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悪い魔女と孤児の村

 

 

 

「家がいりますね」

「うん」

「……ねぇ」


 妖精の谷へと戦災孤児たちを連れてきたハウラプは、どうやって孤児たちが暮らせば良いかと相談をしていました。


「畑もいりますし、服も作れないとこまりますね」

「あたし、機織はたおりできるよ!糸紡いとつむぎも!」

「……ちょっと」

「でしたら、機織りが必要ですか。糸車いとぐるまもいりますね。あとは」

かいこくわあさ!」

「……ねぇ!」

「ここは気候が良いですから、桑も麻も育ちますよ。たねはてきとうに連れて、」

「ちょっと!!さっきから声かけてるんだけど!?」


 さっきからずっとハウラプに呼びかけ続けていた妖精の谷のリーダーが、怒鳴どなってハウラプのえりをひっぱりました。


「ああ、いたんですか」

「いたんですかって、さっきから、ずっと、何回も、声かけてたでしょ!!」

「そうですね」

「聞こえてたんじゃないか!!」


 ぷんすかと怒るリーダーの相手をするために、ハウラプは孤児たちへ待っているようたのみます。


「ねぇ!」

「はいはい。なんですか?」

「こんなにいっぱい連れてきて、国でもつくる気なの!?ここ、ボクらの土地だよ!!」


 孤児たちを指さして言うリーダーに、ハウラプが笑って答えます。


「国を作りたいならもっとたくさん集めますよ。

 あなたが言ったのでしょう?半年以内におもしろい人間を連れてくるようにって。わたしにはどんな人間ならあなたの目にかなうかわかりませんから、良さそうな子たちを必死ひっしに集めて来ているんですよ。あー、たいへんたいへん」

「きい!」

「村ひとつのときは、喜んでいたじゃないですか」

「そうだけど!してやられるのは、くやしい!」


 どうやらハウラプに利用されたことに、気づいてしまったようです。噴火ふんかでも起こしそうなリーダーを、ハウラプがなだめます。


影響えいきょうが妖精の谷のなかだけですむいたずらでしたら、どんなものでもとめませんから。人間にいたずらするのが、いちばんおもしろいのでしょう?」

「むうう」

「かれらは遠くから来ましたから、きっと目あたらしいことも知っていると思いますよ?あなたたち、この土地からあまり遠くへは離れられないでしょう?」

「ぐうう」


 うなるリーダーがハウラプの方へ気をとられているあいだに、その背後へしのびよる影がありました。


「ただいたずらにおどろくだけ、遊びに振り回されるだけでなく、しかえしもしてくれると思いますよ?きっと、ただいたずらするだけより、楽しいと思います」

「(せーの)「「「えいっ」」」」

「うわっ!なになにっ!?」

「かかった」

「逃げろっ」

「きゃー」


 リーダーのうしろにしのびよった数人の孤児たちが、かけ声とともにリーダーへむけてかき集めた落ち葉をぶちまけました。とつぜん落ち葉におそわれたリーダーが、びっくりしてあたりを見回します。孤児たちは笑いながら、逃げ出しました。


「え?え?」

「やられましたね」


 身体じゅうに葉っぱをくっつけたリーダーに、ハウラプが笑って言います。


「ほら、ぼやぼやしていると、あなたの方がいたずらされますよ?」

「いたずら?人間が、ボクに?」

「ええ。あの子たちは、だまってやられるだけの負け犬ではありませんから」


 追いかけてやり返さなくて良いんですか?

 ハウラプに言われて、リーダーは、ぱっと身をひるがえしました。


「ボクにいたずらしようなんて、百年はやいよ!」

「わー、追ってきたー!」

「逃げろ逃げろー!」


 追うリーダーも、逃げる孤児たちも、楽しそうです。


「さて、続きを考えましょうか?」

「はい。……ありがとうございます」

「お礼を言われるようなことはしていませんよ」

「言いたかっただけです」


 残っていた孤児たちのかしら、チセと呼ばれる少年が、肩をすくめました。




「魔女ってやっぱり、すごいですね……」

「できないことも多いですけどね」


 森だったはずの場所に一日で建てられた家々を見て、チセがつぶやきます。

 ハウラプは苦笑くしょうして、首をふりました。


「とりあえず一年くらい暮らせるだけの食べものと生活に必要なものは、家のなかにつめました。畑や家畜かちくなどはまた数日後に持って来ますから、なにか足りないものに気づいたらそのときに教えてください」

「こんなにしてもらって、良いんですか?」

「こんなにしてあげるかわりに、あなたたちの一生を妖精にささげてもらいますから、安いものですよ。当然とうぜん権利けんりですから、こまったときはなんでも相談してくださいね」


 にこっと笑ったハウラプに、チセがあきれた顔を見せます。


「あなたって、本当に悪い魔女なんですか?」

「いや、自分で悪い魔女を名乗ったことはないですよ?」

「……大人って、馬鹿ですねぇ」

「そんなしみじみ言われてもこまります」


 ハウラプはほおをかいて、ある方向を指さしました。


「むこうに、泉と、もうひとつの村があります。この土地にある村はここもふくめて、ふたつだけです」

「ひとは出入りできない土地、でしたね」


 うなずいたハウラプが、やさしい目てチセを見つめます。


「泉の村には大人もいます。こまったら助けてくれるでしょう。ただ、むこうの村のひとたちには、かってにここに近づかないよう言っておきます。あなたたちが必要とするならば、あなたたちからかかわりを持ってください」

「つまり、かかわらなくても良い、と?」

「ええ。かかわらなければ、あらそいも起こらないでしょう?」


 ははっと、チセが笑い声をき出しました。


「あなたは、本当に……」


 言葉は途中とちゅうでとめて、ただ、笑います。


 それから、いけにえとしている王子さまやお姫さまのことも話し、ハウラプは孤児たちの村をあとにしました。


「ではハウラプさん、また」

「ええ、また」


 帰りぎわ、チセとかわしたあいさつにハウラプはふと、再会を約束するひとが増えたな、と、思いました。

 

 

 

つたないお話をお読みいただきありがとうございます


続きも読んでいただけるとうれしいです

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