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いけにえ王子と孤児の少年

軽くですが狩りの描写があります

苦手な方はご注意くださいませ

 

 

 

「それで、戻って来たんですか?」


 チセと名乗った孤児の少年は、あきれ顔でピリカを見ました。


 ピリカが孤児の村に入ったわけではなく、ケモノを狩るために出て来ていたチセに、偶然ばったり出くわしたのです。


 今日はじめて会った、それもどうも年下らしい少年にあきれた顔をされて、ピリカは思わずむっとしました。


 結局あのあとピリカは考えさせてほしいと答えを先送りにして、妖精の谷に戻って来ていました。レシパも二の姫もピリカがここにいるならばと、妖精の谷に残っています。

 チセに話しかけたピリカはいつのまにかその話を聞き出されており、話を聞いたチセの感想が、冒頭のひとことでした。


「自分の人生なのだから、よく考えて決めるのは悪くないだろう」

「いやまあ、そうなんですけどね……」


 チセがくるりと視線を回したあとで、これはないしょの話じゃないだろうし良いかとつぶやきました。


「ハウラプさん、わざわざ妖精にいやがられながら、あなたたちの解放かいほうをお願いしたんですよ?」

「え?」

「あなたがお母君に会えたのも、ハウラプさんが妖精に許しを乞うたからです」


 また、知らずに守られていた、と言葉をなくすピリカに、それに、とチセが続けます。


「ぼくならきっと、迷わずもどります。たとえハウラプさんが好きでも、いえ、好きだからこそ、もどることを選ぶでしょう。王族としての生き方が、どんなにつらそうに見えたとしてもです」

「す、え、おい……」


 会って間もないチセに図星ずぼしをさされて、ピリカは顔を赤らめました。見た目にはピリカの方が年上に見えますが、態度だけ見ればチセの方がずっと年上のようです。


 ピリカの動揺なんてないもののように無視して、チセが続けます。


「ハウラプさんと恋愛れんあいなんて馬鹿な夢を見るよりも、きちんとかのじょの利になるようなことをした方が、現実的ですからね」

「それ、は、どう言う……」

「あなたは、ハウラプさんが何歳かご存じですか?」


 チセに問われてピリカは首をふります。

 お妃さまの話から自分より年上であることは想像できましたが、実際に何歳かまでは知りませんでした。


「千九百三歳だそうですよ」

「千……?」

「ほぼ二千歳ですね」


 思わぬ年齢を答えられて、ピリカはぽかんと間抜けた顔をしました。


「正式に魔女として認められると、歳を取りにくくなるんだそうです。自分の歳がわからなくなるから、住んでいる塔のはしらに、毎年一本ずつ線を付けているとか」


 ぼうぜんとするピリカに、チセが説明します。


「ハウラプさんが自分のことをばーさんと言っていたので、ちょっと気になってきいてみたんですけど、ハウラプさんから見たらあなたのご両親ですらひよっこだそうですよ。魔女は千歳を越えてやっと、一人前いちにんまえ扱いされるとか」


 そんな相手と、恋が成立すると思いますか?ぼくらの、またたきのような短い人生で?


 チセの言葉にピリカはぐっとくちびるを噛みしめ、うなるように問いました。


「なら、どうしろって言うんだ?」

「人間のなかで、魔女の地位は低いですよね?」


 ふいに、すっと弓をかかげたチセが、空へと矢二本を放ちました。高く飛んだ矢は上空の鳥のれに刺さり、二羽の鳥が墜落ついらくします。


 落とした獲物えものの落下点を目指して走り出したチセを、ピリカは追います。


「事実も知らずにみな、魔女を悪しきものとして見ている。あなただって、誤解でうらんでいたんでしょう?」


 走りながらチセは語り、落ちた鳥を見つけると土を掘ってその場でさばきはじめました。

 ぎょっとするピリカにはかまわず、チセはたんたんと話し続けます。


「王族の言葉だったら、すこしでも誤解をとけるんじゃないですか?」

「っ!」


 チセの指摘に、ピリカは、はっとしました。

 表情をひきしめたピリカを見て、チセはふっとほほえみました。


「ここでハウラプさんのお金を浪費ろうひして生活するより、ずっとハウラプさんのためになると思いますよ。あなたは、鳥もさばけないのですから」

「畑、仕事は、すこし手伝っている」

「手伝いと経営けいえいは違いますよ」


 あくまで穏やかに否定されて、ピリカはなにも言えなくなりました。


 いつのまにか鳥はきれいに処理しょりされ、掘られた穴も手早くめられました。ピリカには、とてもできないことです。


 顔をゆがめるピリカに、チセが苦笑をうかべます。


「って、単にぼくが王族とか貴族とかきらいなので、意地悪言っただけですけどね」


 肩をすくめたチセは、用はすんだからとピリカに別れを告げました。


「きちんとなやんで、あなたなりの決断をすれば良いと思いますよ。あなたの人生のなかで、はじめて与えられた、選択肢せんたくし、でしょうから」


 別れぎわにそう言われ、年下からの言葉でなぐさめられて安堵した自分を恥じ、ピリカはきちんと考えようとこころにちかいました。

 

 

 

つたないお話をお読みいただきありがとうございます


R15だったらがっつり処理の内容まで書いたのですが

全年齢対象かつ童話と言うことでこころもち自重しました

まだ配慮が足りない!と感じた方がいたら申し訳ありません


続きも読んでいただけるとうれしいです

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