魔女追い王子と逃げる魔女
ハウラプがたびたび孤児の村をおとずれていると知ったピリカは、孤児の村へ行こうとしましが、メムによりとめられました。
ハウラプと約束したから、そこはやぶれない、と言うメムに、ピリカは自分ひとりで行けば約束をやぶったことにはならないだろうと反論します。しかし、それでもメムは良いと言いませんでした。
「約束したって言うのもたしかにあるけど、それだけじゃなくて、ハウラプが理由もなくかかわるななんて言わないと思うから、行ってほしくないんだ。なにか孤児の方に、事情があるのかもしれないでしょう?そうでなくても、戦災孤児なんて軽い気持ちでかかわるべきじゃない相手なんだから」
「だが、話をするためには会わないと」
「ハウラプは近々、あたしたちがいけにえとして認められるかを確かめに来るはずなんだ」
どうしても会いたいと引き下がるピリカに、メムはそう教えました。
「そのとき必ず、ハウラプは妖精の谷のリーダーと話をする。そこを狙えば、つかまえやすいはずだよ」
泉の村の住人全員で協力するから、その日まで待ってほしい。
メムにそうたのまれて、ピリカは孤児の村に行くことをあきらめました。
そうして、ハウラプがリーダーに会いに来た日。
「……裏切られた、って顔で見てたわよ?」
「すごい勢いで逃げたね……」
いちどはハウラプをつかまえかけたものの、ふりはらわれ、孤児の村へと逃げられて、けっきょくメムたちはハウラプをつかまえることはできませんでした。
恩を仇で返した気持ちを味わった村人たちが、罪悪感に胸を痛めながら解散します。
その場に残ったのは、ピリカが孤児の村へ行かないよう腕をつかんでいる、メムとウパシリです。
「戻ろう、王子さま。これ以上はきらわれちゃうよ」
「また機会はあるだろうから、今回はあきらめよう」
ウパシリとメムにさとされても、ピリカは魔女が走り去った方から目を離しません。
いまにも走り出してしまいそうなようすに、メムもウパシリもピリカの腕を離せず、トリモチにつかまった鳥のように、三人でその場にとどまります。
「なんで……」
「さあ、なんでだろうね」
ピリカがつぶやいた言葉に、メムがあいづちを打ちました。
「あそこまで必死で逃げるのだから、どうしても話したくない理由がありそうよね」
「そうだね。あたしが話したときも、いじわるで話さないとかじゃなく、事情がありそうだったよ」
メムがウパシリに同意しますが、肝心の理由はわかりません。
「どうすれば、話をしてもらえるんだ?」
「いまだと、取りつく島もないない、って感じだね」
顔をしかめて言うピリカに、メムがほおをかきます。
「まあ、あたしからまた、たのんでみるよ。……そんな機会が、もらえればだけど」
「ちょっとメム、いやな想像はやめてよ」
「でも、ウパシリもあの顔見たでしょ?明らかにつぎは、警戒されるよ。きらわれたかも」
やっちゃったかなぁとつぶやいたメムが、それに、と続けます。
「妖精のリーダーがいけにえをみとめたら、もうハウラプがここに来なきゃいけない理由はなくなるよね?あたしたちの生活は軌道に乗ってるし、孤児の村の生活も大丈夫なら、妖精の谷に来たりしなくなるんじゃない?」
「やっぱり追、」
「いや、それは最悪の選択だから」
走り出そうとしたピリカの腕を、メムが引っ張ります。
「孤児の村に行ったならどっか家に避難しただろうし、ハウラプなら窓から飛んで逃げられる。どうせつかまえられやしないのに、むだに追ってよけいにきらわれたら、ここに来てくれなくなる可能性が上がるだけだ。今日はおとなしく引き下がるのが、現状の最善だと思うよ」
メムの言い分にピリカはぐっとつまって、力なく、戻る、とつぶやきました。
「うん。ハウラプがまた、ここに来てくれることを、祈ろう」
「ああ……」
三人は肩を落とし、ハウラプを追って駆けた道をとぼとぼと戻りました。
もう来ないのでは、と言うメムたちの予想に反し、ハウラプはその数日後に姿を見せました。
その上、オウジデンカが会いたがっていると伝えたメムに、会っても良い、とまで言ったのです。
「どう言う心境の変化なの?」
「魔女は気まぐれなんですよ」
メムの疑問は笑顔で交わし、ハウラプはピリカと会いました。
話を、と急くピリカを片手で制し、ハウラプは言います。
「それでは、行きましょうか」
「え?」
「本当のことを、知りたいのでしょう?」
「あ、ああ。そうだ」
とまどうピリカにハウラプは、わたしよりくわしいひとがいますから、と言い、ピリカの手をつかみました。
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