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第24杯 もっと一緒に……

 お風呂にあがって、髪も乾かしたあたしは藤井くんのいる場所にちょこんと座る。

 なんだか分からない内容の話にあたしは自分ではわからないけど、何故か戦々恐々の思いになった。 


「……話って――――何?」


 ほんの少しためらうような表情をする藤井くん。


「……うん、洋輔の事なんだけど」

「よ、洋輔?」

「うん、最近様子がおかしいらしいんだ」

「様子が?」

「心当たりないかなって」


 心配そうな表情の藤井くんに尋ねられるとあたしも真剣に心当たりを考える。


「――――心当たり……心当たり」


 言葉を何度か口に出して呟くうちに、もしかしたら、と思う事が頭に過るのだった。


「あるかもしれない……」

「あるのかい?」

「ええ、数日前だったかな」


 その言葉にうん、と言いながら頷く藤井くん。

 あたしの言葉を一期一句漏らさないように真剣な眼差しを覗かせている。彼の鬼気迫る感じに圧倒されるあたしは、話を続けていいのか、少しためらうのだった。


「た、たぶんだよ……洋輔のお父さんと揉めた事じゃないかな」

「そんな事あったのか……」

「ええ」

「でも、どうして宮野さん知ってるのかな?」

「その場にいたから、たまたま」

「たまたま?」


 何かが引っかかる様な言い回しで同じ言葉を繰り返す藤井くん。


 藤井くんの雰囲気があたしの変な感覚を呼び起こす。それは彼に嫉妬されているかもという感覚だった。気のせい――――それとも……藤井くん――――もしかして、あたしと洋輔の間に何かあったと、思ってたりして――――あたしがそんな事を勝手に妄想している間も藤井くんは会話を続けていた。


「そう、じゃあそれかもしれないね」


 藤井くんの言葉に今は洋輔の話をしなくちゃならない事を思い出させられる。


「…………えっああ、そうだと思う」


「洋輔の親父さん、特別頑固な人らしくて。それに勉強もできた方らしく、洋輔の高校受験の失敗を未だに怒ってるらしいんだ。それもその時に付き合ってた瑞奈ちゃんにも関係していたらしくて」


「瑞奈ちゃんにも?」


「ふたりは高校受験は仕方なく……正直言うと彼らは結婚するつもりで、だからこそ高校は何処でもよかったんだ。それが洋輔の父親の勘に触ったらしく、激怒したんだ。会社洋輔には継いでほしかったみたいで――――」


「そんな事情があったなんて」

「うん、だからこそ洋輔は今頑張ってもっと上の大学を受けることを目標に勉強しているんだ」

「それって、会社を継ぐ気があるって事だよね?」


「それが違うんだ……お互いの交換条件だったらしく――――洋輔は瑞奈ちゃんとの将来で……親父さんの方は会社を継ぐ事が条件で。でも、ふたりは心からお互いを許せないらしく、母親が家から洋輔を出したんだ」


「だから、ここに住んでるんだ――――洋輔独りで」


 藤井くんが話の終わりに何も言わず頷いた。

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