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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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泣き言言ってんじゃねえ

「いいもん見せてもらった」


 威厳のある男の声がざわめきを静かにさせた。

 服装からしてギルドの職員に類するものだと分かる。

 だがブレンドゥヘヴンの話をした者のような非戦闘員ではないようだ。

 漂う風格がそう示していた。


「俺はギルドマスターのミンセズだ。いいか、おめえらがいくら騒いだってギルド側の意向は変わらない。Cランク以上はブレンドゥヘヴンの討伐だ」


 喧嘩をしていた者にミンセズは鋭い眼光で睨んでいく。

 途中私も見られることとなった。


「といっても、全員が出張ったらDランク以下で対処できない魔物もいるからな。何人かここに残して置こうとは思っていたが……ちょうどいい。Cランクで死にたくねえっつう奴はこの町に残れ。だが、残った者はそのエルフが言ったように、弱虫やビビりと言われる覚悟はしておけよ」


 ビリビリとする強い圧力を全身で感じた。

 魔力による威圧だ。

 私は自分の膨大な魔力によって抵抗する。

 成功するが、ミンセズという強者に恐れを抱いてしまうのは止められなかった。


「いいか、冒険者なら気合いを入れろ! 冒険者なんて職やってりゃあ、いつだって危険と隣合わせだっただろうが。今更死にたくねえなんて、泣き言言ってんじゃねえ。死ぬ可能性があるのが承知で、テメエらは冒険者やってんだろうが!」


「己の武功を知らしめてこい! この機会に名を広めなくてどうする。生き残った奴は報酬がたんまりともらえ、英雄だと誉めて称えられるぞ! それでもブレンドゥヘヴンの討伐に行きたかねえ奴はこの町に残れ。その他の者は明後日の朝、この町の広場に集合しろ。話は以上だ」


 ギルド内はざわめきを取り戻した。

 意識が高揚としている者が多い。

 この様子だと町に残る選択をする者はごく少数だろう。

 ハルノートのようにブレンドゥヘヴンの噂を聞いて来ている者もいて、実力者のパーティーが多いこともあるが。



「戦う前から怪我をつくってどうするの」


 弱虫と称していたがCランクである以上、ハルノートは顔を殴られている。

 服も引っ張られたりして、見た目はボロボロな状態だ。


「ねえ、しゃがんで」

「なんでだよ」

「いいから」


 ぐいっと引っ張れば、舌打ちされながらも言う通りにしてくれた。


「サービスだからね」


 赤くなっている顔の傷の前に手をあてる。

 殴られた程度の傷であれば魔法で時間もかからず治った。


「……どうも」

「どういたしまして。ハルノートはいつもこうなの?」


 挑発ばかりしているのかと聞くと、「あいつらが情けねえこと言うから悪い」と悪びれないで答えた。


「あんまり口悪く言ってやるな」

「……急に話に入ってくんなよ、おっさん」

「ミンセズだ。さっき名乗っただろう」


 近くで見ると大柄な人である。

 身長は高く、首が痛くなりそうだ。


「しかし、珍しいエルフだな。自分の住みかから出てくるエルフは変わった者が多いが、こんなに口が悪い奴は初めてだ」

「悪かったな」

「珍しいと思っただけだ。なんせ、エルフと言えば高貴で自然を愛する者だからな」

「やっぱりそうなのですか?」


 私のエルフのイメージは間違っていなかったのか。

 首が痛くなるのも忘れて見上げると、「そうだぞ」と頭をごしごしと撫でられた。


「おっさんは何しに来たんだよ」

「お前は威勢がよすぎるからな。話をしにきたんだ」

「ならもうしただろ。帰れ」

「素っ気ねえなあ。お前さん、苦労しているだろう」

「出会ってまだ五日ですが、そうですね」


 言葉遣いをどうにかしてもらいたいとは思う。

 ロイの教育に悪い。


「ランクはC以上なのか?」

「はい」

「こんなちっさい子どもなら町に残っていて欲しいが、このエルフ同様実力はあるようだからな……。魔法使いは何人いても困らんから、期待しているぞ」

「ミンセズさんは討伐に参加するのですか?」

「皆の前で啖呵を切っちまったからな。現役よりは腕は落ちてるが、参加するぞ」


 この場にいる中で一番強い人であろうから、きっと戦場では活躍するだろう。

 ミンセズさんは「ギルドマスター!」と職員に呼ばれたことによって去っていった。

 多くの仕事が溜まっているそうだ。



 ミンセズさんの次はリュークと共にロイが来た。

 預け先の受付の女性は手を振って見送っていて、私は感謝の気持ちのためペコリとお辞儀した。


 甘えてぎゅーとしてきたロイにお返ししていると、「必要なもん買いに行かねえと品切れになるぞ」との声で店に走りに行くことになった。

 だがブレンドゥヘヴンによって魔物が多くの被害を起こしていた影響で、品揃えは悪く値上がりしている状態だった。

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