16話 町中での依頼
トラブルもあったが、次の日からも引き続き街の外で講習を受けていた。
変わったのは、ヤンキーたちがあの日以降から講習に来なくなった事ぐらい。
理由としては簡単で。危機管理が出来ていないと言われ、強持てのお兄さんたちに囲まれて過す事になった。何かしでかしたら体でO・HA・NA・SI♡する事になるだろう。
ある程度、狩りや剥ぎ取りが出来る様になって来た頃に1週間の自由が与えられた。
自由とは言っても遊んで良い物ではなく。個人個人で、思い描く様に依頼や訓練等をしても良いとなっている。勿論、個人だけではなくパーティーを組んで動いても良い。
依頼をこなす場合は、ギルドが事前に用意している依頼から選び教官の1人が引率役で付いて行く事になる。
いつもの様に朝起きてから1人訓練を軽くこなし、それから朝飯や身支度をする。
俺はポーターとして登録しているので街の人からの依頼を受けるつもりでいる。
教官の1人から依頼を見せてもらい、1つ受けてみる事にした。
依頼は個人経営の料理屋の下働きで、依頼料は昼飯付きと現金が200R。大体街で生活するのに宿代が150R前後、1日の食事代が50Rあれば何とか生活は出来るのだ。
依頼としてもそれ程難しい物ではなく、初心者が依頼を受けるのには安全パイだと思う。
この依頼を受けて、早速向かう事にした。引率役は、あの怪我を負った教官だった。まだ包帯が取れていないが何とか元気そうだ。
『巨人も満腹亭』ココが依頼を出していた店だ。
見た感じは少し古めの建物だが手入れはキチンとされていて綺麗だ。
緊張するが店の中に入って声をかける。
「すみませーん!
依頼を受けた者ですが何方かいらっしゃいますかー?」
「はいよー、少し待っときなー今行くからー!」
奥から威勢の良い年配の女性の声が聞こえてきた。
「待たせたね!アンタかい?依頼を受けたって言うヤツは」
「初めまして、蒼真って言います。
まだ新人講習を受けている最中ですが、大丈夫でしょうか?」
「良いねぇ、最初に挨拶も出来るし顔も良いしね」
「ありがとうございます」
顔は関係ないんじゃなかろうか。
「教官の方も1人引率役で来ているのですが大丈夫でしょうか?」
「奥の個室が何時も空いているからそこに居て貰いな。
仕事は厨房の奥だからついてきな」
恰幅の良い婆さんが厨房に入っていく。
「はい、それとお名前をお聞きしても良いですか?」
「ああ名乗って無かったね。
モルだよ、依頼に書いてなかったかい?」
「書いてはありましたが何方かは分からなかったものでして」
来た事無いのに分かるけなでしょ。
「そういやーあんた見た事無いね。
ココだよ、仕事場」
そこには見事なまでに食材各種が大量に積まれていた。
「そうです、分け合って最近ここに来ました。
コレをどうするんですか?」
「出来ればこれを全部下処理して欲しえねぇ。
一日かけても良いから。
コッチはコッチで色々あるから頼むよ、見本もコッチに置いとくよ」
「分かりました、器具はこの辺の借りますね」
近くにあった器具で食材の下処理を開始する。
「好きに使いな!
後は時間がかかるだろうから適当に休みを入れな」
モルさんはそのまま売り場の方に戻って行った。
何故だろうか?さんを付けないと大変な事になる気がする。
教官の方は、いつの間にかに居なくなっていた。
個室に行ったのだろうか。
朝から開始して昼前には終わってしまった。
この店は朝から営業を開始しているらしく、俺が来て直ぐに客が来るようになっていた。
「モルさん、全部終わりました、確認をお願いします」
「あぁあん!
全部終わったて?
適当にやったんじゃないだろうね」
そんな事せんわ!
「きちんと出来てるねぇ。
あんた、こういうのは得意なのかい?」
「自分で食べる分は、なるべく毎回作る様にしてます」
「じゃあ作り方を教えるから幾つかメニュー手伝ってくれないかい?」
「はい、一通りは出来ると思いますから大丈夫です」
「コッチから頼むよ」
幾つかのメニューを覚えて、売り場を手伝う様になってきたが、いつの間にかにほぼ全てのメニューを作らされてた。
昼のピークが終わる頃には完全に店のスタッフの様に扱われ、良い様に使われた。
『巨人も満腹亭』は夜は酒場も兼ねており、夕方からソッチに店の雰囲気が変わる。
酒飲みたちが客層のメインになるから料理自体は楽だが、酔っ払いに絡まれて接客が大変だった。
常連と思わしき客が、モルさんに何かシメの料理が食いたいと言ってきたのを俺に「あんた何か作りな」と無茶振りを行き成りしてきた。こちらにも麺料理があり、作りもラーメンの様なものだったから煮込みラーメン(モドキ)を作って渡してやった。
これが失敗だった。食ってる常連客が猛烈な勢いで食いながら「美味いな!兄ちゃん!」なんて言うから他の客もメニューに無いのに頼みだしやがった。
コチラの世界は、ナイフ・フォークだけでは無くて、箸で食べる文化が混ざっている。
食文化は洋食の様なモノが多いが、少なからず和食風な文化が混じっている。とわ言っても米食の文化はココでは少なく、もっと東の国に行かないと行けないらしいがな。
店の営業も終わり、片付けも終わる頃にモルさんが言ってきた。
「ソーマ、これ依頼の達成証明書になるから受け取んな。
それとこれは別件なんだがアンタ、このままウチで働かないかい?
初日でこれだけ動けて料理もできれば家としても助かるんだがねぇ」
「すみません、専業でやるつもりは無いので。
暇な時にでも良いなら手伝いに来ますけど?」
達成証明書を受け取りながら断りを入れる。
「そうかい、仕方ないねぇ。
時間がある時に来てくれれば良いさ、そん時はきちんと手伝って貰うからね」
「はは、その時はお手柔らかに。
それでは失礼しますね、お疲れさまでした」
「はいよ、また来な」
依頼達成と言う事もあり、このままギルドの受付に行って達成の報告をした。
夜も遅いのに、ココは営業活動を24時間している。
とは言っても夜に活動する人は少ないので、ギルドの職員も少ない。
コレで明日からの依頼も新たに受ける事が出来るがどうするか迷っていた。
連続で受けるか、1日置いて受けるか、ベットで横になりながら考えていたらいつの間にかに寝てしまっていた。
引き続き、ご意見ご感想をお待ちしております。