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  隣に住んでる幼馴染の火野紅葉 その四

 キミと紅葉は、シレンさんの手助けの下、何とか数回デートを繰り返し、気が付けば一年ほどが経過していた。キミは風呂に入っていたら、ふっとあることに気付いた。


「あー、キミ、紅葉に告白もしてねえ! いまだに彼氏彼女の関係になってねえ!」


そう言って、シレンさんの下に駆け寄る。


「落ち着け、まず服を着ろ! もう、ここまで来たら、向こうは彼氏彼女の関係だと思っていてもおかしくはない。まあ、ちょっと今さらという気もするが、告白タイムと行こう!」


キミとシレンさんで告白のシュチュエーションを考え始める。とりあえず、キミは落ち着いて服を着ることにした。もうすでに、今週のデートの予定は出来ている。


キミとシレンさんはソファーに座り、テレビを見ながら、話し始める。テレビの番組は、事件の謎を追求するドキュメンタリーシリーズで、全然告白と関係ない物だ。


「普通に一緒に遊んでいて気が付かなかったけど、あいつもやっぱり告白とか待っていたのかな? いつ言い出すんだろうと、いつも気張ってたのかな?」


「または本当に幼馴染の関係で、便利な僕として利用していたのかもな。私が心理学研究をさらに追求できるように、お前を利用しているのと同じく……」


シレンさんはテレビの事件の真相が気になっていたので、でたらめな事を言う。


「な! キミはいつも本気なんだぞ! 中途半端なアドバイスは止めてくれ!」


「なんだかんだ言って、うまくいってるじゃないか。この私の能力がすごいということが証明されているにすぎないな。その修業の場を邪魔しないでくれ!」


シレンさんはCMになり、キミの話を聞く。


CMでは、メアリー牧場のCMが連続で流されており、ビキニの水着を着た女性が乗馬をしていたり、幼い感じの可愛い女の子が満面の笑顔でヤギと戯れていたり、スーツ姿の女性が突然に脱ぎ始め、牛の姿のコスプレレオタードに着替えたり、女子高生と思われる子達がテレビを見ていると、怪しい羊の格好をした男達が、現実に出て来て女子高生を追い回すなどのCMをしていた。


ちょっと、気分がCMの方にいってしまったが、キミは気を取り直して、シレンさんと話し出す。


「まあ、願いを叶えるといっても、心理学程度じゃ、恋人や妻をゲットするくらいが関の山だよな。お金持ちになれるわけでも、地位を獲得できるわけでもないし……。


ましてや、不老不死や世界最高の頭脳を手に入れられるわけでもない。全然万能じゃないよな」


キミの言葉に、シレンさんは答えてくれる。


「まあ、万能じゃない事は認めるよ。でも、お金や地位を得る事なら、心理学でも可能だと言える。時間や努力は必要だけど、全然手の届かない物じゃないよ。


不老不死や世界最高の頭脳は無理だけど、そういう研究を最大限に発揮できるような気持ちの持ち方ならできる。私はそういう研究の末にできたのではないかと、アニメを見ながら想い出した」


「それは記憶じゃなくて、ただの妄想ですね」


「いや、あながち妄想とも言えないぞ。ある数学者なんてストリップショーを見ながら、難しい公式を思い付いたっていうしな。


こういう無駄かもしれない時間が、逆にすごい事を生み出すんだよ。娯楽は大切だよ」


「それは一つの方法でしょうけど、すごい人にしか説得力が出ませんよね。でも、シレンさんは年を取らないみたいだし、その身体を研究すれば、あるいは不老不死も可能かも……」


キミはそう言って、シレンさんをちら見する。


「エロい眼で私を見るな!」


キミはシレンさんに殴られた。


「冗談ですよ、冗談!」


「それに言っておくが、私が叶えられる願いは一つだけだ。人間は貪欲過ぎて、面倒見切れないのでな。


自分でそうルールを決めた。

それを変えるつもりはない!」


「分かってますよ。まあ、シレンさんの指導でいろいろテクニックは分かりましたけど……」


「ふん、心理学など、所詮は経験と記録の蓄積により生まれたただの法則に過ぎない。絶対にそうなるというわけじゃないし、失敗の方が多いだろう。


それでも、人間が勇気を出すためには、こういう成功する確率を高めなければならないんだ。


以前は占いなどがもてはやされたが、根拠のない占いと根拠のある心理学なら、私は科学者として心理学を取る。


それが今の私を形作ったようだ。こんなモノでも誰かの幸せになるのなら、私の努力が無駄ではないんだろう」


「じゃあ、オレの幸福のために力を貸してください」


「ふん、ヤローの幸福など嬉しくもない。紅葉が本当にお前の事を好きなら、協力してやるよ。今度のデートで告白して見せろ!」


「う、頑張ります」


CMが終わり、シレンさんは特訓と言って食い入るように、テレビを見ている。テレビが見終わったのを確認し、キミは紅葉に告白する決意を示す。


すると、気分が良いのか、シレンさんのアドバイスが始まった。


「じゃあ、まずは告白する場所だ。女性という者は、ムードにも気を使う。


食事場所はどこでも良いと言いながら、いざ連れて行ってみると不平を言い、別の場所に連れて行こうとするような迷惑な存在だからな。


紅葉はそんな感じでもないだろうが、大切な日には、やはり気を使って欲しいものだろう」


「おお! シレンさんの中にも、わずかばかりの女性としての心はあったんですね」


「バカ、そんなの決まっているだろ! 私は乙女の中の乙女だぞ!」


キミはシレンさんに殴られた。


「私はキュートで綺麗な物に目のない女の子なんだもん!」


シレンさんはそう言って、ブリッ子ポーズをする。キミはシレンさんを可愛いと思いつつも、ツッコミをする。


「うわっ、キモ! 似合いませんて、シレンさんにぶりっ子な真似なんて……」


「うん、自分でもやって、ちょっと引いた」


シレンさんのアドバイスにより、キミは紅葉に電話をし、デートで食べたい物を訊くことにする。


「電話で場所を訊くんですか?」


「ああ、事前に場所を訊けば、何となく大切な用事があるって分かるだろ。それに告白できるちょっと高い店に予約もできて、一石二鳥だしな。


この方法なら、紅葉の好きな物を選ばせつつ、お前の目的に合う場所を決定できる。頑張れ!」


シレンさんはカンぺを渡し、先に自分の部屋に戻って行く。もうすでに、シレンさんの個室と化していた。


キミは紅葉に電話を掛ける。母親か、父親が出るかと思ったが、紅葉が出て安心する。


「はーい、透、こんな夜遅くにどうした?」


「あ、ごめん。迷惑だったか?」


「いや、別に……。テレビを見てたから、暇だよ。見たいテレビも終わったし……。もうすぐ寝るけど……」


「そうか、お前、今度のデートで食事は何が食べたい?」


「え? 何でもいいよ」


「じゃあ、和食とイタリア料理、中華料理だったらどれが良いかな?」


「うーん、その中なら和食かな……。お刺身とか、魚介類が食べたいかな」


「分かった。ちょっと、良い所を予約しとくからな。楽しみにしてろ」


「え? じゃあ、服はどんなのが良いかな?」


「ちょっと良いの着て来いよ。三千円くらいなら、奢ってやれるから……」


「三千円か……。じゃあ、あの服かな。分かったよ、ありがとう。お休み……」


「お休み」


キミは電話を済ませた。それを一部始終、シレンさんは自分の部屋からキミ達の会話を観察していたようだ。


「どうやらうまくいったようだな。お金の方は大丈夫か? 今回のデートは一万円越えする可能性があるぞ。お前、紅葉、私、これだけで九千円だ! 更に他の場所となると……」


「いや、告白するデートで、シレンさんがいてどうするんですか? 今回はお留守番していてくださいよ。さすがに食事は二人きりにしますから」


キミがそう言うと、シレンさんはがっかりとした表情をする。ちょっと胸にぐさりと来る表情だった。女の子のあの顔は、男としては辛い。中身が可愛い女子高生じゃないとしても……。


「そんな、私は寿司やお刺身が食べれると期待していたのに……。私のアドバイスのおかげで、ここまで来たんじゃないのか? 


その私をないがしろにするなんて、これはバッドエンドブラフだぞ! お前だけ事故に遭って、死んじゃうとかの死亡ブラフだってあり得るんだ。どうする? マジ死ぬかもよ……」


シレンさんは恋する乙女の眼で、物騒な事を言う。どうやって、死亡ブラフにするんだ?


「分かりましたよ。じゃあ、食事中は別の席で、オレ達の様子を見ていてください。必要になったら、電話しますんで」


「苦しゅうない。よきにはからえ」


キミはお金を稼ぐため、少しバイトすることにした。こうして、食事代とプレゼント代を稼ぐのだ。とほほ……。


キミは先に眠ることにし、シレンさんは今後のデートプランについて考え始める。なんだかんだ言って、シレンさんはキミのためにいろいろしてくれるのだ。


キミはシレンさんの背中を見て感謝をする。キミはシレンさんを女の子としては見れないけど、友達としての愛情を感じていた。


(さっきの透の電話はうまくいったようだな。


女性が何でもいいと言った場合のほとんどが、何を選んだらいいか分からないと解釈すべきだ。そのため、あなたが勝手に店や料理を決めると、気分によって怒り出します。


だから、女性が何でもいいと言った場合の対処法は、三択問題にして相手に一つを選ばせるというものだ。女性に選ばせることで、勝手に店や料理を決めた、と気分を害する事を防いでいるのだ。


女性は特に高い店に行く場合は、自分で場所や料理を決めたがる傾向があるからな。紅葉はそういうのないだろうけど、折角の告白だし、思い出に残る場所が良いだろう。


 さて、紅葉に渡すプレゼントを決めないとな。ぶっちゃけ、男性なら彼女からもらった物なら何でも喜ぶだろうが、男性が女性にプレゼントする場合は、かなり難しい。


女性が何度も同じ店を行ったり来たりして、欲しい物が明確でない場合以外は、サプライズは危険すぎる。


どんな高級な物でも、形や実用性、値段などがバッチリ合わないと、女性は不満を言う可能性があるからな。


だから、サプライズプレゼントは、彼女が気に入って本当に買うという時に、こっそりと支払いを済ませておくからいがベストなんだ。


女性は自分が選んだ物じゃないと、気に入らないからな。表面上は喜んでいても……)


こうして、キミはシレンさんのアドバイスを聞いて、紅葉とデートをする。紅葉にプレゼントを買ってあげ、ようやく問題の料理店に二人で入る。


キミと紅葉は個室の予約席に隣り合って座る。シレンさんは一端キミ達と別れてから、店に入って来た。紅葉はキミの選んだ店を気に入ったようで、機嫌が良かった。


キミはシレンさんに言われた方法を取り、紅葉がキミを好きかどうかの確認をする。あまりあてにはするなと言われた方法だが、やはり試してみたくなるのが人間だ。


シレンさんの教えてくれた相手が自分の事を好きかどうか確認する方法はこうだ。相手の眼を見る事と、相手の距離でテストするというものだ。


 まず、相手の眼を見る方法は、相手が普通に自分の方を見た時に、黒眼が大きくなれば好きだという事らしい。


ただし、相手が怒ってる場合も瞳孔が大きくなるようなので注意しましょう。キミが紅葉を近くで見ると、キミの気のせいかもしれないが、紅葉の瞳孔も大きくなった。


 そして、相手の距離でテストする方法はさっき試してみた。二人で歩いてる時に、キミは紅葉との距離をワザと離して反応を見ていた。


紅葉はキミとの距離を保とうと、キミに近づいた。この反応が、キミに告白する勇気を与えてくれた。この方法も付き合い始めや相手の性格、状況によって異なるため、参考程度にしましょう。

 

 キミは紅葉の反応から、告白しようという気になる。へたれなキミがついに、女の子に告白する。


しかも、相手はキミの好く知ってる紅葉だ。キミは手に汗をかいていた。緊張して、食事の味も分からない。

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