表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/89

第27杯 ③

「えっ、珍しい事……」


 戸惑うあたしを見て、哲太さんが代わりに応える。


「董子ちゃん、リアクションに困ってるから、ますみさんそのくらいで勘弁してもらっても」


 あたしと哲太さんを交互に見るマス姉。


「悪かったな。そろそろ寝るかな」


 マス姉が席を外し、Cafe出て行った後を、あたしは気になって追いかける。ハイツの階段の所で、追いつくのだった。


「マス姉、今日はどうしたんですか?」

「あっいや……なんていうか、悔しくて」

「何が?」

「哲太だよ。アイツ、あんな綺麗な人と知り合いなのに、あたしにはなんも言わなかった」

「大した事じゃないって、逆に思ったのかもしれませんよ」

「そう、正しくそこが悔しいんだよ」


 あたしは何がそんなに悔しいのかチンプンカンプンだった。


「マ、マスねぇ?」


 声を掛けたけど、マス姉は気にも留めないで、話続ける。


「あんな美人の知り合いを、姉のようなあたしに紹介もしないなんて、アイツあたしよりも異性に……」


 悔しさを滲ませた顔で、一瞬黙るマス姉。そして、また話し出す。


「実は不自由してなかったのかって、正直焦る」

「焦るだなんて、競争してるみたいだよ、マス姉」

「董子ちゃんはまだ若いし、分んないだろけど、この年齢になるとね」


 思い悩んだ感じの口調で話すマス姉を見ても、ピンと来ないあたし。


「はぁ、そんなものですか?」

「そんなものなのよ、あたしは色々悪い寄り道ばかりしてたからね」


 マス姉の重みのある言葉は、あたしの言葉を鈍らせる。


「ああ、まぁなんと言えば……」


 あたしの様子にマス姉が気に掛けてから、鼻の頭を指先で軽く触れる。


「まっ自分が悪いんだけどさ――にしてもアイツより負け組かも。そう思うとホント悔しいよ、なんか」

「負け組も勝ち組もないですよ。これからいい恋すれば……」


 あたしは自分で言っておきながら、言葉が続かなかった。


「言ってくれるね、それが難しいんだよ一番」

「ですよね」


 と言ったあたしは、申し訳なくマス姉に視線を送る。

 マス姉はそれに応えるように、あたしへと観念したという感じに、笑ってくれるのだった。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ