18話 後ろに魔王・・・・・・いえ綺麗な方が
「・・・で、本当の所はどうなんですか?」
「ですから、帰ってきたらこの子がもう卵から孵ってまして・・・」
只今、絶賛尋問中になっている。
なんでこうなってか。受付に行ってフリムを宿舎で飼って良いか聞こうと思ったらこうなった。
エレスが居なかったから他の受付の人に聞いてみたらこうなってしまった。
「良いですか?まずですね、ギルドでは基本的には何も言いません。
個人の自由ですから。魔物使いの方もいらっしゃいますから、使い魔の子らも一緒に住めるようにするのもかまいません。
ただし、そういった事は事前に連絡して頂かないとダメなん出すよ。
魔物や動物が苦手だったり体質的に病気を持ってる方も居るのですから尚更です」
「はい、すみません」
ノリで買った様な所もあるしな。
「ではこの子の登録をしますから、この用紙に記入をお願いします」
カウンターに出された用紙に記入するために、胸の辺りで抱っこしていたフリムを一旦カウンターに置き、必要事項の記入を始める。
フリムはそのまま大人しくカウンターで丸まって居る。
「撫でても大丈夫ですよ、コイツは大人しいですから」
受付嬢がフリムをチラチラ見てはソワソワモジモジしている。
傍から見ても分かる。
まぁ撫でたくもなるか。フリムはその見た目で印象が出やすい虹色の体は、光の加減でその輝きが変わる。その上ふわふわの羽で、小さい生き物は、可愛たがりたくなる。
「え・・・と、では失礼して。
・・・ふわふわ・・・ふわふわ」
フリムの気持ち良さにヤられたみたいだ。
撫でられてるフリムは大人しくしてるがジッとコッチを見てる。
「これが終わったら飯にしような」
「フィ!」っと撫でられてない方の側の翼を広げて鳴いてくる。
やはり腹が減っていたみたいだ。それもそうか、まだ生まれたばかりで何も食べてないからな。
記入が終わった用紙を受付嬢に渡す。
「はい、では確認しますね。
・・・・・・・大丈夫です。しかしやはり珍しいですね、フリムドラゴンですか」
「そんなに珍しいのですか?」
「居ない事もないんですが、まずこのドラゴン、フリムですね。
は、体のサイズを大小自由に変えられ、体の色も自由に変えられるためになかなか見つからないのです。
それに、このドラゴンは特殊でして、托卵はご存知ですか?
ドラゴンなのに托卵させるのです。
その上生まれるまでに父親と母親になる生き物から魔力を少しづつ受け取り、その親の特性を受け継ぐのです。
この子の父親はまず間違いなくソーマさんで間違いないと思いますが、残りの母親はどなたになるんですかねぇ?」
そんな事を言いながら受付嬢が俺の後ろをニヤニヤしながら見ていた。
つられて後ろを見ると、エレスがいつものギルドの制服を着て後ろに立っていた。
「どうしたんですか?」
「使い魔の居住申請をしていただけで、べ、別に怪しいことは何も」
何故か噛んでしまった。
「へー使い魔ですか。
どの子・・・まさか、このフリムドラゴンではないですよね?」
エレスから何か黒いというか禍々しいオーラが。
「はいその通りです!」
見つかってはいけない鬼教官に見つかったかの様に背筋を伸ばして答えてしまった。
「そうですかー、その子がソーマさんの使い魔なんですね。
見た感じですとまだ生まれたばかりですよね。
と、言う事はですよ。この子の父親はソーマさんなんですよね。」
「た、多分そうです」
何か怖いよ、エレスさん。どんどんと距離を詰めて聞いてくる。
「では母親はどなたなんですかねぇ。
私の知ってる人なんですかぁ?」
表情がヤバイ!こう、何て言うか氷の様にっていうか、背筋が寒くなる様だ。
声も、いつもの優しい感じからかなり低い、完全に人を尋問している様な時の声だ!
「俺も分からないんです!
コイツが卵の時、俺が部屋に来たらそのタイミングで生まれたから本当に分からないですのであります!」
もう言葉使いもおかしくなってきた。
「ふーん、わからいいねぇ。
でわ買った時にはどうなんです?そのお店の人は女性ではなかったですか?」
「買ったのではなくて最初っから部屋に置いてあったんだあったんです!
証人としてガインが居ます!
朝まで部屋に居座ってたんで知っています!
そこからいつもの訓練を終えって戻ってきたらもう卵が置いってあったんです!」
がインについては真実だ。それ以外が嘘なんだが。
「それでは、本当に母親が誰か知らないのですね?」
「知りません!」
「では仕方ありません、ここは納得して上げましょう。
・・・・・・では一体誰がソーマさんと番いに・・・・」
「はい?何か言った?」
開放された安堵で、最後何か言っていた気がする。
「いいえ!
何でもございません!気のせいです!」
今度はエレスが慌て出した。
「そうか、じゃあご免ね。
これからフリムの飯を作って上げないといけないから部屋に戻るね」
フリムがもう限界なのか、背を向けていた俺に尻尾で叩いて合図してきた。
「お引き止めして申し訳ありませんでした」
「あ!ソーマ様、申し訳ございません」
フリムを抱いてカウンターから離れる前に、手続きをしてくれた受付嬢に声をかけられた。
「え?
なんです?」
「使い魔を街中に連れて行く時は、使い魔に使い魔の印を付けて頂かないとなりません。
付けないでいると間違って討伐されたり誰かに奪われる事もあります。
最悪、所有者本人も刑罰があるので早急に印を買って付けた方が宜しいかと」
「ありがとうございます、印と言うのはどこで貰えますか?」
「印はここのギルドの売店か、街の魔物商店に御座います。
そこでしたら餌なども易く手に入るかと」
「ありがとう、そこに行ってみますよ」
そのまま受付嬢に地図を書いてもらい。
魔物商店に行ってみることにした。
ただ、フリムは印が無いので部屋で留守番させることにした。
部屋から出る前に、フリムに牛乳を温めたやつを少し飲ませて落ち着かせておいた。
教えてもらった魔物商店はかなり大きかった。また、何かしらの魔物がいる気配があるのに鳴き声がしない。
店内はかなり広く、所狭しと様々な魔物が檻の中に居た。
俺以外にも客が居る様で、その1人1人に店員がついて接客していた。日本の大型家電を扱っている店の様だ。
「いらっしゃいませ、このような店は初めてらっしゃいますか」
店に入ってきた俺を見つけた店員が声をかけてきた。
見た感じは文学系の痩せた男だ。」
「あぁ、初めてだ。
ココで使い魔の印と餌が買えると聞いてきたんだが」
「印と餌で御座いますね。
印のサイズはいかがなさいますか?
あと餌はどの様な種類になさいますか?使い魔によって異なりますが」
「俺の使い魔は、フリムドラゴンなんだけど餌でオススメはある?
それとまだ生まれたばかりでサイズも直ぐに変わるかもしれない」
「おぉ!フリムドラゴンで御座いますか!
大変珍しい使い魔で御座いますね、しかもまだ生まれたばかりとは。
・・・そうですね。餌は基本的には生まれたばかりでも何でも食べさせて大丈夫で御座います。
ドラゴン種は何でも食べて消化しますので問題ございません。
印のサイズは・・・商品がコチラにございますのでご案内いたしますね」
店内を案内されて印あるところまで来た。
「こちらの印はいかがでしょうか」
ススメられた印はチョーカーの様な作りで、青い帯の真ん中に金属の枠に嵌め込まれた赤い宝石のようなモノが付いていた。
「これはどういった物で?」
「こちらは少しお値段が高いのですが、その代わりにサイズや締めつけが自動で調整される魔法が付与されております。
生まれたばかりの使い魔は、首周りや体にくっ付くような物は嫌がったりしますので宜しいかと。
真ん中にはめ込まれている物は、その使い魔の飼い主を登録する魔道具の様な物で御座います。
コチラに登録しておきますと、他の方が使い魔か、飼い主は誰かが判別しやすくなります」
「そっかー、値段はどれぐらい?
予算よりも高かったら買えないんだけど」
「値段についてはご相談なんですが・・・」
「相談って?」
まさかかなり高いんじゃないだろうな?
少々高いと言っていたし。
「こちらの印を無料にする代わりに、お客様のフリムドラゴンを一度見せて頂けないでしょうか。
未だにこの商店でも商品として見たことはなく、店の者としてはこの目で1度は見てみたいのです、資料として残しておきたいのです」
見せるだけでタダか・・・
「見せるのは良いが、勝手に決めて良いのか?
唯の店員なんだろ?」
「申し遅れました。私、当商店の店主、モルガンと申します。
それでどうでしょうか、ご了承頂けますでしょうか?」
「それぐらいでタダになるんだったらコッチも助かる。
それで頼む。
繰り返すけど見せるだけで本当に良いんだよな?」
「そうですね、後はあるとしたらスケッチを書かせて頂いたり触らせて頂ければ・・・本当はその羽等も頂ければ嬉しいのですが」
「羽って、抜けた羽でも良いのか?」
あんな小さいヤツから羽を引っこ抜くのはさすがに嫌だぞ、虐待しているみたいだ。
「もちろんでございます。
無理にとは言いません。」
「契約成立だな」
「有り難うございます。
こちらはお渡しいたしますので、後日改めて当店にお越し下さいませ。
お役様の空いているお時間で大丈夫ですので」
「助かるよ。
それと俺の名前は蒼真だ。
今後も宜しくな」
使い魔の印を袋に入れて貰って受け取る。
「ソーマ様で御座いすね。
こちらこそ今後共当店をご贔屓にお願いいたします」
お互い挨拶もそこそこに分かれて宿舎に帰った。
部屋に着いて早々にフリムに飛びつかれた。
牛乳だけじゃ足りなかったようだ。
野菜やら肉等をフリムの口のサイズに切ってやり、味付けしないでそのまま食べさせた。
小さい胃袋にどんだけ入るの?っていうくらい食べたのは驚いた。
「フリム、コッチにおいで」
まだ飛べないようで、ヨチヨイと歩いてきた。
さっきのは飛び跳ねてきたみたいだな。
足元まできたフリムを膝の上に乗せてやる。
「お前に使い魔の印を買ってきてやったから付けてやるな」
買ってきた印をフリムの首につけてやる。
説明通りに、ブカブカだった帯が自動で調整された。
「苦しくないか?」
「フィー」
付けた印は苦しくないようで良かった。
しばらくこのまま撫でたりしてかまってあげる。
「フリムの母親って誰なんだろうな・・・」
そんな事を考えながら夜になっていった。
引き続き、ご意見ご感想をお待ちしております