第3杯 タダより高いものはないっ!?
目覚まし時計がけたたましく部屋中に鳴り響く。
目を薄く開けるとカーテン越しから眩しい光が差し込んでくる。
やわらかな春のポカポカ陽気。
寝起きのあたしには当然眩しく、思わずサッと布団にもぐった。その状態で布団から腕だけを頭上に伸ばす。手探りでピピピピっと鳴り続けるやかましい目覚ましを捕まえるため、頭上で数分格闘。
目覚ましに勝利したらしく、部屋があっという間に物音ひとつ聞こえなくなっていた。
静けさに再び眠気が増したあたし、だんだん意識がベットの上で遠のいてゆく――――――・・・
コーヒーカップを顔に近づけて、あたしはコーヒーの芳しい香りをお腹いっぱい鼻と口から吸い込んだ。周りには誰もそれを邪魔する人はいなく、なぜかあたしだけがココにひとりいる状況。それに時の流れがわかる様な物体が一切ないだけに、まるで時間がとまっているかの様。
貸切状態のcafeで大満足なあたしはひとりコーヒーを愉しむ。
「コーヒーおいしいなぁ――ココってホント天国。今日は誰もお店にいないみたいだし――」
独り言を言ったとたん、急にCafeで過ごしてたはずが、突然真っ白で何もない空間に。
「なっなんで? 何がどうなってるの?」
真っ白な空間であたしは独り、アタフタする。何もない空間を宙に浮かぶ様に漂っていたら、急に足元らへんの空間が観音開きの様に開いて、あたしを真っ黒な世界に引きずり込む。
「ちょっ――――――待っ」
その瞬間、身体全体に痛みが走る。
「いったぁ~~!」
痛みで目を覚ますとそこは自分の部屋で、どうやらベットがら寝ぼけて落ちたらしい。
「痛っなんだったの――今の夢」
腰をさすりながらあたしはベッドに片手を置き、立ち上がろうとして、下に顔を向ける。視界に目覚ましい時計が転がっていた。それを足元から拾い上げる。
「んっ……?」
驚きのあまり、目覚ましを思わず2度みした。
「あれ――――」
時計が自分の思っていた数字の所に針が指していない模様。
「今って何時なのっ」
誰かに尋ねる訳じゃないけど、意識もなく、その言葉をあたしは口走っていた。慌てて机にある携帯で時間を確認。良からぬ想像がチラっと思い浮かぶ。デジタル時計を見た瞬間、それが現実のものに。
真っ青な顔をして、最低限の身支度をするあたし。慌てたあたしはぐっちゃぐっちゃにパジャマを脱ぎ捨て、服に着替える。
「やばい……電車乗り遅れたら、遅刻間違いなしかも」
身支度の準備が終わるとカバンに荷物をどんどん詰め込む。それが済んだら、今度は玄関の方へ駆け走った。
飛び出す様にドアを開け出て、あたしはドアノブの鍵穴に鍵をさして回す。カチッと閉まる音が鳴ったのと同時にハイツの階段をなりふり構わず駆け下りる。