鎖で繋がった見えない糸
初めて書いたので自信がありません。
少し下ネタが入っています。
少女はすごく不思議な人だった。
ある桜の舞う入学式、俺は新入部員を入れようと入学したての
整えられて着慣れない様子の新入生に声をかけていた。
新入生に声をかけるのは簡単なことじゃない。
これからの生活に期待と不安でぎこちない表情をしている。
正直、声をかけたいと思えない。
「弓道部、たのしいですよー。」
通り過ぎる新入生はやっぱりぎこちない。
その中で一人凛としている子がいた。
桜がふぶいていてどこかの絵画なんじゃ、と疑いたくなるくらい美しかった。
顔も体格も別格というより平凡なのにどこかひきつけられた。
数日後、部室で少女を見かけた。
その時も入学式と同じように凛としていた。
どうやら少女は弓道部入部希望者のようだった。
あの時は気づいていなかったけど
少女は中学一年生並みに身長が低かった。
そして日差しで照らされている白く透き通った肌。
袴が似合いそうだった。
実際、似合っていた。髪も黒くて長い。
振袖を着せれば日本人形といった感じだった。
今年弓道部に入ってくれた新入部員は17人。
例年にも増す大人数だったようで俺は部長や顧問に褒められた。
ほとんどが初心者で経験者は二名ほど。
少女も初心者だった。
入ったばかりの新入生はおどおどしている。
きっと上下関係におびえているのだろう。
皆が青ざめた顔をしている中少女はやはり凛としていた。
月日は流れて青葉が揺れてる夏。
俺は同じ弓道部の同級生から告白された。
自慢ではあるが俺は顔立ちがいいらしくよく告白される。
その時別に付き合っている人もいなければ
好きな人もいなかった。気になってる人はいたけど。
断る理由もなかった俺は付き合うことにした。
彼女は記念日とかそういうのを大切にする人で
記念日になれば画像を加工したものをSMS上に載せていた。
まさに女子高生らしい人で、デートのときはかわいい服に
ナチュナルメイクをしていた。
俺は彼女の機嫌を伺いながら彼女の望むセリフを吐いた。
彼女を見るたび、少女には好きな人がいるのだろうか、
記念日を大切にするのだろうか、私服はメイクはするのか
気になった。俺は少女について何も知らなかった。
何も知らないまま時は流れ一年が過ぎた。
俺はまだ彼女と付き合っている。
蝉が鳴り始める7月、俺は彼女と夏祭りに行った。
彼女は黒と紫の派手な浴衣を着ていた。
少女ならどんな浴衣をきるだろう。
帰り際彼女は俺の裾を握り
「帰りたくない……」
と目にうっすらと涙を浮かべながら言ってきた。
俺にはどうすることもできず頷くことしかできなかった。仕方がなく家に入れた。
彼女は俺の部屋に入るなりいきなり口づけをしてきた。
「もう受験だってあるし……この際だからナオのがほしい……」
彼女はうつむきながら恥ずかしそうに言っていたけれど目は本気で笑い事なんかじゃなかった。
俺は驚き立ち尽くしたままただ呆然としていた。
そこからは記憶がなく気がついた時には自分も彼女も裸で寝ていた。布団にこびりついた赤いシミをみて
あぁ、と思った。
それからは彼女はなにかの自信に満ち溢れていた。
引退の大会前のある日俺は少女に呼ばれた。
少女が入学してきてから初めてのことだった。
少女は
「今までありがとうございました。大会頑張ってください!」
とフェルトに弓が縫い付けられたお守りと学業成就のお守りをもらった。
口もまともに聞いたことのない俺にくれるとは思ってもいなかった。少女はこんな趣味を持っているのか、
お守りは綺麗で多彩なものだった。
大会も関東大会までは行かず、そのまま引退し受験がきた。合格発表の時ずっと少女からもらったお守りを握りしめていた。結果は合格。嬉しかった。
受験が終わってからまた彼女と寝た。1月中旬のことだった。それからはあまり連絡を取っていない。
そして今日は卒業式。梅の花が咲き誇っている。
不意に声をかけられた。
少女であってほしいと願ったが相手は彼女だった。
「私ね、最近生理がこないの」
何が起こっているのか理解が出来ず沈黙する俺に話し続ける彼女
「それでね、試しに調べてみたの…ゴムつけてたしそんなことはないと思ったんだけど……」
差し出された彼女の手には赤い線のある検査機があった。
「病院には行ったのか」
出てきた言葉はこれでこれが精一杯だった。
「病院にも行ってないし親にも行ってない。せっかくナオとできた子供だから一緒に大切にしていきたい……」
「親に話してからではないと一緒にはなれないよ。」
彼女の顔は涙ぐんでた顔から少し怒りの混じった顔になっていた。黙ったまま頷き
「親に話すね。いきなりごめん。また連絡する。」
と言ってどこかへ行ってしまった。
俺の人生はこれからどうなるんだろうと迷っている中また声をかけられた。次は少女だった。
「先輩……突然なんですけど今まで好きでした。」
あまりにも突然すぎる…どうして今日はこんなに悩む日なのか……頭をかきむしった。
「だけど先輩には彼女さんがいます。失礼ながらさっき話しているところを聞いてしまいました。でも気持ちだけでも伝えたかったんです。」
聞かれていたのか…少しの絶望感と聞かれていたのが少女ということでの少し安堵が混じった微妙な気持ちだった。
「ありがとう。」
それだけを言い残して俺は立ち去った。
居たくなかった。あの場に。息苦しかった。
少女に告白されてから気づく。俺は少女に恋をしていたのだと。
今からなら少女を連れ出して逃げられるだろうか。
そんなことを考えても無駄だ。俺には彼女がいる。
少女を残してここを去らねばならない。
俺は下を向きながら歩き出した。