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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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実力

「あのう」

「……」

「ハルノート」

「……なんだよ」

「ごめんね、わざとではないんだよ」

「別に、気にしてねえし」


 気にしてなかったら、苛立った態度は取らないと思う。

 昨日よりも悪化して、つっけんどんになっているハルノートは馬車に乗って明後日の方向を向いている。

 その様子に馬を操るおじさんは苦笑いしていた。



 出発直前までは良かったのだ。

 酷かった雨はひとまずは止み、馬車で進める状態ではあった。

 だが、ハルノートが「行くぞ」と一足先に私が張った結界から出たとき、それは起こったのだ。



「うっ」


 ハルノートはパタリと倒れた。

 それを見て、「おい、どうしたんだ!」とおじさんが駆け寄る。


「待ってください」

「なんでだ!? 理由は分からんが、あいつは苦しんでいるんだぞ!」

「原因は分かっています」


 リュークは分かったようで、「ガウ~」と逃げていった。


「大丈夫?」

「うぅ、くせえ……」

「やっぱり」


 エルフは臭いに弱かったようだ。

 私達は倒れるほどではなかった。

 ロイは今にも泣きそうな状態ではあったのだが。


 洞窟前にあの魔物避けの植物を置いておくべきではなかったようだ。

 そうでなければ、私を含む他の人に被害が出ていた。

 ハルノートで良かったと、決して結界から出ることなく考える。

 マセガキ、気持ち悪いと言われた仲なので、あまりなんとも思わない。


「速く……たす、けろ……」

「おーい、お嬢ちゃん。そろそろ助けてやったらどうだ?」

「くるしそう」

「あ、そうですね」


 弱っていても不遜な態度であることから、助けることをすっかり忘れてた。

 私は「結界内に入れば臭くないよ」と声をかければ、素早く結界に入り込む。

 その際、おもわず口から「くさい」とこぼれ落ちた。


 この言葉がなければ、ハルノートはここまで怒ることはなかっただろう。

 未来の私は後悔する。




「おい、魔物だ」


 またキノコの魔物だった。

 魔物避けの臭いに屈しない、大きな足にキノコである。


「主、がんばって」

「ガウッ!」


 馬車を一度止めてもらい、声援をもらいながら対峙する。

 昨日の流れで戦えば、大きさに関係なく苦労しない魔物である。


 だが空気を切る音がしたと思ったら、魔物に矢がささっていた。


「え? ハルノート、何をしているの!?」

「何って、普通にやったらあんな魔物すぐに方がつくだろ? そしたら実力の見ようがねえ」

「そんな笑顔で言う言葉ではないよ……」


 絶対に仕返しだ。

 輝かしい笑顔から私は確信する。



 魔物は体全体が赤くなり、ドスドスと足を踏み鳴らすと同時に胞子を撒き散らす。

 これは痺れさせるものだ。

 体の機能を停止させるほど効果が高いものではないが、自由に体は動かせなくなる。

 ハルノートは護衛者ではないとはいえ、依頼人やロイの一般人を危険に及ぼすなんて。

 私が風魔法を使えることを知っての行動だが、なんてエルフだ。


 ムカッとしながらも、魔法を構築して風を渦巻き状にする。

 私を巻き込みながらだが、痺れる胞子は空へと舞い上がっていく。

 風を操りながらも自分が動けなくなっては困るので、解毒の魔法を発動させる。

 後方から「へえ」という声が聞こえた。

 無詠唱に対しての驚きは、消臭の魔法をしたときにもらったのでない。


 このまま範囲を絞り、魔物ごと高く空へ飛ばしてしまおうか。

 楽な方法を思いつくが、ロイには見せられない惨事となってしまうのでやめる。


「あっさり倒してしまうのは簡単だけど」


 これは実力を示すことも兼ねているのだ。

 迫る魔物に、複雑に構築した魔法の玉のような塊を飛ばす。

 素早さは高くない魔物であるので、普通の風とは違って遅めの魔法であっても避けられないでいた。

 風の塊はあっさりと魔物を貫通する。

 奥の景色を見通せる切り刻みのある荒い穴が出来た。



「それなりに強いんじゃねえの?」


 多分誉めているだろう。

 ハルノートは苛立っていた機嫌を取り直していた。


「次からは変なことしないでね」

「もうしねえよ。実力は分かったからな」

「私もハルノートの実力を知りたいのだけど……」

「俺に護衛の任務をやらせるつもりか?」

「じゃあ、冒険者ランクを教えて」

「ほらよ」


 ポイっとタグを投げられるので、難なく受け止める。


「私と同じだね」


 つまりCランクである。


「最近、冒険者になったばかりだからな」

「元々、剣と弓の能力があったということ?」

「そうだ。どちらかというと、弓が得意だがな」


 なんだか後衛ばかりのパーティーである。

 剣も出来るというので、前衛としてやってくれるらしいが。



 おじさんが気兼ねなく話してもいいと言っていたが、護衛に集中する為にも話はそこそこに終わる。

 途中雨に降られながらも、私達は二泊三泊と夜営した。

 雨と進んでいくにつれて、臭いをもろともせず来る魔物が増えていったからだ。

 これはブレンドゥヘヴンの影響である。

 進度はまたゆっくりとなったが、ハルノートが遅さに呆れて魔物を倒すのを手伝ってくれる。

 スムーズに馬車は進むようになった。

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