表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/89

第27杯 ②

 マス姉がそうやって、からかい半分に哲太さんへ絡んでいたら、ひとりの女性がCafeに来店した。

 女性は哲太さんへとびっきりの笑顔を向けて、カウンターへ座る。


「来たよ、杉能すぎのうくん」

「ああ、ホントに……来たんですね」

「ええ、あなたの生活ぶりをね」

「……はぁ」


 哲太さんは女性に参ったなという感じに生返事を返した。


「哲太、こちらの女性紹介してくださる?」


 話し方がもろに変わったマス姉の顔を、そこにいる女性ではなく、マス姉をあたしは驚きみる。

 そんなあたしを誰も気に留めていないよう。


「ああ、この方は――」


 哲太さんが言い掛けたのを、女性は構わずに自分で話し始める。


「初めまして遠野美琴とおのみことです、私は杉能くんの友人です」

「へぇ、こんなお綺麗な方とお知り合いだったの、杉能君」


 マス姉の脅迫めいた視線が哲太さんに向く。

 それにうろたえたのか、哲太さんが動揺している模様が、あたしにもわかる声だった。


「えっあっそうんなんす。友人で」

「彼とは、もう3か月くらいの付き合いになるのかしら」


 遠野さんがあたし達に、哲太さんと出会った事などを話してくれる。


「じゃあ、まだ友人になられて日は浅いんですね」


 あたしはマス姉の横から、少し離れた席にいる遠野さんに声を掛けた。


「ええ、彼は余り会話が上手くないので、どんな感じに仕事されてるのか興味が湧いて」


 マス姉は遠野さんの一部の言葉に興味深々と言った感じだ。


「ご興味が?」

「ええ、そうなんです。おふたりはここの住人ですよね?」


 遠野さんに訊かれたので、まずはあたしが答えた。

 

「はい、まだあたしも日は浅いですが」


 続いてマス姉が意味ありげな視線を、哲太さんに向けながら話す。


「杉能くんとはそれはもう長い付き合いなんですけどね」

「聞いてます、とても親しいんですよね?」


 遠野さんがこちら側の話を知っているみたいなのが、マス姉には面白くないみたいだ。

 少し怒りにも似た感じの視線を、マス姉が哲太さんにまた向けているのが何よりもの証拠。


「まぁ。でも、親しい中ならあたしにも教えてくれてもね」

「いや、彼女の事は話す程の事でもないかと」

「そう、こんな素敵な方を?」


 遠野さんは哲太さんとマス姉の間に何か感じ取ったのか、席を立った。


「少し立ち寄っただけなので、私は行きますね。また今度」


 腕時計を見ながら遠野さんが、そそくさと急いでCafeの自動ドアを出て行く。

 あたし達は遠野さんを遠目に見送くった。

 そして、あたしが気づくとマス姉はもう哲太さんの方に向き直している。


「また、今度だってさ。哲太」

「からかわないで下さいよ、ますみさん」


 マス姉が哲太さんをかわして、あたしへと声を掛ける。


「珍しい事も起きるもんだね、董子ちゃん」


 ここで声を掛けられるとは、思わなかったあたしは、ろくな言葉を返せないのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ