表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/89

第23杯 ②

「……どう答えれば、正解……になるのか―――――」

「じゃ、質問変えるから。慎一とはまだ付き合ってないんだろ?」

「……こっちの気持ちも知らないと思う――――――」

「なら、少しでいいから哲太の事考えてやって、それに慎一の事も悪いようにはしないからさ」


 その言葉で、悩むあたしの顔がますますしかめっ面になっていくのが、自分でもわかるくらいだった。

 ただ、哲太さんはあたしじゃなくてマス姉が好き。でも、それを今あたしが彼女に伝えるべきじゃないだろうし、この誤解を解く方法がわからない。だからこそ、少しでも自分の心に一番正直で近い言葉を選びたい。


「マス姉――――――混乱してて、今は答える言葉がみつからない」

 

 気まずい空気が流れる。何も言わないマス姉は少し間を置いてから遠慮がちに話す。


「……なんだ……その、さっき言った事は気にするな……哲太たちの事、要するにいつでも協力するって事だっ」

「――――――ありがと」


 結果的には率直な言葉を選んだ事で、マス姉に少しは気持ちが伝わったからよかった。

 でも、あたしの誤解が解けたけど、哲太さんの誤解はいつ解けるんだろう…………か。


 マス姉はこの話に決着がついたと判断したみたいで、携帯を取り出した。その携帯で誰かと話し始める。

 会話はもちろんマス姉の声しか聞こえない。何度か返事をしたり、お願いするような内容の会話を相手としている。そして、話が終わったらしく携帯をきった。


「今、慎一と話してた」

「なんだぁ~藤井くんと話してだんだ。でも何の話?」

「風呂だよ。風呂借りたいって言ってただろ、だから今話つけた。大丈夫だって」

「じゃ、藤井くんの部屋に……でもどうしよう――――――突然そう言われても」

「何、言ってんだよ。チャンスだろ、思い切ってふたりで話したら色々」


 マス姉の言葉が余計にあたしの緊張を誘い、ピークにしていく。


「ふ、ふたりって、マス姉は?」

「あたしは、一時間ぐらい後で部屋に寄るよ」

「それって――――――ひとりで行けって事?」


 話す度に、手から溢れるものを握り締める。いつの間にか、あたしの手にはビッショリと汗が湧き出していた。こんな状態に気がつくどころか、あたしとは正反対に涼しげな顔のマス姉。


「そう言う事。慎一が待ってるから早く行きな。じゃ、あたしは今からCafeでコーヒーを堪能してくるか」


 いつになく足早にCafeへと消えて行ったマス姉に、返す言葉も見つからなかった。彼女の言った通りだったら、早く藤井くんの待つ二階へ上がらないと待たせる事になる。お風呂も借りるのにそんな事させれない。

 そう思うと、突っ立っていたあたしは、急いで二階へ向かう事にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ