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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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エルフの男

 バッと体を翻して声の主を見る。

 青年の男だった。

 容姿は端麗であり、髪は雨のせいで濡れていてしっとりとしている。

 目が向くのは長く尖った耳で、この特徴からエルフと思われる。

 装備には腰には剣、背にある長弓だ。

 魔力探知をして確認すると一人。

 その際ピクリと反応したことから、魔力に敏感な者だと伺える。


「敵じゃねえ」


 見た目から想像出来ない粗暴な話し方、しかめっ面に驚いた。

 エルフというの自然を愛する者だから、優しいというイメージを持っていた。

 私は勝手に抱いていたエルフのイメージがガラガラと壊れる。


「雨宿りをしたいだけだ」


 ショックが続いている間にエルフは洞窟まで来る。

 結界は魔物のみを通さないつくりであるので、何事もない。

 ハッとしたときには隣まで来ていた。

 護衛者として見ると、この男は危険はなさそうだ。

 私に興味なさそうに「ちっタオルまで濡れてやがる」と鞄を探っている様子から判断する。


 そのことを含めて依頼人に報告しなければと考える。

 だがその前に「お前さん濡れてるなあ」おじさんが来たことで必要がなくなった。


「ほれ。タオルを貸すから使いな」

「……どうも」


 エルフは鎧を、そしてベタベタになった服も脱ぎ始める。

 そんなときに不安げにしたロイが来たので、「こっちに行こっか」とエルフから遠ざける。


「あ゛? マセガキがこっち見んじゃねえよ」

「そういう目的ではありません」


 念のため、おじさんに変なことをしないか見ただけなのに。

 失礼なエルフである。



 しばらくして、エルフは一晩同じ洞窟で過ごすこととなった。

 雨がやみそうにないこと、雷が何度も落ちているからである。


 皆で鍋を囲む。

 エルフもおじさんに連れてこられ、渋々ながらもいる。

 洞窟の中なので気温が低い。

 なのでスープは体を温めてくれ、一息つけた。

 スープの中にキノコがしれっと混ざっているのは、察してほしい。


「ハルノートさん」

「呼び捨てでいい」

「ハルノート、は冒険者なのですよね。一人なんですか?」

「まあな」

「危険ではないですか? この辺り、魔物が多いですけど」

「俺は強いから、下手な心配はいらねえ」


 ハルノートは素っ気ない。

 返答はしてくれるので、こういう性格なのかもしれないが。


「いくら強いからと言っても、数には負けることもあるぞ」

「……」

「エルフだから、しょうがないだろうけどなあ。それでも命のことを一番に考えて行動したほうがいい」

「……ああ」

「お嬢ちゃんもだからな」

「私にはリュークがいますよ?」

「ガウー」

「ロイがいるだろう。せめて前衛職が一人いればいいが―――」

「なんで俺を見るんだよ」


 おじさんの言いたいことは分かるが、ハルノートが顔を歪ませたことによってロイが怖がっている。


「俺にガキのお守りをしろってか? てゆうかお前らはどういう集まりなんだよ」


 傍から見れば、おじさんと子どもの私、小龍、狼人の子の集団である。

 疑問に思うのはしょうがない。

 かくかくしかじかと説明する。

 ロイの経緯については訳あってのことと省いた。

 嫌なことを思い出させる内容を口にすることではない。



「ふーん、大体分かった。だがあの雑魚の魔物が大量にいる中、お前らだけでここまで来れたんだろ? なら俺が手を貸すのはいらねえだろ」

「次の町まではそうだろうなあ」

「強い魔物が生息しているのですか?」

「いいや。そうじゃない、来るんだ」


 おじさんは洞窟の外を見た。

 豪雨であり、ゴロゴロと鳴ったら外が一瞬明るくなった。


「もしかして、ブレンドゥヘヴンですか?」


 本の知識で知っていた鳥の魔物の名前を言うと、当たりだった。


「お嬢ちゃんにとっては運が悪いだろうなあ。次の街にまで行けば、冒険者ギルドに招集がかけられるだろう。ハルノートは噂を聞いて来たのか?」

「まあな」

「噂があったのですか?」

「ブレンドゥヘヴンが来る前触れとして、雨が一ヶ月間降らないというのかあったからな。それに、やつはもう何十年も山から降りて来なかった」

「おっさん、詳しいな」

「地元から近いからなあ。それに親父が経験してる」

「……主」


 軽くローブを引っ張られる。

 ロイは私を見上げていた。

 魔物の話は面白くない話だっただろう。

 夕食も食べ終わったことで、時間も時間なので話はまた明日にし寝ることとなった。



「おい」

「なんですか?」

「明日、町まではお前らについてってやるよ。お前と組むかは、実力を見てから考える」


 先程話していた、パーティーの話だろう。

 口は悪いが、真っ直ぐに私を見る瞳は好意的に映った。


 おじさんは私達にパーティーを勧めていた。

 欲しいとは思ってはいた。

 仲間というものに憧れていたし、私は多少接近戦は出来るとはいえ得意なのは魔法だ。

 リュークと共に後衛の魔法使いだけの一人と一匹なので、前衛がいてくれたらと何度か考えていた。

 これまで仲間を求めていなかったのは、ロイを送り届けることに他人を巻き込んではいけないと思っていたからだ。


 だがそのことがおじさんを心配にさせて、その結果ハルノートとの縁を引き寄せてくれた。

 このせっかくの縁は生かすべきだろう。


「分かりました。では、明日はよろしくお願いしますね」

「ああ。失望はさせんなよ。……それと、その気持ち悪い敬語を止めろ」

「気持ち悪い……」


 ハルノートはことごとく、エルフへのイメージを貶めてくれた。

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