転校生(2)
..................なあ。ちょっとこれ、可笑しくないか?
「ねっ、ねえねえっ、紅夜くん!何処に住んでるの!?」
「紅夜くん、紅夜くん。すっ、好きな歌手とか居る?」
「ねえねえ紅夜くんってば!!」
「..................煩え!!!!!」
がたん、と椅子を鳴らせて立ち上がる。
ものの、そのことに気がついたのは順平と数人の男子のみ。女子なんて...俺のみならずクラス全体の男子の存在を空気として扱っている。
現在、学校は昼休みの時間帯にある。射し込む日の光が照らしているのは、ただただ(俺としては)拷問に等しい風景だった。
なんだよ、俺等の存在価値はO2かよ。今更とか言うな泣くぞ。
「まあ、京介の気持ちも解らなくはないけどさ」
確かに女子、あの集まり様はないよなあ。
そう言ってへらり、と笑った順平。
集まるって...もう群がるで良いと思う。くっそ、アリかお前等。そして赤司、お前は飴玉か。
なんてことをぐだぐだと考えていても仕様がないので、一旦この件については置いておくとしよう。
「はあ... 」
盛大にため息をついた。
と、その瞬間。
「っ......!?」
背中に感じた、恐ろしいくらいに強い「何か」。
ひゅ、と息を飲んで周囲を見渡した俺と、
_________赤司紅夜の視線が交わる。
その紅い眼が、す、と細められて微笑ったその時。
確かにその時こそ、俺と紅夜の永くて酷く残酷な「必然」が始まった瞬間だった。