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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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強行軍

 朝、広場には多くの冒険者が集まっていた。


「主、ゆびきりしよう?」


 討伐の見送りにはロイとリュークが来ていた。

 すっかり指切りげんまんの歌がお気に入りの様子である。

 もし私が帰ってこなかったら、本当に針何千本も飲ませられそうだ。

 想像するだけでも怖い。


「なに変な歌歌ってんだよ」

「私の故郷の、約束を交わす歌だよ」

「……お前の故郷、恐ろしいな」


 ハルノートに対して、苦笑いしかできなかった。



「リューク、ロイのことを頼むね」

「ガウ」

「いい、一日三食だよ」

「ガウー」

「おやつもいいけど、少しだけだよ。夜ご飯が入らなくなるからね」

「ガウッ!」


 まとまったお金はあるからいいが、なんだか心配である。

 そう思っても、おやつ有りで嬉しがるリュークに任せるほかないのだが。




 ブレンドゥヘヴンの討伐に行く冒険者が集まったことにより、出発することになった。

 リュークには注意事項を何個も述べた。

 だが、不安が胸に残る。


「あいつらの心配じゃなくて、自分のことを考えろよ」

「でも……」


 ハルノートに呆れられるが、いつまでも幼心のままのリュークだ。

 頼りになるときもあるが、ならないときの方が断然多い。


 意識を切り替えなければならないのは分かる。

 戦闘になれば強制的にも変わるだろう。

 だが隣町までの移動中、Cランク以上のこの集団では私が戦闘に参加するような場面はない。

 私は魔力の温存をしなければならない魔法使いだ。

 ただ優れた腕前の剣士を眺めるぐらいしか出来ない。



「それにしても、雨がひどい」


 土砂降りである。

 外套を着ているが、あまり意味をなしていない。


「雨のせいで、魔物の生態系も変わってるんじゃねえか? こんなにカエルばっかいるとは聞いたことねえ」

「魔力を多く含んでいるからね。魔物が新たに発生しやすいのかも。それに変異した魔物もいる」


 魔物化しただろう蛇も多くいて、水浸しとなった地面の上をすいすい泳いでいる。

 そうした魔物はあちこちで生存競争をしていた。

 なので集団の私達に襲いかかってくる魔物は少ない。



 強行軍であるから、一先ずの目的地である隣町までは直ぐに辿り着いた。

 町は活気がなかった。

 町に魔物が侵入したのか破損している建造物があるので、避難しているのだろう。

 住民は見当たらない。

 かろうじて、冒険者が訪ねる店が開いているぐらいだ。


 この町にいる時間は短かった。

 休息をとった後、ブレンドゥヘヴンを向かい打つ為の戦場となる平地を目指す。



 移動していると、雷と雨が渦巻く中心である山が見えた。

 誰に聞かずとも、あの山にブレンドゥヘヴンがいることは分かった。

 共にいる冒険者の間から、ピリピリとした空気が流れだす。


「分かってたが、こんな雨だと俺の魔法は使えそうにないな」


 雨の音に掻き消されながらも、「精霊が弱ってる」とハルノートの声は届いた。


「精霊魔法を使うの?」

「エルフは精霊を通すやり方が主流だからな。俺は火に適性があるが、今回の相手には相性が悪い」


 火の精霊と契約して魔法を行使するのだが、雨の状況に嫌がって呼び掛けにさえ反応がないようだ。

 これでは魔法が使えないという。


 それにしても。

 ハルノートが魔法を使えることが分かっていたが、火属性なのか。

 性格からして合っていると思うが、エルフであることを考えると珍しいのではないか。


 種族ごとに向いている魔法の属性はある。

 エルフは魔法に特化しているが、風や水、土の属性に限られていると本には書かれてあった。

 何事にも例外はあり、ハルノートの性格であるから嘘を言っている訳ではないだろう。

 だからエルフの中では、魔法の属性が珍しいという立ち位置ではないかと考えた。


 詳しく話を聞いてみたい。

 そんな気持ちが伝わったのか、ハルノートは色々教えてくれる。


「エルフはな、属性ごとに固まって部族として暮らしてる。今は数が少なく知られてねえが、火属性の部族も存在するらしい」

「らしい?」

「俺は水属性の部族で育ったからな。伝聞でしか知らねえ」


 火属性をもつエルフが昔より数が少なくなったのは、迫害されているからだそうだ。

 自然を愛するエルフ達は火を嫌っているらしい。


 淡々としたしゃべりだった。

 火属性が迫害されているのだから、ハルノートもそうだったのだろう。

 それも水属性の部族でだ。

 苦労したのだと、共感をもった。



 暫くして平地についた。

 先に待機していた冒険者は数多くいた。


 死ぬ危険性があるのに人が多いのは、ブレンドゥヘヴンが厄災もだが恵みももたらすからだ。

 雷が落ちた場所には、よく魔石が転がっているらしい。

 それが雷属性の魔石で貴重なので高く売れる。

 ハルノートもそれが目的で来たので、強行軍であったにも関わらず疲れをみせずに拾いに行った。

 私は疲れたので休憩。

 子どもの私には負担が大きかった。

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