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短編集 冬花火

踊れ魂が消えるまで

作者: 春風 月葉

 不気味な程に涼しい夜の集団墓地に青白い月明かりが差す。

 この墓地には街で亡くなった人が埋められている。

 時は午前零時、青白い光…魂が墓から浮き上がり、生前の人の姿をした幽霊のようなモノに変わるのを、墓守りの息子は偶然目にした。

 窓から見えた不思議な光景に驚きながらも、その光景の持つ引力の様なモノ、あるいは好奇心の様なモノに負け、彼はカーテンに身を隠してその様子を眺めた。

 魂達の中に、今月の始めにいなくなった母の姿を見つけ、彼はこの魂が今月に亡くなった人達なのだと思った。

 彼らは墓地の中心に集まると談笑を始めた。

 彼はもう見ることのないはずだった母を見れたことに涙を流していた。

 彼らは一通り談笑を終え、緩やかに踊り始めた。

 彼が顔を上げ直すと目の前には、月明かりの下でフワフワと浮きながらステップを踏み、軽やかに舞う人達がいた。

 中には知っている顔もあったが、それ以上に彼は彼らのダンスに夢中だった。

 複雑に交じり合う光に見惚れ、彼は目を離せなくなっていた。

 ダンスは段々と激しさを増していく。

 あまりに夢中で気が付かなかったが、動きながら彼らの身体は、溶けるように、消えるように少しずつ空へと昇っていった。

 哀しそうに、満ち足りたように、幸せそうに、名残惜しそうに彼らは夜空に光の粒子となって消えていった。

 ゴーン、ゴーンという柱時計の一時を伝える音が廊下から聞こえた時には、墓地はいつもの静かな墓地に戻っていた。

 閉幕した死者達の舞踏会。

 寂しくなった墓地にはたった一人の観客からの、哀しいアンコールがパチパチと響いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どこか物悲しいような、寂しいお盆の暮れを思わせる世界観に胸が締め付けられました。光の粒子となって消えていった彼らの行く末を聞くのは無粋なこととわかりつつも、聞くことで寂しさを埋めたくなる…
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