最高の女性を下さい! その一
キミは思い切ってこう言ってみた。「じゃあ、最高の彼女を下さい!」
「はいはい。でも、私は別に万能じゃないからな。お前に試練を与えて、それをクリアーすると願いが叶うというシステムだ。まあ、無料でいいが、願いが叶うまでは食事と飲み物、宿代はもらうぞ! 水と餌を食べなきゃ、生きていけないからな!」
シレンさんは実態化して、キミにも他の人にもはっきり見えるようになった。
その姿はキミと同じ年くらいで、髪形はショートヘア―、顔も可愛くあどけない感じだ。おっぱいは男性人気の高いCカップ、腰も細く、お尻もそれなり、彼女にしたいくらいの容姿だった。しかし、キミには不安の方が大きく感じられる。
「おお! シレンさんが最高の彼女という事ですね? とりあえず、国籍と財産を得てから、また来てください! 五年後くらいに!」
キミはそそくさと逃げようとする。シレンさんはキミの服を引っ張り、逃げられないようにする。
「何か勘違いしているようだな。私は、シルフという精霊だ。ただ、自分の記憶が無いのだ。いろいろな知識はあるのに、自分に関する知識だけ無くなっている。
願いを叶えれば、記憶が戻るかもしれないと思い、こうして無能と思える人間を助けている。私は本来、食わなくても死なないが、女性として生まれた以上、美味しい物を食べてみたいじゃないか!
ついでに、記憶が戻るかもしれない。それに、実体化していた方が、おっさん達からいろいろ美味い物がもらえるからな!」
「なんか、ひもじい人ですね。オレも親と暮らしているから、そんなにほいほいと、人を家に住まわせられないんですけど……」
「そこは一人暮らしが常識だろ! いきなり女性が家に押しかけたら、彼女もできないどころか、逆に親が勘違いして、私と結婚させられちゃうかもしれないじゃないか。こんな可愛いお嬢さんは、今後一生見付かるか分からないとか言われて……」
「その前に、警察に捕まるかもしれませんけどね。オレの言い方次第で……」
「お前、助けてやろうという私に、そんな酷い事をするのか? じゃあ、こうしよう。格安の家庭教師が来てくれたんだとでも言って、家に招き入れるというものだ。お前の親も、なんて熱心な先生だ、と泣いて喜ぶぞ!」
「逆に、値段が気になって泣かれるかもしれませんよ。無料なんて信じないでしょうじ、見た目が同い年だから、勉強を教えられるか、とか不安になるかも?」
「じゃあ、バイト代は普通にもらって、その上で願いを叶えるというのはどうだろう? 勉強はお前よりはできるはずだし、それなら問題ないだろ?」
「何か出来る教科あるんですか? 数学と英語なら教えて欲しいんですけど……」
シレンさんはぺらぺらとキミの教科書を見て言う。
「うーん、分からん! 掃除や家事なら手伝えると思うんだけど……」
「じゃあ、メイドですね。一応相談はしときますけど、給料は低いと思いますよ。一日五百円とか……」
「労働基準法違法だろ! せめて時給八百円にしなさいよ!」
「それだと雇わないかも、日本だし……」
「私がお母様と交渉します!」
「で、願いはどうすればいいですか? 自力で願いを叶えるんですよね?」
「お前、幼馴染とか、同級生いないの? だいたいその辺くらいが、最高の彼女の部類だよ。信頼できるし、性格もお互い良く知ってるし、顔もそこそこ可愛いだろ」
「すごい適当ですね……」
「まあ、学校に行けば見付かるって! まずは、家に帰ってうまいものでも食って考えよう! プリンとかケーキとかさ!」
「何カ月かかるんですか? それにまだ学校の授業中ですよ」
キミがそう言うと、シレンさんはポカンとする。大丈夫なのか、この子は……。