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1月(1) 邂逅

大変お待たせしました。

 一月五日。


 莞爾は山の畑にいた。

 今日は仲買の八尾も付き添いに来ていた。


 年始の挨拶も終えた後だ。余計な話は後回しとばかりに早速畑にやってきたのだ。


 山の畑は平坦で広さもある。けれども日照量という点でわずかに劣る上に、気温の低下も著しい。幸い連日好天が続いており、トンネル栽培をしていることもあって、土中温度をある程度保つことができた。


 うねに被せた寒冷紗を剥がし、莞爾は小さく白い息を吐いた。覗き込む八尾も固唾を飲んだ。


 クリスが魔法をかけた部分のカルソッツ――玉ねぎはすでに収穫を待つばかりの状態に成長していた。


 天候が安定していたこともあり、それ以外の玉ねぎも出荷日には間に合いそうだ。


 莞爾はすぐにでも収穫できそうな玉ねぎをひと株抜き取った。やはり結球した玉ねぎがいくつもくっついているような状態で、商品としては三流品以下――出荷できそうもない。


 わざと分球させているのはカルソッツとして栽培するためだが、上に長く伸ばす予定が、球になってしまっている。これではカルソッツとしての利用はできない。


 莞爾はあっけらかんと言った。


「やっぱり無理ですよ、これじゃあ」

「なんだか大きいエシャレットみたいだね。味は?」


 八尾に尋ねられ、莞爾は分球した玉ねぎを両手で割り、外の皮を剥いて真っ白な身をむき出しにした。ひとつを八尾に渡し、自分も手に取ってかぶりついた。


 しゃくり、と音を立てて噛み砕いた。


 瑞々しさは新玉ねぎのそれだが、甘味は薄い。保存していた玉ねぎには劣るが、玉ねぎらしい辛みが後味に残った。


 しゃくしゃくとした食感にほんのりとした甘み。そして後を引く個性的な辛み。


「味は悪くないね。年末のときとはちょっと味が変わったけど」


 少なくとも生で食べるような味ではないような気がした。以前はまさに新玉ねぎの味だったのだ。八尾も様々な玉ねぎを食べてきたし、職業柄どのような味がどのような料理にマッチするのか、ある程度の判断はつく。


 彼の場合、とくにレストランなどに卸していることもあって、スープに使うかグリルに使うか、そういうところまである程度は予想がつく。


 もぐもぐと口を動かしながら黙っていた莞爾は、ごくりと飲み込んで首を傾げた。

 何かに似ているような気がするのだ。

 味は玉ねぎなのだが、まさに細胞を噛み砕いているような食感といい、ほんのりとした甘さに後味の辛み――何かを彷彿とさせた。


「うーん、ジャポネソースとかに使えそうな気がしないかい?」


 八尾の言葉に莞爾ははっと気づいた。

 この玉ねぎをすりおろして使用するとすれば、確かに良い味だと思った。


「そうか……何かに似ていると思ったら辛み大根ですよ」

「大根……ああ、言われてみれば確かに!」


 辛み大根ほど辛くもないが、傾向としては確かに似ていた。味は玉ねぎだったが。


「エシャロットとはまた違う味だね」

「うーん、クセがない味ですよね」


 エシャロットは西洋料理に使われることが多いのだが、実は中東原産の野菜だ。古くは十字軍遠征によってヨーロッパに伝わった。

 また、日本のエシャレットとは全くの別物である。エシャロットは玉ねぎの仲間で、エシャレットはらっきょうを軟白栽培したものだ。見た目が違うのですぐにわかる。


 日本ではよく混同されているが、全くの別物なので注意が必要だ。


「クリスちゃんが魔法を使ったんだって?」

「話した通りですよ。数はまあぎりぎり2000本確保できただけで」

「目玉ではあったけどね、そこはもう仕方ないだろうね。根回しはしておいたし、野菜で商売してるんだ。不作で赤字だった企画なんて片手じゃ足りないよ。まあ、そういう意味では商才がないのかもしれないねえ」


 莞爾は「すみません」と頭を下げた。きっと八尾が自分の代わりに頭を下げて回ったのだろう。八尾は苦笑しているが、申し訳なさが募った。


「どのみち獣害もあったんだし、別の使い道ができたかもしれないじゃないか」

「でも、これじゃあたぶんまた同じようにはできないでしょうね」


 莞爾は魔法特化型玉ねぎを抜き取った箇所の土を手に取った。

 根があった周辺がさらさらと砂状に近い状態になっており、周辺の土に支えられていただけというのがよくわかる。


「これは、驚いた」

「栽培方法が確立できれば別段ソースなりなんなり使い道があったかもしれないんですけど、収穫後の土がこれじゃあ……元の状態に戻すのにどれだけかかるか分かったもんじゃないでしょ。栄養素がないのか、微生物の類が消えたのか、そこもよくわからない状態ですし」

「いや、理論的なところはさっぱりでね。せいぜい窒素、リン酸、カリぐらいしかわかっちゃいないよ。僕は所詮卸だからね」


 口ではそう言いつつも、八尾とてこの道は長い。ある程度の勘定はついた。また土づくりからやり直すということは、それだけ経費が嵩むということでもある。

 形が悪い商品であれば加工食品として商品化することも考えたが、単価の高い素材を加工するのは気が引けた。ブランドであれば話題性もあったかもしれないが。


「魔法ってのも考え物ですよ……」

「そうだね……」


 現場を見たわけじゃない。けれど、八尾も土の様子を見ると驚き以上の思いが湧いてこない。

 八尾は気を取り直して言う。


「とにかく2000本はあるんだね。一応期間は二日にしてもらって、土日だけ被せる形にしたから。一日一店舗100本か。まあ単価上げて数を絞ってもらうしかないね」


 納品すれば、そこから先は八尾の仕事だ。莞爾には口を挟む余地がなかった。


「で、問題はこっちだね。どうする? 馴染みのシェフにでも持っていこうか?」

「いえ――」


 莞爾は盛大なため息をついて言った。


「お気持ちはありがたいんですけど、廃棄処分にしますよ。売り物になりませんし、一回限りでもらってくれるところなんてないでしょう?」

「まあ、そうなるね。ただ同然で引き取ってもらうこともできないことはないけど……いや、やめておこう」


 継続性のない商品を引き取ってもらったところで、サンプルにすらならない。おまけに使いにくい形状だ。嫌がられるだけである。


 勿体ないという理由で市場に出したところで元が取れなきゃ意味がない。安売りしたいわけじゃないのだ。


 八尾は莞爾と車に戻りながら言う。


「この調子じゃ、来年もやろうってことにはならないだろうね」

「まあ、一回目からコケてればそうもなるでしょう。俺の責任です」

「それはもう言いっこなしだよ」


 莞爾は責任を感じていたが、そもそもカルソッツという日本にはない特産品を作らないかと持ち掛けたのは八尾の方だった。自分から持ち掛けた以上、思い通りにならないことはある程度予想していたし、これしきのことで信頼を失うような商売もしていない。


「春からは例年通りでいけるかい?」

「山菜ですか? そっちは手入れもきっちりやってるんで、量も変わらないと思いますけど……」


 莞爾は山を持っている。春にはそこで採れた山菜が大幅な黒字をたたき出すわけだ。彼が育てた野菜よりもよほど売れ行きもいい。


 けれど、一人では一日当たりの収穫量も限られるし、毎年伊東夫妻に手伝ってもらったり、伝手をつかってアルバイトを雇ったりしていた。


 この山菜に関しては、春の味覚ということもあって高値で取引されている。管理栽培された山菜よりも高い値段で納品しているが、山林の手入れをしているだけで完全な天然もののため、八尾も納得して各店に卸している。


 もっとも八尾は山菜については一家言持っている。曰く「山菜は施設栽培すればただの野菜」である。莞爾も意味するところは理解できるが、安定供給できれば収入も安定するのだから、別段どっちでもいいという感覚である。


「佐伯くん、そろそろキノコに手を出してもいいと思うんだよ」

「あー、気持ちはわかりますけど、キノコは無理ですよ。種類が豊富過ぎて、天然ものは間違えていたときが怖すぎますから」


 キノコはまさに旬の味覚といったイメージがある。とはいえ、現代では基本的に施設栽培の産物であり、そのおかげで安心安全なキノコが食べられる。確かに天然もののキノコは美味しいのだが、形は不揃いだし、安定供給もできない。


 旬の時期だけでも少数でいいから採れないか、と考える八尾の気持ちもわかるが、莞爾もそこまで手は回らないし、何より詳しくないのだ。見た目はほとんど同じなのに実は毒キノコでしたとか、普通に食べられるけどお酒と一緒に食べたら中毒症状が起きましたとか、そういうものが大量にある。


 素人は手を出してはいけない。


 軽トラに乗り込んだところで、莞爾は話を変えた。


「八尾さんに話しとかなきゃいけないことがあるんですよ」


 首を傾げる八尾に莞爾は言う。


「今度、三山村の三家が集まって法人化しようって話が出てまして、それの販路の件でお話したくて」

「法人化……また思い切ったね」

「まだ決まってないですよ。一応そういう話があるってだけですから。俺としては乗ってもいいかなって前向きに考えてるんですけど、農協に卸しても採算取れませんし、八尾さんに販路を担ってもらうのが一番わかりやすいでしょう?」

「販路、かぁ」


 動き出した軽トラの中で、八尾はしばらく考え込んでいた。ややあって口を開く。


「いやね、僕も仕事柄農業生産法人を立ち上げた若手農家ってのを何人か知っているよ。成功例の何倍も失敗例を知ってる。僕が言えるのは、主力となる製品があるかどうか……まあ、この一点に限られるね」


 農業に限った話ではない。商売をする上で自社だけが持っている強みというのは必要だ。生産力であったり、技術力であったり、低価格であったり、そこは会社によっても様々だ。


「一つの商品に絞ると、それがダメになったときに倒産することもしばしばだけど、起ち上げ当初は主力がないとダメだね。リスクを分散するのは会社が大きくなってからで十分だよ。販路、という意味でも、主力があるかどうかで変わってくるからね」


 土地はどれだけあるのか、と八尾は問う。莞爾はハンドルを握ったまま答えた。


「ざっと4町(約4ha)ですよ」

「それだけあれば十分じゃないかい? ハウス立てて花卉栽培でもするかい? ハウス建てるだけの広さがあれば、だけどね」


 八尾も三山村というところで気づいているようだった。莞爾も頷く。


「まとまった広さがあればいいんですけどね……」彼は小さくため息をついて「使いにくい土地ってことは、そこに合致するとびきりの野菜もあると思うんですよ」


「早々見つからないだろうね」


 八尾は冷静な意見を述べた。莞爾も主力となり得る品目がすぐに見つかるとは思っていない。それに、見つけるものではなく作るものだと自負していた。


「とりあえず、そういう話がある、ということで。これからどうしていくかはまた話し合わなきゃいけませんし……八尾さん」

「なんだい?」


 莞爾は八尾も構成要員に入れられないだろうか、と考えたが、すぐにその考えを放り捨てた。現状ですら多忙である八尾のことである。おいそれと仕事を頼むのは気が引けた。


「いえ。どうなるかはさておき、今後ともよろしくお願いしますよ」


 八尾は快活に笑って言った。


「そりゃあ野菜次第だよ」


 莞爾は苦笑した。



 ***



 八尾が帰った後、莞爾は段々畑に向かった。クリスも一緒だ。


「で、この青いのはなんだ?」


 その畑は莞爾の持つ畑の中でも比較的傾斜が緩い。ほとんど平坦だと言って差し支えないが、やはりわずかに傾斜がある。

 もとはと言えば秋撒きの大根とキクイモの畑である。もっとも、大根は播いたあとに台風で流されてしまった。


 そこは現在、数列のうねが作られているが、間隔は狭い上に何も植え付けられてない。一か所だけ、角の方にブルーシートが被せてある小山が出来上がっている。


「堆肥だよ。被せものしてるだけ」


 莞爾はこの際だと土壌改善に乗り出したのである。キクイモにごっそり養分を抜かれたというのも理由だ。


 ブルーシートを取り払うと、焦げ茶色の土が露わになった。触ってみるとふかふかとしていて手触りもいい。


 クリスも莞爾の真似をして手に取ってみる。


「ふむ。柔らかい土だな」

「そうなるように作ったからな」


 秋に取り掛かった堆肥である。完全には未だ分解されておらず、ところどころ腐葉土の木質が残っている。


「なんだか少し温かい気がするのだが」

「そりゃそうさ。微生物がたくさんいて、活動してるからな」


 発酵させるとは、広義では腐らせることだ。

 有機質の残っている堆肥を畑に使えば、じっくりゆっくりと分解されていくので、長期的な栄養源として活用できる。


 莞爾個人としては別段有機栽培にこだわるつもりはない。


 理由はいくつもあるが、端的に言って難しいからである。彼の父親もついぞ有機農業には手を出さなかった。


 適宜農薬や化学肥料を用い、効率的な農業をしている。もちろん、自分が食べられないものを作る気はないし、相応に安全性の確立されたものしか使っていない。


 だが、世間一般に染み込んだレッテルというものは中々取り払うことができないものだ。


 実のところ、日本の食品に対する安全基準はかなり高い。それは加工食品であってもそうだ。もちろん、その基準そのものが国の作ったものであるからと懐疑的にアナーキズムを発揮する輩がいないわけではないのだが、そんなことを言い出したら外食なんてできっこないのである。


「中身は腐葉土と牛糞。あと米ぬかともみ殻も入ってるかな」

「おお、ヌカ漬けのヌカだな?」

「そうそう、それだよ」


 嗣郎からもアドバイスをもらい、思考錯誤を繰り返している。父親の残したノートには、栽培状況や天候については馬鹿みたいに細かい情報が書かれているが、有機農法のデータではないので参考にならない部分があった。


「だいぶ匂いもなくなってきたな」

「むしろいい匂いがするぞ?」


 クリスは手に取った堆肥を鼻に近づけた。

 発酵の中途半端な堆肥や、人工的に発酵を加速させた堆肥は、匂いが違う。

 自然にじっくりと発酵させた堆肥はむしろいい匂いがする。まあ、慣れていないと多少は臭いのだが、クリスも最近になって牛糞などの匂いを知ったので「いい匂い」だと思うようだ。


 莞爾は軽トラの荷台から一輪車を下ろして戻った。


「さて、人海戦術なんてできるほど人材がいないのはわかるな」

「うむ。この堆肥を畑に撒くのだな?」

「その通り。まあ、少しでも効率的にやろうってことで……はい、これ」


 彼から手渡されたのはレーキだ。

 レーキは整地や土均しに使われる。グラウンドで使うトンボの先端が鍬状になっているものだ。


 莞爾はうねの方に彼女を連れて行く。


「間隔が狭いところ、ここに堆肥を落としていくから、クリスはその堆肥を――」うねの終わりの方を指さして「――あっちまで均等に伸ばして行ってくれ。左右の土が混ざってもいいから」


「ふむ。それは別に構わないのだが、確か以前はコウウンキとやらを使っていなかったか?」

「化成肥料なら問題ないんだが……ちょっとデリケートなんだよ」

「でりけいと?」

「壊れたら嫌だから使わないんだ」

「なるほど」


 マルチな耕耘機にもできることとできないことがある。もっと高性能で大型の耕耘機やトラクターが欲しいと思うことはあるが、土地面積を考えると二の足を踏んでしまう。


 二人は早速作業に取り掛かった。

 莞爾はショベルで一輪車に堆肥を乗せ、キクイモの植わっていた畑に堆肥を持っていく。堆肥を下ろしたところでクリスがレーキを使って丁寧に堆肥を伸ばす。その繰り返しである。


 急いでするとすぐに疲れてしまうので、莞爾は適当なペースを維持したままゆっくりと作業を進めていく。だが、クリスはまだまだ若い上に体力だけは目覚ましいものがあるので、「次はまだか!」と莞爾を急かした。


 二時間も経たずに片方の畑を終わらせ、二割ほどの堆肥が残った。もともと大根を播種した方は何も栽培していないので、少なくていい。


 全ての作業が終わったのはちょうど午後三時ごろだった。


 莞爾は額の汗を首にかけたタオルで拭った。クリスはまだまだ元気そうだったが、さすがに少し疲れているような様子が見えた。


 そんな折である。

 ふと空を見上げたクリスが莞爾に尋ねた。


「……カンジ殿。あれはなんだ?」


 彼女が指さした上空には凧があった。昔ながらの凧ではなく、いかにも現代風な凧だ。

 しかし遠目で見てもそれが手作りであることはすぐにわかった。


「ああ、ありゃあ凧だ。風の力で飛んでる。紐が伸びてるだろ。あれで操ってるんだ」

「ほおー、あんなものまであるのか……ヒコウキと似たようなものか?」

「いや、全然違うけど、原理的にはまあ似てるところもあるんじゃねえの?」


 莞爾は流体力学にはとんと疎かった。

 クリスは言う。


「では、あれを操っているものがあの紐の先にいる、というわけだな?」

「まあ、そうなるな……って、今どき凧で遊ぶような子供がいたっけ?」


 記憶を探るが三山村にそのような子供はいない。もしかしたら由井家で菜摘が祖父母と一緒に遊んでいるのかとも思ったが、それにしてはずいぶんとハイカラな凧だった。


「方角的には……嗣郎さん家だしなあ」


 もしや息子たちが里帰りでもしているのだろうか。


 そうこうしているうちに、風が止んでしまったのか、風向きが変わったのか、凧が高度を下げ始めた。ぴんと張った紐を見る限りでは、必死に引っ張っているようにも見えたが、間に合わないだろう。


 凧は莞爾たちの目の前に音を立てて落ちた。


「危ねえなあ。あー、骨が折れてるし」


 手に取ってみると確かに手作りの凧で、骨子はもろいプラスチックを使っている。落下の衝撃で何か所か折れてしまっていた。


「ふむ。これが凧か。近くで見ると案外大きいのだな」


 クリスは興味深そうに凧を様々な角度から見つめていた。


 しばらくして、ひとりの若人が莞爾たちの前に現れた。

 段々畑の斜面を息を切らせて上がってきた少年は、挨拶も忘れて凧を見つめるクリスに視線を奪われた。隣の莞爾など目に入っちゃいない。


 伊東平太。嗣郎の長男の息子である。莞爾からすると従兄弟の息子――従兄甥だ。


 莞爾は数年ぶりにあったが、すぐに彼が伊東平太だと気づいた。


「よお、久しぶり」と手を挙げたものの、平太は首を傾げるクリスを見つめたまま、顔を真っ赤にして硬直している。


 熱に浮かされた少年は時として馬鹿になる。


「あっ、あのっ!」


 クリスが顔をあげたところで平太は叫んだ。


「お、おれと付き合ってください!」


 莞爾は盛大にため息をついた。


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