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元彼の息子と幼馴染み  作者: 咲山空
小学5年生
2/14

可愛い幼馴染み


 裕に再会してから一か月が経とうとしていた。裕也君とは毎日一緒に登校するようになったし家にも招待して何度も遊んだ。裕也君を見ていると裕にそっくりで懐かしくて寂しくもあった。けどあれ以来裕は仕事が忙しいらしくて一度も会っていない。それがよかったのかもしれない。裕に会ったら私は笑顔でいられないかもしれないし。あんなに大好きだった人だから、だけど不思議と落ち着いてこの現実を受け止められている自分はいつかこういう時がくるんじゃないかと思っていたのだろう。



 今日は裕也君の誕生日で裕の仕事が早く終わるらしくてせっかくだから私の家に裕也君一家を招待した。学校が終わってから私は裕也君と一緒に家の庭で遊んでいたところ。



「ねぇあきちゃんっ」


「ん?どうしたの?」


「これー」


「きゃあああああっ」


「ちょっと明菜!!どうしたの!!」


「み、みみみみみ」


「あ、こら裕也!!ダメでしょ!!」


「あきちゃんあきちゃん…大丈夫?」


「う、うん。平気だよ…」



 裕也君がミミズを手のひらに乗せて見せてきて驚いてしまった。だって私虫が大の苦手なんだ…。



「裕也。あきちゃんに謝りなさい」


「…」


「あぁ、裕也君。私は大丈夫だよ」



 私が怖がったのとママにきつく言われたのとで裕也君は目にたくさんの涙を溜めてきてしまう。



「裕也、いけないことをしたらちゃんと謝らないと…」



 裕也君ママも裕也君の姿におどおどしてきてしまった。



「裕也君。裕也君は明菜にミミズさんを見てほしかっただけだよね」


「う、うん」


「だけど明菜はいきなりでビックリしちゃったの。裕也君にも苦手なものあるでしょ?」


「うん…」


「明菜も裕也君のママも怒ってないから今度から気を付けようね?」


「…本当に怒ってない?」


「怒ってないよー。ちょっとびっくりしちゃっただけ。裕也君も驚かしちゃってごめんね?」


「ううん。ごめんなさい」


「いいよ」



 3人の子どもを育てるママはやっぱりすごい。もう裕也君は涙を拭いてきらきらの笑顔を見せてくれた。けど裕也君ママは…。



「ごめんなさい。いつもご迷惑をかけて…」


「あら、気にしなくていいのよ。こういうのはね、経験なんだから」


「そうでしょうか…」


「早苗さんも裕也君と一緒に成長していけばいいのよ」


「…そう、ですね」


「けどここまでしっかり者に裕也君を育てられたんだから裕也君ママはすごいですよ」


「あきちゃん…。ありがとう」




「ただいまー」


「あ、裕也君、早苗さんこんにちはー」



 健兄と将兄が一緒に帰ってくるなんて珍しいな。



「ふふふ」


「なによ健斗…」


「じゃーん!!」



 不敵に笑った健兄にママが呆れていると将兄が持っていた大きな紙袋からなにかを取り出した。



「あーーー!!」



 今小学生の男の子が大好きなヒーローの変身グッズが出てきて裕也君は大喜び。



「裕也っ、誕生日プレゼントだぞ!!」


「ありがとう!!」



 健兄も将兄も裕也君のことを弟みたいに可愛がっているから裕也君も2人のことを兄のように慕ってるんだよね。本当に兄弟みたいで微笑ましい。…けど――



「あきにはこれだ!!」


「絶対嫌!!っていうか入らないから!!」


「そんなことないぞ!!あきは小さいからな!!」


「小さい言うな!!これでも身長伸びたんだよっ」


「明菜!!またそんな言葉遣いして!!はしたないでしょ!!」



 紺野家はいつもこんなドタバタがごく普通の日常。最初は驚いていた裕也君ママも今は優しく微笑んでる。

 って、こんなこと考えてる場合じゃない!!私にお姫様ドレスを着せようとしてくる兄2人から逃げないとっ!!

 こうして恒例の鬼ごっこが始まった。




 兄達から逃げていると不覚にもいつも躓くところで今日も躓いて転びそうになった…のだけど地面にぶつかる途中で柔らかいなにかに包まれた。懐かしいこれは…



「大丈夫かい明菜ちゃん」


「あ、あ…はい…」



 二度目の再会がこんな抱き着く形になるなんて…




「元気ですね」


「それだけが取り柄の兄妹ですから…はは」


「父さんおかえりー」


「裕さんいらっしゃい!!」


「ただいま」


「お邪魔します」



 はっ



 いつまでも裕に抱き着いているままだということに気付いた私は勢いよく離れる。その拍子に今度は後ろに倒れそうになったけど健兄が支えてくれた。



「どうしたあき。大丈夫か?」


「あっ、わかった!!あき、裕さんに惚れたんだろー」


「んなっ…」



 将兄っ!!



「あはは。嬉しいなぁ。ありがとね。明菜ちゃん」


「い、いやっ、違いますから!!」



 裕は私の頭を撫でてくれるけど元彼女だから私!!そんなこと言えないけど!!

 どうしよう。久しぶりの感覚で思った以上に嬉しい…。



「おーい、あき?」


「明菜ちゃん?」


「…なんでもないですっ、それより早く上がってくださいもうお料理の準備は出来てますよ」



 そう言って私は家の中へと駆け込んだ。




「それじゃあ始めようっ」



 一番張り切っている将兄の一言で裕也君の誕生日パーティーの始まりだ。チョコレートケーキを囲む私たち。



「「「「ハッピバースディトゥーユーハッピバースディトゥーユーハッピバースディディア裕也君ーハッピバースディトゥーユー」」」」



裕也君がロウソクの火を消してから部屋の明かりをつけた。裕也君の顔はとっても嬉しそう。



「おめでとう裕也君っ。これがお姉ちゃんからのプレゼントだよ」


「ありがとうっあきちゃん!!」



 私は裕也君に50色入りの色鉛筆をプレゼントした。裕也君はお絵かきが好きでよく一緒に絵を書いて遊んでいるんだけど私の何色もある色鉛筆を羨ましがっていたから。裕也君ママ達は今朝一番にプレゼントを渡したみたいで、私のママとパパからは戦隊モノのアニメに出てくるグッズをプレゼントされた。



「本当にありがとうございます」


「あらいいのよー」


「そうですよ。裕さんもどんどん食べて飲んでください」


「父さん飲み過ぎないようにね」


「ははは。わかってるよ」



 パパはお酒強くないのに付き合いでよく飲んで酔いつぶれて迎えに行くことがよくあるんだよね。こういう祝い事でも飲もうって頑張ろうとするのは良いんだけどほどほどにしてほしいな。



「裕さんはお酒強いの?」


「あ、いえ。私もそこまでではないです」


「そうなの。じゃあ早苗さんは?」


「私もあんまり…」


「あらそしたらジュースでいいじゃないねぇ」


「形だけだね」



 お祝いだからわが家であんまり見かけないお酒を買ってきたけど大人がみんな飲まないんだったらジュースでよかったんだ。先に聞いておけばよかったとママはジュースを注いでいる。



「それにしても、明菜ちゃんは歌が上手なんだね」


「え、あ、そ、そうですか?」


「どうしたのよ明菜…」


「え、ちょっと…」


「母さん、あき裕さんに惚れちゃったんだって」


「将兄っ」


「裕さんかっこいいものねぇ」


「いえいえ、そんなこと…」



 子どもの誕生日にどんな話をしてるんだって感じだけど将兄は本当に余計なことを…。裕に歌が上手いって言われて前にも同じことを言われたからドギマギしてしまった。高校生の時に初めて裕に声をかけられたのが屋上で好きな歌を一人で歌っている時だったから。って昔を懐かしんでいる時じゃないよね。



「あきちゃん僕は?」


「…え?」


「僕はかっこいい?」


「あ、うんっ。裕也君もかっこいいよ」



 なぜか裕也君は私がそう言うとにっこり笑ってくれた。



「あきはモテモテだなぁ」


「あきは誰にも渡さないぞ」


「健兄うざい」


「え…」



 健兄も将兄もシスコンだけどどっちかっていうと健兄の方が重傷で気持ち悪いくらいなんだよね。



「健兄しっかりー」


「はぁ…」


「けど本当あきちゃんって歌が上手いわよね」


「ありがとうございます」



 前世でも歌が好きだったから歌を褒めてもらえるのは純粋に嬉しい。前と声質が違うのもまた面白いって思っているんだよね。



「裕さんはこっちでの仕事には慣れたの?」


「徐々にって感じですね」


「けどまだ若いのにすごいよ」



 大人は大人で話し出しちゃったからこっちはこっちで話そう。



「裕也君、お料理美味しい?」


「うんっ」


「裕也、食べたら遊ぼうな」


「遊ぶー」


「まだ遊ぶの?食べたら帰らなきゃでしょ」


「硬いこと言うなよあきー」


「裕也君だって食べ終わったら眠くなっちゃうよねー」


「うーん」


「遊びたいよな?」


「あきちゃんと遊ぶ」


「私?」


「裕也は本当あきが好きだなぁ」


「ふふ。私も裕也君好きだよー」



 初めて弟ができたみたいで嬉しいんだよね。小さい子って苦手だったけどこう11年過ごしてると周りみんな小さい子だから慣れたし純粋に可愛いなって。



「じゃあ裕也の将来の夢はあきのお婿さんだな」


「なんだって!?」


「だから健兄煩いって。冗談なんだから」


「お婿さんって?」


「あきと結婚するってことだよ」


「結婚ってなに?」


「裕也君のパパとママとか僕たちのパパとママみたいにずっと一緒にいるってことだよ」


「僕あきちゃんとずっと一緒にいたいっ」


「お、よかったな。明菜。早くも結婚相手が見つかったぞ」


「ちょっとパパ。子供の話に入ってこないでよ」


「あきちゃんがお嫁さんに来てくれたら私も嬉しいな」


「って裕也君ママまで?もう…」



まぁ、よくある子供の戯言みたいなのだけどちょっと考えてみてよ。私と裕也君が仮に結婚したら裕がお義父さんになるってこと?ありえないありえない。ってか今のこの現象がまずありえないんだけどさ。とにかく私には悪い冗談だよ…あはは。



「それじゃあ明菜の婚期が遅かったら裕也に貰ってもらえば?」


「将兄それ酷くない?ってか私の婚期が遅れるとしたら健兄と将兄のせいにするから」


「あきは一生結婚なんてしなくていいんだぞ」


「それって父親の台詞よ健斗」


「父さんが言わない代りに俺が言うっ」


「頼んだぞ健斗ー」


「パパ…」



まったく変な家族だなぁ、うちって。そんな私たちの会話を笑って聞いている裕也君ママと裕。そしてまだよく理解できない裕也君。




これから私たちと裕の家族は親交を深めていって私と裕也は幼馴染みとして一緒に成長していくことになる。


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