話 (1)
「じゃあ、俺は部活行くから!」
また明日なー!
そう笑って手を振った順平に、手を振り返して廊下を急ぐ。
その日に日に酷くなっていく嫌な「何か」は確かに今日もあって、どうしようもなく気分が悪かった。
___覚醒が、近い。
頭に残ったそのワードを口先で呟いて、俯いて唇を噛んだ。なんて様だ。どうして俺がこんなことに巻き込まれる必要がある?
ただただ訳が解らない。
どうしてこんなことに巻き込まれているのか、そして
___________どうして白羽波琉が彼奴と居るのか。
盗み聞きをするつもりはなかったのだが、彼等の話は、普通ではなかったのだ。
それは、明らかに。
白羽波琉と赤司紅夜は階段下の物置で向かい合うようにして立っていた。
物置のわずかに開けられたドアに顔を近づけて、音を拾おうと背を丸める。
幸いこの階段は今日は午前中で帰った一年生が使用するもので、職員室からも遠く、人が通る可能性はとても低い。
腕時計の針は5時20分を指す。
物置の中を覗き込むと、白羽波琉はゆるり、と笑って口を開いた。
「こんにちは、赤司くん」
「............白羽、波琉。確かそうだったね。......波琉、でいいかい」
「どうぞ。じゃあ私は紅夜くんで」
「いいよ」
「ありがとう。そしたら、単刀直入に聞くわよ?」
「__うん。まあ想像はつくけど」
「そう。まあいいわ別に。_____どうしてあっちの人間が居るのかしら?」
「その話か。それは、君ももう察しているだろう?」
「察してはいる。でも、あの子は、___八神京介は」
_____君たちと居るべきではないのよ?
「...それは、僕も解っている」
「放っておいてあげたら良いのに。八神くんも苦労するわね。苦労人ね、あのこは」
「...波琉、君、面白がってるだろ」
「だってちょっと楽しくなってきちゃった。紅夜くんも、八神くんも、あの子も、面白い眼をしてる」
「......本当に楽観的だね」
「あはは、よく言われる」
「まあ、君も、あいつも、状況は変わるよ。たぶん、もうすぐ」
「そっか。...私、君たちとは長い付き合いになりそうだなー」
「君、たち?」
「うん。きみと、」
_________八神くんは。