壱 夜の時は長い
縁側に座って煙管をそっとゆっくり喫う。
煙管を口から離すと他の部屋からは、騒がしい声が聞こえてきた。
時刻は夜の虎の刻。
「今日も騒がしい奴らだな。」
池に写る月を見ながら言った。
少し上を見れば月が自分を見てほしいと言っているかの様に美しく輝いている
煙管を煙草盆の灰吹きのふちを軽く叩き灰を落とすと、奥の座敷から青鷺火が入ってきた。
青鷺火は白狐の隣に座りいつも騒がしくしてすみません。と言いながら酒の入ってる通い徳利を口に運んだ。
「お前は、あっちに混ざらないのか」
「今日は混ざりません。あっちの人と飲むと明日が大変ですから」
青鷺火は、苦笑いをしてうなじをかきながら答えた。そんな青鷺火を横目で見ながらく刻まれた繊維状の刻みたばこを適当な大きさに丸めた。
「はぁ、静かな夜が恋しい...」
「ははっでもうるさい位がちょうど良いじゃないですか」
笑って入れるお前が羨ましいよ。と白狐は遠い目をしていった。
青鷺火は少し笑ってから白狐さんのお酒も持ってきますね。と言って奥の襖を開けて部屋を出た
首の火皿に丸めたたばこを詰め、煙草盆の炭火に雁首を近づけて火を点けて、また煙管をそっとゆっくり喫った。
襖が開く音が聞こえ白狐は、戻ってきたのかと思い後ろを振り向くと違う部屋に居たであろう、妖怪たちがぞろぞろと入ってきた。
「おい、青鷺火...」
「すみません」
まったく...。と額を抑えながら池のある方を向き言った。煙管を口から離し軽く煙草盆の灰吹きのふちに叩いた。音を立てた瞬間に鬼童丸が声を荒げて
「よーし、今日は朝まで飲むぞ!!」
「「おぉー!!」」
鬼童丸の掛け声で周りの妖怪も掛け声と共に声を上げて酒の入った通い徳利を飲み始めた。そんな様子を横目で見ながらため息をつき、静かに煙管を置いた。
「ここ、俺の家だよな...」
「白狐さんの家です、絶対」
神社の主である白狐が縁側で青鷺火に問い、青鷺火は少しふざけた表情で答えた。
「...はぁ」
「ため息ばかりついていると幸せが逃げるらしいぞ」
「原因はお前らだからな...」
白狐の後ろから頭を出して酒を飲みながら餓鬼は言った。青鷺火は苦笑いしながら白狐の肩に手を置いた。
鯉が跳ねる。
池は波紋を浮かべながら月を写した。
周りの草木は、風に揺られてざわざわと音をたてている。
時刻は、未の刻。
太陽が顔を出し始める時間。




