゃねえぞ! こいっ、炎の精霊!」


 ハルノートの怒りにも火がついた。

 剣に炎がまとわれ、相手の勢いを押し返す。

 狼人は種族からの高い身体能力を、ハルノートはエルフと精霊との親和力を生かして互角の戦いだ。


 私も参戦をと思い、杖に力をこめる。

 リュークは炎との相性が悪いので、「ガゥー……」と尾がパタリと元気がないのだ。

 殺傷力が低い、拘束の魔法を構築しようとする。

 そんなとき、ロイの口から出た「……おにいちゃん」の言葉で、手を止めざるをおえなくなった。


「あの人はロイのお兄さんなの?」

「たぶん……」

「多分?」

「なんかね、いつもとちがう?」


 雰囲気が、ということだろうか。

 狼人の種族から、ロイとの関連性はある。

 それに言われてみると、顔も似ているといえば似ているかもしれない。


 ロイに兄がいたことを今まで聞いたことがなかった、という疑問はある。

 だがそれは後回しだ。

 今は戦いを終わらせなければならない。



 ロイのお兄さんは接近戦だ。

 だからか互角だった戦闘はハルノートが有利となってきていて、炎の熱さから現在は一旦距離をおいていた。


「もう妹には手を出したのか」

「だからそんな趣味はねえって言ってんだろっ!」

「二人の幼気な少女を連れていて、どの口が言うっ。……それともお前、好みの女に育ててるってことか!」

「……ぶった斬ってやる」


 そろそろハルノートの忍耐袋がきれそうだった。

 離れた位置にいる私達にも炎の熱さが伝わってくる。

 だから、私は彼より先にロイのお兄さんを止めなければならない。


「っ動けない!?」

「ごめんなさい、少しだけ眠ってください」


 リュークの力を借り、植物で足を動けないようにする。

 そして私は素早く詰めより、ごんっと杖で意識を失わせた。


「真っ二つにしていいか?」

「戦い終わったのに、物騒なことしちゃ駄目」


 ハルノートを制し、怒りは沈めてもらう。

 ただそれは難しいことで、ぎりぎりと剣と杖をあわせることになって大変だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ