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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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デレた

 ロイが突然にデレた。

 どこに行くにしても、とことこ私の後ろをついてくる様子を見て、私はそう思った。



 昨夜眠っている間、設置していた魔法の警報が鳴った。

 自分にだけ聴こえるようにしてある音で起きてみると、結界の周りに集団で魔物がいる。


 ロイを起こさないように、結界に風の属性を追加して戦闘する。

 防音や血の匂いがするのを防ぐ効果があるからだ。

 だが狼人にはあと少し、効果が足りなかったようでロイは起きてしまった。


 当初、様子は変だった。

「危ないから、下がっていてね」と言うがロイぼうっとしていた。

 私はそのことから、魔物との戦闘を見たことによって衝撃を受けてしまったのかと思った。

 それにロイは「どこもわるくない」と言うが、私のことを突然『主』と呼んだ。

 心に傷をつくってしまったことが原因かと疑うが、どうもそうではない様子。


『主』というものがロイの中でどういう意味を持つか分からないが、少しだけ私に心を許してくれた気がする。

 言葉数が増えたことから、そう判断できる。

 きっとトラウマになっているだろう魔物から、守れるだけの力があると認識してくれたかもしれない。


 まあデレるようになって困ることは持ち合わせていない。

 金目となる魔物の魔石を大量に手に入れることができ、後ろをついてくるロイはとてもかわいい。

 今だって「主、てつだう」と野営の片付けをしてくれる。

 リュークは完璧な覚醒状態ではなくうとうとしているだけなので、ロイはいい子だと思った。



 蜂蜜をかけたパンを頬張った後、ひとまずティナンテルを目指して歩く。

 昨夜の魔物の襲撃で寝る時間が減った影響で、私は一つあくびをする。


「主、ねむたい?」

「少しだけね。ロイはあの後、よく眠れた?」

「うん」


 それなら眠りの魔法をかけたかいがあった。

 お昼寝をしすぎて夜元気すぎるリュークのため、既存の魔法を改良したのだ。

 その魔法が不安がっていたロイをぐっすりさせたのなら、開発したかいがあった。

 ちなみに無詠唱ではなかったのは、子守唄のような形として効果を高める為だ。




「おや、こんなところに子どもが二人じゃ危ないじゃないか」


 偶然通りかかった御者が、快く馬車に乗せてくれた。

 私とリュークだけなら断ったかもしれないが、ロイがいる。

 礼に護衛をかねながら、馬車に揺すられる。

 ロイが気持ち悪そうなので酔い止めの魔法をかけ、御者に狼人についての情報を聞く。

 何も情報は得ることが出来なかったが一匹の魔物を退治し、世間話をしているうちに街に到着した。



 御者と別れ昼食をとった後、宿にチェックインした。


「リュークとお留守番していてね」

「主はどこかいくの?」

「うん、色んなところだよ」


 冒険者ギルドや水が出る魔道具の魔石の補充とかである。

 今日はとにかくお金を稼がなければ。

 宿代と食事代の為にも、空っぽに目前の財布を重たくしたい。


 近場にいる魔物の討伐の依頼を受けて狩り、他にも目についた魔物を倒していく。

 ズパズパと風魔法で斬っていったので、夕暮れになったときには魔物は恐れて近寄って来なかった。

 冒険者ギルドでも私のその様子を見ていた者がいたようで、遠ざかりにされる。

 ヒソヒソと会話をされて若干後悔しながらも、やるべきことをやって宿に戻る。



「ガウー!」

「うっ」


 リュークの顔面衝突に耐え、ベリッと剥がす。

 帰るのが遅かったせいで、お腹が空いているようだった。

 宿で夜食を食べ、ついでに明日から二日分の宿代を払う。

 暫くはこの街で滞在するつもりだ。

 もう少しお金を稼ぎたい。


 ボフッとベットに倒れこむ。

 とても気持ちいい。

 目を閉じてしまえばすぐに眠ってしまいそうだ。


 そんなとき、つんっと誰かに触られた。

 誰かといえばロイしかいない。


「どうかしたの?」

「あした、おるすばん?」

「そうなるね」


 暇だろうから、暇潰しとなるものを買ってこようか。

 何かいいものがあるだろうかと考える。

 私は本読むぐらいしかしてこなかったので、幼い子が喜ぶものが分からない。

 私は欲しいものがあるか訪ねようとしたとき気付いた。

 ロイは何だか寂しそうである。


 そういえば、と思い出す。

 ロイは昨夜「どこにもいかないで」と言った。

 私は、私かリュークのどちらかがいればいいと思っていた。

 だから金を稼ぐこともありお昼から出かけた

 ロイはリュークがいるとはいえ、見知らぬ場所にいることになる。

 昨日と比べて甘えてくれるようにはなった。

 だがロイはまだまだ遠慮してばかりであったか。


 ふうぅと息を吐いた。

 ロイが体を揺らしたので、抱きしめて背中をポンポンとする。


「やっぱり明日はロイといようかな」

「……ほんと?」

「本当。薬を作るから、手伝ってくれる?」

「うん!」


 お金は薬を調合して稼げばいいか。

 リュークに必要な植物を出してもらえば、採集しに行かなくてもいい。

 代わりに対価として果物を迫られるが、働いた分の給料して考えれば安いものである。

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